第6話
「いつもどこで寝てるの」
「そこらへんで」
「そっか、うち来ない?」
「誘拐犯みたいになってるから」
昨日から女が見つけては話かけてくるようになった。
「君、名前なんて言うの」
「刈安」
「刈安くんか、じゃあカリヤだね」
「勝手にあだ名付けないで」
「私、サリー、本当の名前は理紗だけど、みんなにサリーって呼ばれてるから
サリー」
琥珀色の目で真っ直ぐ見つめてくる、
「ねえ、サリーって呼んでっ」
「サリー、これで満足?」
「うーん、ひとまずは、かな」
明るいサリーでもここまで冷たくされたら悲しいみたいだ。
サリーにずっと話かけられ続けても歩いていると全く未知の場所についた。
色とりどりの花がわんさかと咲いている、こんなに荒れていない場所があったなんて驚きだ。僕はどうしても探してしまう花の種類がある、ライラックだ。
「あっ、ライラックだ」
太く、見るからにずっしりとした峰とは裏腹に淡いの花は繊細さと迫力、そして華やかさを持ち合わせている、
「紫色好きなの?」
「好きというか、昔良くしてくれた人が好きだった。確か、にいにいとか呼んでたっけ、今は何してるか分からない」
僕の語り方で察したのかお喋りなサリーも何も言わない、
「でも、僕自身も好きかもしれない」
あの時の自分はまるで仔犬だ。にいにいというご主人様にいつまでもついて行って、他の人には見向きもしなくて、ご主人様がいなくなれば、何にもできない、できるのは一人あてもなくそこらへんをうろうろして細々となんとか生きていくだけだ。
「崩れないものとかみてみたいな」
サリーはかける言葉を探しているのか黙っていた。
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