第19話
(※アーノルド視点)
私はレイチェルに言われた通り、万能薬を料理の中に混ぜ、ナターシャに食べてもらうことにした。
今度こそ、万能薬は効くはずだ。
ほかの人は万能薬の効果が表れて体が治っているのに、ナターシャだけ効かないなんて、そんなことあるはずがない。
神様がそんな残酷なことをするはずがない。
あれは単なる偶然だったのだ。
たった一度の不運で、体を治すチャンスを棒に振るわけにはいかない。
そのためには、私がこっそりと薬を飲ませるしかないのだ。
私はナターシャのために料理を作り、その中に万能薬を混ぜた。
彼女に何も言わず、こっそりと飲ませるのは罪悪感がある。
しかし、何よりも大事なのは、彼女の体が治ることだ。
そのためなら、多少の罪悪感など気にしている場合ではない。
「ナターシャ、どうぞ」
私は彼女に料理を出した。
「ありがとう、アーノルド。とっても美味しそうだわ」
彼女は笑顔だった。
万能薬が入っているなど、微塵も思っていない様子である。
なにも怪しまれている気配はない。
彼女は、料理を口の中へ運んだ。
一口、また一口と、彼女は料理を食べた。
「どうかな?」
「美味しい。また作ってほしいわ」
「それはよかった」
私は微笑んだ。
彼女は万能薬入りの料理を、全部食べた。
そして、私はしばらく彼女の様子を見ていた。
万能薬が効いていれば、効果が表れるはずだ。
しかし、彼女には何の変化も見られなかった。
「どうしたの? じっと私の方を見て」
「いや、体の調子はどうかな、と思って。さっきの料理、少しだけ香辛料が入っていたから」
「特に何ともないわ。身体の調子も、いつも通りよ」
「そうか……」
やはり、万能薬は効かなかったらしい。
いったい、どうしてなんだ?
ほかの人には効いているのに、どうして彼女にだけ、万能薬が効かないんだ?
私は翌日、またレイチェルの元へ行った。
そして、昨日の結果を彼女に報告した。
「そう……。また効果が現れなかったなんて……、どうしてかしら」
「何か、解決策はないのか? どうしてナターシャだけ、万能薬が効かないんだ?」
「一つだけ、仮説があるわ」
「仮説? いったいなんだ? 聞かせてくれ」
私はレイチェルに質問した。
そして、彼女から聞かされた仮説は、とんでもないものだった。
当然、私は否定した。
すると彼女は私に、万能薬ともう一つ、あるものを渡した。
「それを使えば、私の仮説が本当かどうか、確かめられるわ。もちろん、実行するかは、あなた次第よ」
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