第6話

 (※ナターシャ視点)


「いったい、どういうことなんですか? 何のことを話しているのですか? 詳しく話してください」


 私は、彼女に質問した。

 しかし彼女は、私のその質問に驚いた様子だった。


「あら? 何のことを言っているかなんて、わかるでしょう? あぁ、新聞を見ていないのね? 詳しいことは、新聞を読めばわかるわ」


 彼女はそう言うと、去っていった。

 どういうこと?

 新聞に何か、私のことが書かれているの?


 ……いや、そんなことを気にするのは、時間の無駄だ。

 なぜなら今日は、アーノルドとの貴重なデートの日だからだ。

 余計なことに気を遣ったり時間を取られたりするのは損である。

 私たちは、デートを楽しむことにした。


「外で食べるサンドイッチは、どうしてこんなに美味しいんだろうね。……ナターシャ、ぼうっとしているけど、大丈夫?」


「……ああ、ごめんなさい。ええ、私は大丈夫よ。サンドイッチ、美味しいわね」


 私は苦笑いをした。

 さっき言われたことが、頭からなかなか離れない。

 彼とのデートを楽しもうと決めたのに、どうしてもさっきのことが頭に残っていて、デートに集中できないでいた。


「……さっき言われたことが、気になるんだろう?」


 アーノルドが私の顔を覗き込みながら言った。

 どうやら、お見通しだったみたいだ。


「ええ、そうなの。ごめんなさい、せっかくのデートなのに……」


「いや、気にすることはないよ。実は、僕も少し気になっていた。新聞を買って、確かめてみよう」


「ええ、そうね」


 私は彼に同意した。

 そして、二人で新聞を買いに行き、また公園に戻った。

 そこで、買った新聞を広げた。

 そこには、意外な記事が掲載されていた。


「なんなの、これ……」


 私は驚いた。

 そこに書かれていたのは、レイチェルのインタビュー記事だった。

 突如として現れた、医学界のホープへのインタビューという内容だった。

 彼女はそのインタビューの中で、親友であるナターシャのために、なんとしても万能薬を完成させたいと答えていた。


 記事には、私とレイチェルが一緒に写っている写真があった。 

 そういえば、私が屋敷に来た頃に、そんな写真を撮った気がする。

 これで、町で私を見てみんなが噂していた理由もわかった。

 しかし、わからないこともある。


 レイチェルはどうして、このインタビュー記事の中で、私のことを親友として紹介しているの?


 それに、私は彼女が普段何をしているかなんて、全然知らなかった。

 記事の中に何度も出てきているそのワードに、私は驚いていた。


 万能薬ですって!?

 彼女は、そんな物を作っていたの?

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