第12話 手料理ロマネスク
「決めたよ!私、愛する旦那の為に料理を勉強するね!」
『花粉吸い過ぎたのかしら?大丈夫?』
「何一つおかしなこと言ってないよ?」
『……。』
「ちょっとー静かにならないでよちゃん美優ー。ほら、私って松坂桃李君似の日暮旅人って言う旦那がいるじゃん?」
『居ないわよ。なんなら日暮旅人は少し前に桃李君が演じてた役よ。』
「桃李君の事を考えてお昼に愛妻弁当を作ってあげるのが主婦の役目じゃん?」
『奈緒は主婦じゃ無くて高校生でしょ?』
「ましてや、小学生の息子もあと一年で中学生になってお弁当が必要になるわけよ。」
『凄いわね?妄想とは言え子供もいるのね。』
「そうなると私に必要なのって料理テクニックなわけ。」
『いや、今奈緒に必要なのは現実を見る事なのよ。』
「愛する旦那と子供の未来のために料理王に私はなるっ!!」
『松坂桃李君は戸田恵梨香さんの旦那さんよ?』
「ぐ、ぅぅ"…。ガアアアアアアアアアア!!!!!!!!」
『こんな露骨にゲシュタルト崩壊する人初めて見たわ。』
「ハァ…。ハァ…。あれ?…。ちゃん美優?……。あれ?…。そうか、私は夢を見ていたのか。」
『やっと現実に帰ってきたわね。』
「そうだ、私、料理スキルを身につけないといけないんだ!!!!」
『あれ?…。』
「私って容姿端麗じゃん。でも料理が壊滅的だからその欠点さえ克服すれば人間として完成すると思うんだ。いや、むしろ神格化だね。私は人間というカテゴリーに収まるには大き過ぎる存在なんだよね。」
『容姿も壊滅的なのに何をスラスラと流暢に喋ってるのよ。なれるとしたら邪神よ。』
「なんだとコラー!私の手料理食わすぞ!」
『ごめんなさい。それだけはやめて下さい。』
「なんだとコラー!!!!!!」
『奈緒の手料理食べるくらいなら雑草齧った方がまだ美味しいわよ。』
「本当に私の手料理をなんだと思ってるの!!」
『良い?例えば奈緒の手作り弁当が公園のベンチにでも置いてあったらどうなると思う?』
「みんな目を輝かせて飛びついて、弁当の取り合いになるとか?」
『環境省が動くわよ。』
「なんでよおおおおおおおお!!」
『とにかく、奈緒の料理スキルは点数つけるならマイナス10万くらいよ。』
「ねえそれ最大値と最低値はどこよ。マイナス10万って私人類最底辺じゃないの?」
『料理教室になんて通ってみなさい。1時間もせず講師の先生から笑顔と自信は失われて、病院へ運ばれるわよ。』
「ほんと私の手料理を何だと思ってるの!?」
『良い?人にはね、出来ない事と苦手な事があるのよ。』
「はい先生!出来ることはないんですかっ!」
『京王線に"1週間で良いから。この1週間だけは一回も遅延するなよ"って言ってできると思う?』
「出来ないね!多分笹塚あたりで人身事故か点検作業が起きて遅延すると思います!」
『その通り!必ずしも出来ないことは存在する。その出来ない事を考えるのは時間の無駄でしょ?』
「私の料理練習は無駄なのか?ビリギャルだって頑張ったら東大に入れたんだぞ!」
『ビリギャルには潜在能力があったのよ。』
「だったら私にもあるかも知れないじゃん!」
『無謀なのよ。例えば鈴木福くんと芦田愛菜ちゃんにユニットを組んでM-1グランプリで優勝してくださいって言って出来ると思う?………。いや、案外出来そうな気もするわね。』
「そうなんだよ。出来ないことは無いんだよ。私だって料理練習すれば美味しい弁当作れるんだ。」
『いや、ビリギャルとか福くんや愛菜ちゃんは人間じゃん。奈緒は四捨五入したら両生類じゃない。』
「はーーー!怒ったよ!怒ったよちゃん美優ぅぅぅぅ!!絶対料理上手くなってやるからな!」
『そもそもそのお弁当を食べさせてあげる相手が居ないじゃない。』
「はっ…。ぐぅっ…。う、、。ゴハァァァァァァァァ!!!!!!!」
『今日何回崩壊するのよ。』
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