200 魔都7
「はぁはぁ……さすがにきついな」
巨大モンスターの群れを全て倒した勇者一行は一時休憩。オスカリたちの出番はヤルモより少なかったのだが、それでも巨大モンスターは多かったので疲れが見える。
「あれ? イロナ、怪我してないか??」
イロナも肩口を斬られた跡があるようで、ヤルモが気付いた。
「コウモリのクセになかなか連携が良くてな。いいのをもらってしまったのだ。まぁこれぐらい、放っておけば治る」
「いやいや、時間が掛かるならポーションを飲め。これからが本番だからな」
「うむ。そうしておくか」
ヤルモはイロナにポーションを渡し、ついでに今まで何をしていたか質問する。
別行動をしていたイロナがヴァンパイアエンペラーに向かって飛んでいたら、ドラゴンが次々と現れて守るように立ちはだかったので、ラッキーと思ったそうだ。
なのでヴァンパイアエンペラーは後回しにしてドラゴンを呼び寄せさせていたら、ヴァンパイアエンペラーが5体に増えたとのこと。
そこで、ヴァンパイアエンペラーは指揮官を殺されたと怒っており、残りの全員でイロナを仕留めるとわざわざ教えてくれたらしい。
イロナはドラゴンを呼び寄せる1体だけ残せばいいと思い、ヴァンパイアエンペラーを先に倒そうと戦闘を再開したのだが、ドラゴンの壁に阻まれて上手くいかなかった。
さらに、ドラゴンを目隠しにヴァンパイアエンペラーが同時に攻撃して来たり、黒い霧に身を隠して攻撃して来たとのこと。まぁその都度カウンターで斬り刻んでいたので、ヴァンパイアエンペラーが優先的にHPを減らすこととなった。
これでは負けると悟ったヴァンパイアエンペラーは、死を覚悟した一斉攻撃を繰り出す。
ドラゴンを含めた四方八方からの攻撃は熾烈を極めたらしいが、イロナに焦りはなくカウンターを取り続ける。
しかし、ヴァンパイアエンペラーの命懸けの攻撃ということもあり、4体が自身を犠牲にした特攻は、さすがにイロナの予想を超えた。
斬り離した腕がイロナの足を掴み、空中で一瞬バランスを崩したところに、ヴァンパイアエンペラーが前と後ろから抱きつこうとする。前は一瞬でバラバラにしたから大丈夫だったが、後ろはギリギリ間に合わずに抱きつかれてたのだ。
その一瞬の隙を付かれ、仲間諸共イロナは肩を斬られてしまった。
それでもイロナは冷静に対応。抱きついているヴァンパイアエンペラーを力尽くで真っ二つに引き裂いて脱出。自身を斬り付けたヴァンパイアエンペラーも逃げる前に小間切れ。
これで怒りを見せると思っていたイロナは、久し振りに怪我をしたと大喜び。
そこからは笑いながらヴァンパイアエンペラーを追い回し、全てを無に返したらしい……
「「「「「お、おおう……」」」」」
勇者パーティにもイロナの話が聞こえていたので、ヤルモと同じくドン引き。イロナが
「まぁアレだ。勇者たちも回復アイテムは足りてるか?」
「まぁアレだな。戦いながらも使っていたが、なんとかな」
なので、ムリヤリ話を変えるヤルモとオスカリ。アレとは何のことかはわからないが、通じ合う二人であった。
ただ、勇者パーティのアイテム消費が激しかったので、ヤルモは守ってもらった手前、念のため手持ちのアイテムを配る。使わなかったら返すことを条件として……
そうして甘い物や飲み物で疲れを取ると、ヤルモたちは立ち上がった。
「あとは魔王だけだな」
「ああ。やっとここまで来た。気合い入れて行くぞ!」
「「「「「おお!!」」」」」
ヤルモに続き、オスカリがいいところを持って行ったが気にせずいい返事。こうしてヤルモたちは、魔王がいそうな帝都城を目指すのであった。
巨大モンスターの群れやヴァンパイアエンペラーは一掃したこともあり、立ちはだかるモンスターは何もいない。しかし、百戦錬磨の一行は警戒を解かない。
そうして順調に進んでいたら帝都城に着き、門を潜って前進していると、建物の手前にある広場にて足を止め、臨戦態勢になった。
「おいおい……カイザーヴァンパイアが4体もいるぞ……」
そこには、カイザーヴァンパイアの証である髪の毛が赤黒い男女が4体、立っていたり座っていたり寝転んでいたり……これほどの大物が4体ともなると、オスカリにも焦りが見える。
「魔王って、カイザーヴァンパイアだったよな? どれかが魔王ってことか??」
「しまったな。聖女も連れて来ればよかった」
オスカリの問いにヤルモが反省していると、座っていた美女が立ち上がり、前に出て来た。
「魔王様はここにはいなくてよ」
言葉を喋ることは想定内だった一同の驚きは小さく、それよりも誰が相手するかでヤルモはオスカリに視線を送った。
「じゃあ、どこにいるってんだ?」
オスカリは頷き、質問しながら前に出た。
「玉座の間ですわ。王なのですから、当然のことですわ」
「なんだ。人間のマネでもしてるのか」
「ただの
「わりぃわりぃ。俺は礼儀がなってねぇんだ。あんたのほうが、よっぽど礼儀を知ってるぞ」
「お褒めいただきありがとうございます」
オスカリは嫌みで言ったのだが、美女が大袈裟にお辞儀をするので、本当に負けたと思ってしまった。
「まぁいいや。そんで、あんたは何者だ? 従者ではないよな??」
「ええ。世話係ではなく、四天王ですわ」
「四天王だと……」
「一緒にダンジョンを出た四天王は魔王様が使えないと仰って、隣町に送ったのですわ。なので、新たに私たちが作られたのですわ。つまり私たちは……」
美女が少し溜めると、残りの3体のカイザーヴァンパイアは一瞬で隣に並んだ。
「新・四天王ですわ!」
まさかの新・四天王の登場。こんな話を聞いたことのないヤルモたちは驚きを隠せないのであった。イロナ以外……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます