109 特級ダンジョン12
ギカントサイクロプスが棍棒を縦にして足元に打ち落とすと、ヤルモの盾に直撃した。
「うおおぉぉ~!」
その攻撃は、一瞬耐えてからの受け流し。ギカントサイクロプスはバランスを崩したので、ヤルモは剣を思いっきり振り切り、左足の同じ場所にダメージを与えた。
「イロナなら華麗に斬り落とすんだろうな~。おっと」
何度も足にダメージを与えても一向に倒れる気配がないのでヤルモは愚痴っていたが、ギカントサイクロプスが踏み付けて来たので走って距離を取る。
そこに棍棒の先が振って来たので、ヤルモは必死の形相でドタドタ走って、なんとか振り切った。
しかしそこは、ギカントサイクロプスの最も得意とする距離。両手で握った棍棒が、凄まじい速度で降って来る。
「うおおぉぉおぉぉ~!!」
避けきれないと察したヤルモは、盾を上に構えて受け止めた。普通ならぺちゃんこになるほどの威力。硬い地面に亀裂が入るほど。だが、ヤルモは力いっぱい耐えきった。
「【ホーリーアロー】!」
「【聖女の加護】!」
「【ブーストアタック】!」
そこにクリスタの攻撃魔法。オルガとリュリュの支援魔法。どうやらヤルモは、支援魔法が切れそうになったから戻って来たようだ。
「ぐうぅぅ……オラアアァァ!!」
さらには信じられない光景。ヤルモはギカントサイクロプスの棍棒を押し返したのだ。
ヤルモは押し返したと同時にダッシュ。ギカントサイクロプスの攻撃を全て盾でいなし、また左足に渾身の一撃を喰らわせた。
ヤルモは慎重にダメージを与え、支援魔法が切れそうになったら戻り、また懐に飛び込んで大剣を振り続ければ、ついにギカントサイクロプスは片膝をついたのであった。
「来た! ぐおおぉぉ!!」
ヤルモに油断はない。ギカントサイクロプスが片膝をついたということは、身長が低くなったということ。必然的に棍棒の角度が変わり、真横に近い振り方もできるようになったのだ。
しかし、足に力の入っていない、腰の入っていない攻撃ならば、先ほどの攻撃より威力は半減。盾で受けて、ヤルモは横にスライドした。
「次は右だ~~~!!」
ヤルモはわざと引きずられて横移動しただけ。ギカントサイクロプスの右足付近に移動したら、必死に走ってスネに渾身の一撃。ついでにもう一発。
連続攻撃でダメージを受けたギカントサイクロプスは左手を伸ばし、ヤルモを掴もうとする。
「させるか!」
ヤルモは剣を振って指を弾く。さすがに指は防御力が低いからか、突き指になって手を引っ込めた。そこでヤルモは一時離脱。また支援魔法を掛けてもらってから突っ込んだ。
何度も右足に攻撃を喰らわせれば、こちらも使い物にならなくなったか、はたまたダメージを嫌がったのか、ギカントサイクロプスは四つ足になるのであった。
「もう少し前に出てもいいぞ!」
ギカントサイクロプスの機動力を削いだら、ヤルモはクリスタたちに指示。クリスタたちは魔法の射程範囲ギリギリまで近付いてヤルモを援護。この距離ならヤルモは下がらなくても支援が受けられるようだ。
クリスタたちが魔法を使っている間も、ヤルモは突撃。ギカントサイクロプスの腕を狙って攻撃を続ける。
ギカントサイクロプスはというと、もう棍棒は役に立たないと投げ捨て、両拳で攻撃。ヤルモは盾で受ける場合もあるが、タイミングを合わせての渾身の一撃でカウンター。
見た目はヤルモが巨人に殴られ続けているように見えるが、ダメージが多いのはギカントサイクロプス。
しかし、同程度のパワーの打ち合いを繰り広げているからヤルモにも多少はダメージが入っているようで、たまにオルガに治癒魔法を頼んでいた。
そうこうしていたら、戦いは大詰め。ギカントサイクロプスの両拳が潰れた。
「グキャアアァァ~~~!!」
「ラッキー!!」
ギカントサイクロプスは攻撃手段が無くなったからか頭突きを繰り出すので、ヤルモは喜ぶ。そりゃ、弱点であるはずのひとつ目が降って来るのだ。
ヤルモは右手にギリギリと力を込めて、遠心力と地面の力を加えての渾身の一撃。これで目玉は潰れ、痛みからのけぞり、ギカントサイクロプスは背中から倒れた。
「うおぉぉ~! オラオラオラ~!!」
足の付け根からよじ登ったヤルモは、股間や腹や首に攻撃。移動しては剣を振り下ろしまくる。
ギガントサイクロプスは成す術もなく全ての攻撃を受けていたが、そうは上手くいかないようだ。
「うおっ!」
突然起き上がったギガントサイクロプスのせいでヤルモは宙を舞い、背中から地面に叩き付けられた。
「つつつ……」
さすがに数十メートルの高さから落ちたヤルモは痛みが走ったようだが、すぐに立ち上がって武器を構える。
「ヤベッ……近付けない……駄々っ子か?」
ギカントサイクロプスは背中を付けて両手両足をバタバタしているので、ヤルモは近付けないようだ。
「ほう……普通にやったら、あいつの【発狂】はあんなふうになるのか」
「イロナ?」
ヤルモが傍観していたら、いつの間にかイロナが隣に立っていた。
「てことは、放っておいたら終わりか?」
「前も言っただろう。最下層のボスは、時間を置いたらHPが回復すると」
「マジか~。魔王だけじゃないんだ。てか、俺の攻撃で、時間内に倒せるかな?」
「どうだかな。いや……アレを使えばいけるんじゃないか?」
「アレって……アレか……」
イロナの言いたいことのわかったヤルモは嫌そうな顔をする。
「というか、アレを使っておけば、楽勝で倒せたんじゃないか??」
「あんまり気が進まないんだよな~。俺って戦士だし」
「それじゃあ、一からやり直せ。我は手助けしないからな」
「チッ……わかったよ」
イロナの手助け無しでは何時間かかるかわからないので、ヤルモは覚悟を決めて変形する。
「殲滅モード移行」
『オッケーマスター。殲滅モードニ移行シマス』
「おお! それだ!!」
ヤルモが正座して機械音が鳴ると、イロナは興奮する。どうやらヤルモの変形を見たかったから、助けないとか言っていたようだ。
そんなこととは露知れず、ヤルモの体はキャタピラーの付いたロケット弾搭載の戦車のように変わる。以前と違う点は、後方につっかえ棒のような物が出ており、地面に減り込んでいた。
「最大火力。ファイアー」
『オッケーマスター。一斉射撃開始シマス。ファイアー』
機械音の後、ヤルモの両肩はパカッと開き、ロケット弾が飛び出し、指から弾丸が発射され、口が大きく開いたら、ビームが発射されるのであった。
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