099 特級ダンジョン2
A班が30分の休憩を取ったら、B班の休憩。イロナが暇潰しに遠くのモンスターも倒しに行っていたのでA班の見張りは特に必要なく、休憩の終了となった。
それからリュリュとテッポを班分けしただけで先を進む。
クリスタはモンスターを見付けるとまた驚いたような声を出し、戦闘に突入した。
「い、行くよ!」
「「はい!」」
特に指示らしい指示を出さずに、クリスタは鎧を付けたバトルウルフ五匹に突撃。なんとか盾での防御は間に合っているようだが、素早さに翻弄されているように見える。
そこにテッポの【ファイアーアロー】。こちらも見事に外し、なかなかダメージすら入らない。
オルガはクリスタが傷を負うたびに【ヒール】で治すが、クリスタも攻撃が当たらずに戦闘が長引く。
そんななか、ヤルモはイロナにモンスターがいそうな場所を言って追い払い、リュリュと一緒にA班の戦いを見ていた。
「ボクなら……勇者様から離れて着地した直後を……あ、いまのはチャンス……でも、広範囲に放って足止めもアリ……」
リュリュはブツブツ独り言を呟きながら真剣に見ているので、ヤルモは感心しながら助言する。
「あまり強い魔法を使うと、あの勇者なら巻き添えになるぞ」
「あ……そっか。やるならタイミングを合わせないとですね」
「そうだ。合図も出さずにやると、あんなふうになる」
「危ない!!」
ヤルモたちが喋っていると、テッポが長い詠唱からの【ファイアーストーム】。広範囲に放たれた炎をクリスタは辛くも避けてギャーギャー文句を言っているので、せっかくバトルウルフの隊列が乱れているのに見逃してしまった。
「あと、そんな目立つ攻撃をすると……」
「テッポ君! 来てるよ!!」
テッポがクリスタに謝っていたら、バトルウルフのターゲットがテッポに移ってしまった。
「ちょっと行って来る。リュリュは後ろを気を付けてろ」
「はい……」
前衛のクリスタをすり抜けたバトルウルフには、テッポが何発も【ファイアーアロー】を撃っていたが全て外れる。しかしそれで時間稼ぎとなったので、ヤルモが間に合ったから剣で叩き斬った。
「ほら、早く勇者の援護しろよ」
「お……お前に言われなくてもわかってる!!」
テッポが呆けていたのでヤルモが一声かけたら、テッポは強がってからクリスタの援護射撃。バトルウルフがもう一匹倒れるのを確認したヤルモは、リュリュの元へと戻るのであった。
「ヤルモさんって、すっごく強いんですね! かっこよかったです!!」
リュリュは一撃でバトルウルフを倒したヤルモを、ピョンピョン跳ねながら褒めまくる。
「近い。あと、イロナのほうが、倍は強いからな」
「ほへ~。あんなに綺麗なのに、そんなに強いんですか~」
ヤルモは面倒くさそうにリュリュを押し返していたら、イロナが戻って来た。
「まだやっていたのか?」
「まぁな~……もうそろそろ終わるかな? いてっ……なんで蹴るんだよ~」
イロナがイライラしてヤルモを蹴っていたら、ようやくA班の戦闘は終了。息を切らしているクリスタに耳打ちして、先を急がせるヤルモであった。
それからクリスタがモンスターを発見して驚いたら、B班の戦闘が開始。バトルウルフ五匹が目に入ったヤルモの指示が飛ぶ。
「イロナは待機! リュリュはデカイのぶちかませ!!」
「はい!! 【ウインドストーム】」
ヤルモが突撃する前に、まずは大技。ダメージはかなり低いがバトルウルフの隊列は乱れたので、ヤルモはそこに突っ込む。
そしてサッカーボールキック。この攻撃でバトルウルフのターゲットがヤルモに移った。
「俺が蹴飛ばしたのを狙え!」
「はい!」
ヤルモはわざと高く蹴飛ばし、その滞空時間を使ってリュリュは狙いを定め、【ウインドアロー】。見事に決まるが、ダメージは低いので倒すまでには至らない。
その間も、ヤルモは襲い来るバトルウルフを盾や剣の腹を使って押し返し、チャンスがあれば蹴り上げ。そこに【ウインドアロー】が突き刺さる。
何度もそれを繰り返せば、またヤルモの攻撃だけでバトルウルフは倒れるのであった。
「凄くやりやすかったです!」
ヤルモと共にドロップアイテムを拾っていたリュリュは、大声でそんなことを言うものだからクリスタの耳に入ってしまった。
「うっ……やりにくい勇者でゴメンね」
「ち、違います! そんな意味で言ったんじゃないです!!」
「喋ってないで移動するぞ。さっさと進め」
「うぅぅ……ヤルモさんまで冷たい~」
リュリュの言い訳をヤルモが遮ると、クリスタはトボトボと歩き出す。しかし少し進んだ通路の真ん中でヤルモは皆を止めて、イロナにはこの先にモンスターが待ってると言って追い払っていた。
「集合。はぁ~~~」
ヤルモはクリスタたちを集めると、大きなため息を吐いてから先を続ける。
「ちょっと早すぎるけど、今までの順位を発表する。一位はリュリュで、二位は聖女な」
「なっ……どうして俺がリュリュなんかより下なんだ!!」
突然の順位発表に、クリスタたちはポカンとしているのにテッポが噛み付く。
「お前、俺の指示した奴以外を狙ったりしただろ? それに無理に強い魔法を使って死にかけたからだ」
「死にかけてなんかいない! オッサンに助けられなくても、俺が華麗に倒していたんだ!!」
「そういうところも減点対象だ。よって、さらにマイナスして、三位はテッポだ」
「はい!? 私、あんなに倒したんだけど……」
まさかの勇者クリスタが最下位。いくら不甲斐ないと思っていても、自分の担当のモンスターは九割は倒したので、クリスタも納得いかないようだ。
「勇者はマイナス点だ」
「そんなに酷いの!?」
「そりゃ、適当に歩いてモンスターに驚くわ指示は出さないわ仲間のことは見てないわ……ゴリ押しで倒すリーダーなんていないだろ?」
「だってやり方わからないんだも~~~ん」
ヤルモの正論に一人を除いて頷くので、クリスタは泣き出してしまうのであった。
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