031 上級ダンジョン4
「どうして聞いていないのですか!」
タピオに説教をしていたハーレムパーティのトウコは、干し肉をかじっているタピオに詰め寄る。
「腹がへってたし……」
「いいことを言っていたんですから、あなたは聞くべきです!」
タピオが言い訳しても、トウコは聞く耳持たず。また説教が始まったが、タピオは止める。
「てか、要点だけまとめて言ってくれないか?」
「長く説明しても無駄ですか……要は、そんなに華奢で美しい女性を連れているのですから、仲間を集めてしっかり準備してからダンジョンに挑むべきなのです!」
トウコはドヤ顔でタピオを指差し、髪を掻き分けてイロナにウインクをするが、イロナは食事に夢中で見てもいない。
「わかった。次からは気を付けるよ」
タピオはこれ以上拗れないようにと、適当に返事してからパンをかじる。
「ぜんぜん反省してないじゃないですか! もういいです!!」
トウコはタピオの態度が気に食わないからか、イロナの目の前で
「美しい人……あなたのような方に、この男はふさわしくありません。僕のパーティに入ってくれませんか?」
突然の愛の告白染みたことを言うトウコに、イロナの答えは……
「お前みたいな小うるさい男はけっこうだ」
「え……」
拒否。まさか断られると思っていなかったトウコは呆気に取られる。
「いいことを言っていたように見えて、結局はパーティ勧誘をしているだけだろ? それに主殿はお前なんかより、よっぽど冒険者として優れているぞ」
「きっと騙されているのですね。二人でダンジョンの奥に来るなんて自殺行為に付き合わされて……かわいそうに」
「お前は我の声が聞こえていないのか? 主殿なら余裕でクリアできる程度のダンジョンなのだから、仮に足手まといがいたとしても問題ない」
「そう騙されて来たのですね。あなたの気持ちわかります」
イロナが反論してもトウコには通じず。スープが入っていた木の器をイロナが握り潰しても見ていない。
「お前は、本当に話を聞かない奴だな……」
「わ! わああぁぁ!! ダメだイロナ。人殺しはダメだからな?」
イロナが怒りの表情で立ち上がろうとするとタピオが止めた。しかし、このやり取りもトウコの目に入らない。
「そちらの方はイロナさんとおっしゃるのですか。素敵な名前ですね」
「お前もいい加減どっか行け! 俺ではイロナを止められないんだぞ!!」
「あなたにこの恋路を邪魔をされる筋合いはありません。いったいぜんたい、あなたはイロナさんのなんなのですか!」
タピオが必死に止めても、トウコは自分の世界に入って止まろうともしないので、タピオは仕方なくイロナの立場を教える。
「イロナは俺の奴隷だ」
「奴隷だと……」
「いや、性奴隷だぞ」
「なんですって!?」
トウコは奴隷だけでも怒りが溢れていたが、せっかくタピオがオブラートに包んだのに、イロナが正式な立場を親切に教えたがために火に油。
「あなたは人の尊厳をなんだと思っているのですか! イロナさんを即刻解放しなさい!!」
「この国では合法なんだろ?」
「合法だからって、やっていいことと悪いことがあります! わかりました。僕がイロナさんを解放しましょう! 決闘です!!」
「だから話を聞けよ~」
ますますヒートアップするトウコ。タピオは丸く収めようとするが、イロナがよけいなことを言い出した。
「我を取り合っての決闘か……。主殿、燃えるな!」
「いや、ぜんぜん……」
「主殿も我を守りたいのなら、必ず勝つのだそ!」
「イロナも話を聞いてくれよ~」
イロナまで変なスイッチが入ってしまい、タピオは泣く泣く決闘を受けるのであった。だって、イロナの顔が怖かったから……
それからルール説明のようなことをトウコが言っていたが、やる気のないタピオは聞いちゃいない。その時間で少なからずいた冒険者パーティが囲んでいたので、タピオは目立ちたくないから、できるだけ体を小さくしていた。
「さあ! やりますよ!!」
ルール説明を終えたトウコは、木剣でタピオをビシッと指す。
「はぁ。わかったよ。でも、本当にいいのか?」
「イロナさんを救う正義の戦いです。当たり前なのです!」
「いちおう言っておくけど、俺は奴隷商に金貨990枚の借金があるからな。奴隷を譲渡した場合は、譲渡された者が残りの借金を払うことになっているから、やめるならいまのうちだぞ」
「990!? そ……それがどうした! 僕がそれで引き下がると思っているのですか!!」
タピオから借金を聞いて一瞬怯んだトウコであったが、まだやる気は残っているようだ。
「お前の仲間は、めちゃくちゃ首を振ってるんだけど……」
「いいから決闘を始めましょう!」
ハーレムパーティの女性陣は首がもげるほど横に振っているが、言い出したらきかないトウコはイロナにウインクしている。
「では、我が開始の合図をしてやろう。……はじめ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます