028 上級ダンジョン1
上級ダンジョン地下1階……
タピオはイロナを部屋の端に連れて行き、コソコソと作戦会議を行う。
「ここは地下60階まであるから、20階まではこの装備で行きたいんだ。それまでの攻撃は任せていいか?」
「何故だ?」
「武道家で登録しているからな。人が減る階層になってから、徐々に装備を整えていこうと思う。でも、盾役は任せてくれ」
「ふむ。わかった」
簡単な作戦を擦り合わせると、二人は歩き出す。そうして細い道を抜けたら、いきなり鎧を着たゴブリンジェネラルと五匹のゴブリンが現れた。
タピオは獲物が目に入った瞬間、ゴブリンジェネラルに突撃。ゴブリンを跳ね飛ばし、タピオと同じぐらいの大きさのゴブリンジェネラルが振った剣を、腕の部分を握って止める。
タピオにくっつかれたゴブリンジェネラルは、タピオを引き離そうと逆の手で殴ろうとするが、タピオはその手も握って動けないようにした。
イロナはタピオが突撃した瞬間に駆け出し、タピオが跳ね飛ばして倒れているゴブリンに剣を突き刺したり足で踏み潰したりして、簡単に息の根を止める。
ザコを一掃してタピオに追い付いたイロナは状況を見て、ゴブリンジェネラルに攻撃しようか悩む。
「主殿。もう、自分で倒したらどうだ?」
「ん? ああ。そうするか」
タピオはすでにゴブリンジェネラルの両手を握り潰し、腕力で押し潰していたのでイロナの出番は必要なかった。
なので、顔面に頭突きを数発入れて、ゴブリンジェネラルを倒したタピオであった。
「上級といってもこんなものなのだな」
「まぁ上層だからな。上層でも宝箱を回収して行こうと思っていたけど、少し急ぐとするか」
ドロップアイテムを拾っていたタピオはイロナの残念そうな顔を見て、作戦の変更を余儀なくされる。イロナの機嫌が悪くなることを避けたいがために……
* * * * * * * * *
タピオとイロナは破竹の勢いでガンガン進む。たまに冒険者パーティに見られることもあり、こんな会話がなされていた。
「あのオッサン、武道家なのか?」
「武器を持ってないからそうだろう……」
「新しい武道家のスタイルか……いいな。アレ、やってくれ」
「アホか! 武道家はスピード命。防御力も低いのに、戦士みたいな戦い方ができるか!!」
「じゃあ、戦士がやれ」
「できるか! こっちはただでさえ重たい全身鎧だぞ。こんなの着て、オーク二匹も引きずって走れるか!!」
タピオの戦い方は革新的であったため、何やら武道家と戦士は、皆から「マネしろと」とイジられていた。
また他の男女混合パーティの男と女の場合……
「あの美人さん……めちゃくちゃ強いな。うちのパーティに入ってくれないかな?」
「ジェネラル級を一刀両断よ? そんなの無理に決まってるじゃない。レベル差があり過ぎるわ」
「あのオッサンよりは、俺のほうが隣に立つのは似合うだろ? かっこいいし」
「顔のことを言ってんじゃないわよ。せめてあのおじさんぐらい強くないと足手まといになるって言ってんのよ」
「でも、確実にパーティは華やかになる!」
「はあ!? 私たちがブスッて言いたいの!? じゃあ、あんたをクビにして、あの人に声を掛けるわ」
「どうしてそうなるんだ!?」
「うち、剣士ってあんただけじゃん」
「あ……」
イロナの美しい顔と剣の腕に惚れ込んだ男たちは、女性とケンカに勃発。もちろん勧誘できず仕舞いで、タピオたちに置いていかれるのであった。
当然、男だらけのパーティなら、イロナに勧誘する声が届くのだが……
「このオークキングの睾丸のようにならない男なら大歓迎だぞ」
「「「「「ひぃ~~~!!」」」」」
目の前でぐしゃっと握り潰して見せて追い払っていた。というか、本当に耐えられるなら、タピオを見限ってもいいとか考えていた。
意外にも、タピオの元にも勧誘は来ていた。
「おじ様~。わたくしたちと一緒にパーティを組みません?」
「そんな強い人より、弱いわたくしたちを守ってくださいません?」
「俺たちに近付かないでくれ。イロナ。行くぞ」
しかし、取り付く島もない。三度も女で失敗したタピオは、イロナ以外とパーティを組みたくないのだ。
ぶっきらぼうに断ってイロナに腕を組んでもらえば女性パーティも追って来ないが、ヒステリックに罵詈雑言を言われていた。
* * * * * * * * *
モンスターを簡単に撃破し、罠はタピオが率先してかかって潰し、たまに勧誘して来るパーティは押し退け、予定通り地下20階まで下りたタピオとイロナは、セーフティエリアに辿り着いた。
先客は何人かいたがタピオたちの戦闘は見ていなかったので、勧誘して来る者はいない。ただ、腕を組んで歩いているので、彼氏彼女のいない者からめちゃくちゃ睨まれていた。
一番端に陣取ったタピオは夜営の準備に取り掛かり、イロナの料理を楽しみに待つ。それから寝床の準備が終わった頃にイロナも料理が終わったらしいので、二人は面と向かって座った。
「さ、さあ……腕によりをかけて作ったのだ。見た目はちょっとアレだが、たぶん美味しく出来ている……と、思う。食べてくれ……やっぱりやめたほうがいいかも?」
いつもの自信満々なイロナはどこにやら。どす黒いスライムのような物体を作り出したからには、さすがに自分も食べたくないのでお勧めできないようだ。
「いただきます」
「おい! 無理するな!!」
イロナに止められてもタピオはお構いなし。女性から初めて自分だけに作られた料理なのでバクバクと「おいしいおいしい」と言いながら全て食べきった。
「ごちそうさま」
「そんなにうまいのなら、我も食べたかったぞ。一人で食べるなんて……主殿? 主殿~~~!!」
残念ながら、タピオは手を合わせたまま昇天。いくら頑丈な体と優れた毒耐性を持っていてもイロナのポイズン料理には耐えられず、真っ白になるタピオであったとさ。
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