027 休日と準備


 朝からイロナとイチャイチャしたまではよかったタピオは、空中コンボを喰らって気絶中。そこに宿屋の従業員の男がノックをし、イロナが毛布をまとって対応していた。

 どうやら朝食を運んで来たらしいのでイロナが普通に中に通したら、床にうつ伏せで倒れる裸のタピオが従業員の目に入る。従業員は慌てて目を逸らし、「朝からお楽しみでしたね」という目を向けてからすぐに出て行った。


 イロナは扉が閉じられると、腹がへっていたこともあり朝食を取るが、タピオは起きる気配がない。少しは自分が悪い自覚があるのか、朝食を食べたら超重量のタピオをお姫様抱っこでベッドに運び、その腕の中で眠りに就いていた。


 それから昼頃、またノックの音が響き、タピオが目覚めた。


「つつつ……おん……! イロナだった」


 例の如くイロナの顔を見て驚いたタピオは、すぐにイロナだと気付いて落ち着きを取り戻す。今回は、イロナはまだ目覚めていないようだ。

 そうしてホッとしたのも束の間。またノックの音がしたので、タピオはズボンだけ穿いて対応する。

 どうやら従業員がランチを運んで来たようで、イロナはベッドに入っていることもあり、中に通して朝食のワゴンと交換してもらう。その時「朝からお盛んですね」と声を掛けられて、タピオは苦笑いしかできなかった。



 ランチをテーブルに並べたらタピオはイロナを起こし、席についてバクバク食べる。


「朝のアレで忘れていたが、今日はダンジョン行かないのか?」

「あ~。元々今日は、昼まで寝て準備するつもりだったんだ」

「準備??」

「上級ダンジョンは深いからな。もしものために一週間は潜れる食料が必要だ。携帯食もイロナに不評だったし、もうちょっとうまい物を探してみよう」

「ならば、習った料理を試してみたいから、その食材も買ってくれ」

「おお~。それは楽しみだな」


 ランチを素早く済ませた二人は受付で出掛ける旨を伝えると、腕を組んで広場にて買い物をする。

 タピオの持っていた携帯食は、半年は食べられる物だったため味は二の次。他を探したら一週間程度の携帯食はそこそこ美味しく、各種味見をしてから購入していた。


 それからイロナリクエストの食材を買うと、準備万端。宿屋に帰って明日からのダンジョン攻略に向けて静養に努め……


「さあ! 夜は何をする!!」


 られず、イロナの押し売りが始まった。


「あ、えっと……朝したからいいかな? それに明日から忙しいし、疲れることはちょっと……」


 今朝のダメージが抜けていないタピオは拒否。また気絶して眠ると、確実に明日に響くと思っての防衛本能なのだろう。


「なるほどな。ならば、我がマッサージをしてやろう」


 しかしイロナは、タピオのHPを削ってから寝るという選択肢を提示した。


「俺! 俺がやる! イロナの体を触りたいな~?」

「主殿のエッチ」


 当然、イロナの馬鹿力でHPを削られたくないタピオは、自分がやると手を上げて危険の回避。イロナもどこで習ったかわからないセリフを真顔で吐いて横になったので、マッサージを受けてくれるようだ。


「もう少し力を入れられないか?」


 腰を揉まれるイロナには、タピオのマッサージを受けても効かない。


「けっこう本気なんだけど……これでどうだ!」

「うむ。それだ。そのまま続けろ。ふぅ~……」


 タピオはめいいっぱい力を込めると、イロナから気持ち良さそうな吐息が漏れるのだが、いまいち合点がいかない。自分から痛くも辛くもないマッサージを選んだのにめちゃくちゃ疲れる。

 だが、女の柔肌に触れることに免疫のないタピオは、汗を流しながらも股間はモッコリ。朝、イロナに握り潰されかけたこともあり、イロナの体に当たらないように気を付けながら全身マッサージを続ける。


 それから小一時間……イロナからのストップは掛からず、タピオが疲労でギブアップを告げようとした頃、イロナの寝息が聞こえて来た。


「寝たのか……あ~。疲れた~」


 疲労困憊のタピオはさっきお風呂に入ったにも拘わらず、びっしょりの汗を流してさっぱり。ついでにタピオのタピオもさっぱりさせて、イロナの隣で横になる。

 タピオは本当に疲れていたのか、横になった瞬間に眠り落ちたのであった。



 翌朝……


 お肌ピチピチのイロナとお肌ガサガサのタピオは出掛ける準備。今日のダンジョンは上級ということもあり、イロナは一番いい軽鎧を身にまとい、タピオはドロップアイテムで持っていた、ちょっといい胸当てを装備した。

 準備が整うと宿を引き払い、上級ダンジョンに向かう。そこで衛兵に書類を提出し、舐めるように装備を見られるが、人数が少ないから気を付けるようにと言われただけで通される。


 こうしてタピオとイロナは長い階段を下り、上級ダンジョンに足を踏み入れたのであった。

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