017 結果報告
初級ダンジョン、ボス部屋の奥にある転送魔法陣に乗った二人は、一瞬にしてダンジョンの外に移動。衛兵にスライムキングの魔石を見せて、クリア証明書を受け取る。
それから冒険者ギルドに向かい、イロナと腕を組んだままタピオはギルドの中へと入った。
中へ入るといつものように一斉に見られるが、約三分の一はタピオたちからすぐに視線を逸らしていた。タピオは少し変だなと思いながらもズカズカ歩き、受付に向かう。
そこで昨日対応してくれた猫耳受付嬢のミッラを見付けたので、タピオは初めての人よりは話しやすいから一直線に向かうが、ミッラは二人と目が合った瞬間、ゆ~っくりと逃げ出そうとした。
「もしかして、休憩の時間だったか?」
だが、ちょっと遅かった。タピオに声を掛けられて、渋々席に戻るミッラ。
「い、いえ。たいした用事ではありません……それより、今日はどういったご用件でしょうか?」
「これ。クリア証明書だ。ランクアップを頼む」
「クリア?? 昨日の今日でですか!?」
何やらミッラは大声を出して驚くので、タピオは静かにするように言ってランクアップを急がせる。当然少し疑われたが、スライムキングの魔石、道中に倒したモンスターの魔石といった証拠は揃っているので、難なくランクアップ。
Fランクから一足飛びで、Dランクへと上がったのであった。
「いや~……お二人は強いとは思っていましたけど、まさか半日でクリアしてくるとは思いませんでしたよ」
ミッラは世間話をしながらも手を動かし、魔石とドロップアイテムの買い取り価格を提示する。
タピオはいつも通りの買い取り価格だったのでさらさらっとサインして返す。
「出戻りだからな。初級ぐらいは余裕だ」
「引退前は、名を馳せた武道家だったんでしょうね~」
「そこまでではない。鳴かず飛ばずだった」
「またまた~。はい。ランクアップも終わりました」
「ありがとう。じゃあ、俺たちは行くな」
あまり自分のことを聞かれたくないタピオは、ミッラからよいしょされても適当に返事し、お金を受け取ったら足早に離れて行く。
その謙遜さがミッラには好印象だったのか、「イロナは怖いけどタピオはいい人」として受け止められた。
それからギルドを出ようとしたのだが……
「ひゅ~。お熱い二人だね~。でもオッサンには、こんな美女はもったいないな」
またガラの悪い冒険者にからまれた。イロナがずっとタピオの腕を組んでいることが気に食わないようだ。
「勘弁してくれ……もう、俺はイロナに殴られたくないんだ」
暗い顔でタピオが見逃して欲しいと言うと、ガラの悪い男は調子に乗ってしまう。
「ぎゃはは。女の尻に敷かれているのか。オッサンらしいな。俺の所に来たら、ちゃんと調教してやるぞ。その女をよこせ!」
どうやらガラの悪い男は、イロナがどうしても欲しくてタピオにからんでいたようだ。しかも、いきなりタピオの顔にパンチを入れた。
「「ぎゃっ!?」」
その瞬間、二人の男の悲鳴が聞こえる。
「手が! 手が~~~!!」
一人はガラの悪い男。頑丈なタピオの顔を素手で殴ったからには、拳の骨が折れてしまったのだ。
「う、腕が……イロナ! 締めすぎ!!」
もう一人は、何故かタピオ。ガラの悪い男の言い分に苛立ったイロナの締め付けがきつくなったので、タピオからギブアップが入ったのだ。
「あ~。えっと……俺は殴られただけだからな! 何もしてないからな! 行くぞ!!」
イロナからの締め付けが弱くなると、タピオは捨て台詞を残して、ギルドから出て行くのであった。
足早にギルドを去ると、タピオはイロナと共に昨日の広場にてランチ。何故かタピオは怯えて辺りをキョロキョロしながら料理をチビチビ食べているので、イロナは不思議に思って苛立ちはどこかに行ったようだ。
「殴られた主殿が、どうして怯えているのだ?」
「またあらぬ疑いを掛けられると思ったら……」
「疑い? どう見ても、あいつが悪かっただろう。それに目撃者は多々いる。主殿が悪いと見られることはない」
「それだといいんだが……」
「あれなら半殺しにしたところで、非は向こうにあるから自信を持て」
いちおうイロナはタピオは慰めているようだが、「半殺し」というワードを聞いて「そこまでしなくても……」と心の中でツッコンだので、タピオは冷静になって来た。
「もしかしたら町を出るかもしれないから、覚悟しておいてくれ」
「なんでそうなるのだ……はぁ~」
あまりにも消極的なタピオに、イロナは呆れて溜め息しか出ないのであった。
それから食事を終えて移動しようかとの話になった時、老人が杖をつきながら二人の元へ凄いスピードでやって来た。
「なんだ?」
「やはりタピオさんでしたか! タピオさんに命を助けられたジジイですよ!!」
「ああ。じいさんか」
老人の正体は、オークに馬車を襲われていたところをタピオが救ったヨーセッピ。タピオの姿を見て寄って来たようだ。
「どうやら奴隷も手に入れたようですな。それはもう、夜も楽しいでしょう? うっひっひっ」
「まぁ……そうだな」
下品に笑うヨーセッピの言葉に、そこまで楽しいことをしていないと思うタピオであったが、イロナが目の前にいるので肯定するしかない。
「それにしても、美しい
イロナを一通り下卑た目で見たヨーセッピは、ニヤケ面から急に真顔に変わり、タピオを呼び寄せてコソコソと喋る。
「あ、アレをお買いになったのですか?」
「そうだが……」
タピオから確認を取ったヨーセッピは、「あっちゃ~」とおでこを叩く。
「アレは男の象徴を食いちぎる『男根鬼』ですぞ! 即刻、返品しましょう!!」
どうやらイロナは、お金持ち界隈でそれなりに有名で、『男根鬼』なる不名誉な二つ名を付けられて恐れられているらしい……
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