014 買い物デート2
服屋で【危ない水着】の購入を決定したタピオであったが、イロナをこんな格好で外を歩かせるわけにもいかないので違う服を要求していた。
「これはどうだ?」
「それも似合っているな。イロナは何を着ても美しい」
「フッ……もっと言ってくれていいんだぞ」
「戦女神とは、イロナのためにあるような職業だ」
「そうだろうそうだろう」
【危ない水着】の次に選んだ服で、タピオが見とれて「美しい」と言ってからは、イロナはノリノリ。わりとよいしょに弱いらしく、調子に乗って何度も着替えては、タピオに褒められてご満悦。
「もう、それで決定でいいんじゃないですか~?」
ただし、バカップルに付き合わされる女店主はたまったものじゃない。なかなか決めてもらえず、何度も泣きが入っている。
「いや、イロナには、一番似合った服を着て欲しいんだ」
「主殿……次を持って来い!!」
そして、タピオは飽きずに違う物を要求するから、イロナも何やら感動して女店主を走らせようとする。
「もうありませ~ん。さっき着た中から選んでくださいよ~」
一時間もバカップルに付き合わされた女店主はギブアップ。泣きながらへたりこんでしまったので、タピオは我に返った。
「す、すまない。それじゃあ……」
それからまた一時間、タピオはああだこうだ言いながら決定に至り、結局は女店主お勧めの女性らしい服を数着、お勧めの女性冒険者が好みそうなパンツルックの服を数着、それと下着を数着と【危ない水着】を忘れずに購入することとなった。
支払は一括払い。イロナの脅しで適正価格だったのだが、女店主を泣かせたこともあり、タピオは迷惑料として一割多く支払っていた。
全てをアイテムボックスに入れると、時間を掛けすぎたので次はランチ。露店の多く集まる広場で買い食いに繰り出す。
適当な料理を買ってはその場で食べ、気に入ったら追加して、空いているテーブル席に陣取った。
「それにしても、主殿は意外と金を持っているのだな」
「ん? あ、ああ……ちょっとはな」
「あの量の服を迷わず買うとは、ひょっとして金持ちなのか?」
「いや……そんなには持っていない」
「じゃあ、無理して買っていたのか?」
「無理ってほどは……俺がいくら持っているのか知りたいのか?」
いくら性奴隷であっても、女に警戒心の強いタピオはお金の話をしたくないようだ。
「それは、言いたくないってことか?」
「まぁ……誰が狙っているかわからないし……」
「我が狙っているとでも??」
またイロナの機嫌を害して睨まれるが、引けない一線がタピオにもある。
「そうだ。俺は何度も奪われているから、イロナになんと言われようと、額は喋らない」
三度も一文無しになったタピオは、決意を持った目でイロナを真っ直ぐ見る。その睨み合いは数秒続き、お互いが持っていた木製のコップは同時に握り潰された。
その異様な雰囲気は辺りにも伝わり、一部の者にはガタガタと謎の震えが襲う。
「フッ……なかなかいい胆力を持っているじゃないか」
先に折れたのはイロナ。殺気を解いて微笑を浮かべた。
「それでこそ、我の主だ」
「まさか……俺を試したのか?」
ここでタピオも緊張を解いた。
「試したというほどでもない。単純に質問しただけだ」
「そんなに殺気を出してまで知りたいのか……」
「興味ない。ただの世間話だ」
「嘘だろ? 世間話で、俺は殺されかけたのか」
「世間話で殺すわけがなかろう」
イロナはこう言うが殺気は本物だったので、世間話も命懸けだと、タピオの「イロナ取扱い説明書」に刻まれたのであった。
ランチが済むと、デートコースっぽくない場所に移動。腕を組むイロナは時々力が入るので、タピオは何度かタップして武器屋の扉を潜った。
「イロナはどんな武器を使うんだ?」
「何でもいけるが……好みは、やはり剣だな」
「好きなのを選ぶといいよ。あと、予備も買っておこうか」
「ふむ……主殿がそう言うなら、二本貰おうか」
武器屋では、一番高くて性能のいい剣を二本選び、面倒な交渉はイロナが潰し、短時間で購入を済ませる。
しかし次の防具屋では、イロナの防具選びに時間が掛かり、結局は一番高い軽鎧と、丁度真ん中の価格帯の軽鎧を購入することとなった。
必要な物の買い物が終わった頃には夕暮れ。今日は買い物だけで宿屋に戻ることになった。
「さあ……今日はどうして欲しいか言え!」
「あ、えっと……」
今日も今日とて、イロナの夜の奉仕は免れない。黒い下着姿で仁王立ちで立つイロナに色っぽさはないが、ナイスバディーにタピオの下半身は反応してしまう。
「では……洗いっこしましょうか……」
本当は、あんなことやそんなことをしたいタピオであったが、昨夜タピオのタピオが取れかけたこともあり、素直にして欲しいことは言えない。
しかし、男の
「ぎゃああぁぁ~!!」
残念なことに、イロナに布で背中を強く擦られたタピオは、一発でグロッキー状態。それでも全身を削られ、肌が捲れなかっただけ幸運だったのだが、今日も念願の合体はできず、生殺し状態で眠りに就くのであった。
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