第9話 雨の魔女
「う、うぅ。私なんかと握手してくださるなんて。感激です」
ヴィヴァーチェは泣き始めた。まったくオーバーリアクションな奴だな。
でも二千年も封印されていて寂しかったんだろう。これは普通の反応といえるかもな。
「二千年も封印されていて辛かったろう? 何かしたいこととかないのか?」
「アレス様のされたいことを手伝うのが、私のしたいことです!」
ヴィヴァーチェは即答した。そう言われると困るな。
もう実家を追放されたので、日々続けていた鍛錬をする意味もなくなった。かといって、他にやりたいこともない。
自由を求めて国を出たはいいが、明確な目標を失ってしまったわけだ。
「レイカさんは、何かしておきたいこととかありますか?」
「そうだなぁ。まずはこの城の詳細と、ヴィヴァーチェの来た時代について教えて」
レイカさんに指示されたヴィヴァーチェは、あからさまに不満げな顔をしていたが、最終的にはおとなしく従った。
結果として分かったことは三つ。
一つは、魔王国滅亡後、ここにはオレイン皇国という名の国ができ、このうち捨てられた古城を大事に保護していたということ。
二つ目は、俺とレイカさん、ゼストさんは救世の英雄として千年後まで名が伝わっていること。
三つ目は、千年後の世界は未曾有の気候変動により、滅亡の危機にあるということだった。
「人々は、この災厄は人為的なものとしか考えられないと思い始めました。そこで、まことしやかに噂されるようになったのが、【雨の魔女】伝説です」
待てよ。雨の魔女といったら……
「そう。もともと地球温暖化ってのが問題になってたんだけど、それだけじゃ説明できない異常気象が世界中で観測されるようになったの」
「いや、【雨の魔女】伝説なんて、俺が生まれるより前から伝えられている伝説ですよ? 知らないんですか?」
「え」
「え」
なんかまずいこと言ったか? 皆驚いている。
「ちょっと! その伝説の詳細! 詳細を教えて!」
「そうです! その伝説に、雨の魔女の攻略法とか! 攻略法とか含まれていないんですか?」
どういうことだ?
これからの千年で【雨の魔女】伝説は途絶えてしまうのか? そしてなぜ、千年後に再び囁かれるようになるのだろうか?
謎は尽きないが、俺は知っていることを全て話すことにした。
「雨の魔女セーレといったら、気まぐれで干ばつや洪水を起こす災厄の権化みたいな存在ですよ。もともとは、雨乞いのため生贄として殺された少女の成れの果てだと言われています。まぁどこまでが真実かは全く分かりません。千年以上前から伝わる伝説ですから」
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