第2話 実家追放
「何の騒ぎです?」
見上げると、メドロック兄さんが扉を破って入ってきた。
「兄さん、助けてください。あのおじいさんが念力で私のことを……」
「そんなことはどうでもいい」
メドロック兄さんは、信じられないほど冷たい声で俺の言葉を遮った。
「あれがお前のスキルなのか? アレス?」
「それは……」
「その通りです。メドロック様。このアレス・ルーラオムが覚醒したのはボロ家とゴミを一緒に召喚するクズスキル。名付けて【廃屋召喚】とでも言いましょうか。役に立たないどころか害悪でしかないスキルです」
神官のジジィが代わりに答える。
「そうか」
兄さんはしばらく無表情のまま考え込む。
一体何を迷うことがあるのか? 俺を痛めつけた神官のジジィに抗議してくれるんじゃないのか?
「アレス。お前は一族の恥さらしだ。今日でお前をルーラオム家より追放する」
「え……」
助けてくれるんじゃないのか? いつもそうしてくれたじゃないか。
「い、嫌だ。なんで俺が追放されなきゃならないんだ! きっと何かの間違いだ! そうだ。やり直しを……」
「アレス」
またしても、メドロック兄さんは俺の言葉を遮った。
「見苦しいぞ。これ以上恥をさらすようなら、今この場で叩き斬る!」
冗談ではない。本気の発言だ。
兄さんは、いや、メドロック・ルーラオムは、こんなにも簡単に家族を切り捨てられる男だったのか。
逃げなければ。
もう名誉がどうとか言ってられない。逃げなければ、今この場で殺される。
だがメドロックは、ゆっくりと抜剣し、こちらへ歩み寄ってくる。
まずい。
さっきの念力の衝撃で、身体が痺れて動けない。
這いずり回る俺の首を掴み、メドロックは剣を水平に構えた。
だが次の瞬間、俺の眼前を凄まじい速度で影が通り過ぎた。
見ると、女剣士だった。見たことのない服を着ている。黒髪で、東洋風の顔だち。防具はなし。ロングソードだけを腰に佩いている。
メドロックの握っていた剣は、奪い取られていた。
「なんだ? これはルーラオム家内部の問題だ。邪魔をするなら……」
「あー、邪魔をするかどうかはそこの少年の返答次第だ。君、アレスといったね? どうして私の実家を召喚できた?」
何を言っている?
俺が召喚しようとしたのは自分の部屋だ。
こんな初対面の女の実家など、召喚できる訳がないだろう。
からかっているのか? それとも、この女の実家は本当にこんなゴミ屋敷なのか?
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