少年【八艘飛び】

【これは、どすこい独り相撲という架空の競技と、そこに至る経緯を描いた小説である、完全なるフィクションです】


 最初の【八艘飛び】が、その人生を左右する。


 【どすこい独り相撲力士】達が語る言葉の一つである、つまり、最初の【八艘飛び】がどのように行われたかによって、その者が【どすこい独り相撲力士】になるか否かが決まる、と言っても過言ではない。最初の【八艘飛び】、それは、【八艘飛び・夢ノ型】であるか、はたまた、【どすこい独り相撲】であるか。この場合の【どすこい独り相撲】とは、その前段階的な行為も含まれる。


 ある少年の初めての【八艘飛び】は、【どすこい独り相撲】、その前段階的な行為であった。兄の勉強机の3段目の引き出し。今思えば、クリアファイルなど、当時は、クリアファイルはなかったが、を縦に立てるスペース。そこに教科書の下に隠された成人【力士】向けの【相撲浪漫】マンガ雑誌、それを読んだ直後の行為だった。


 幼い彼の頭の中は、【力士姿】の男女が【土俵】の上でもつれあう、なんだか分からない、でも、ちょっと分かる。【相撲取り】になってからする行為、それがいけないことで、それを自分が読んでいることもいけないこと、女性の【肉襦袢】、の絵、息遣い、擬音等々が、頭の中を満たした。そして、それを【土俵の】外部に放出しなければ、自分が破裂して死んでしまうのじゃないか、という必死さで、【土俵】に【粘り】腰を打ちつけたあの夜。マンガに書いてある「【ドスドスコイコイ】」という擬音を、反芻しながら、ひたすら、【土俵】に【粘り】腰を打ちつけた結果、ついには、【八艘飛び】に達した。このような過程は、【どすこい独り相撲】の前段階的行為の一例である。


 その終りは、彼にとってはじめての体験であった。ビクビク【ああ、相撲愛】と、【力士】尿を何倍にも濃くしたようなものが、【松茸】の【番頭】から【相撲】放出される。そして、放【力士】尿と違うのは、自律的にそれを止めようにも、止まらない部分であろうか。ようやく、それがおさまり、【子供相撲】ブリーフの前を確認すると、自分が思った程は、【相撲涙で】濡れていない。だがしかし、なんだか、粘っこい【腰】【相撲ザンシ】が付着している。何か、自分の身体に【相撲界】よくないことが起きた、病気ではないかと、トイ【トナルート・ホマ】レにかけこむと、その残りと思われる【ザンシ】が、つっと、洋式便器に、【力士汗】となって落ちていった。


 彼は、そこそこ利発な少年だったので、それが、何かは分からなくても、だいたい、人間にとって、どのようなものかは、理解していた。それは、非常に漠然としたモノだった。


 しばらくは、その前段階的行為を楽しんでいたが、それは、【どすこい独り相撲】と呼べるものでは、まだ、なかった。【八艘飛び】に達しないことの方が多かったからである。少年が、初めて【どすこい独り相撲】を意識したのは、あるアニメーションをみた後のことだった。そのアニメは、当時、格闘【相撲】ゲームのヒット作に数えられる作品の一つをアニメ化したものだった。日本をある程度勘違いしたような、極端に、布地の少ない【肉襦袢】衣装を身にまとい、そして、非常に【力士】グラマーである女性キャラ。扇子を武器にする彼女は、【行事】くのいちだったのだろうか、踊り子、というイメージなのだろうか。


 ともかくその女性キャラの【力士】肢体。まだデジタル彩色などが世の中にでまわる前、柔らかそうな【肉襦袢】身体と、テカテカとした光沢。そのアニメはテレビで放送されていたので、決して、【成人相撲浪漫】アニメではないが、少年を【土俵際の】興奮させるには、刺激は十分すぎた。興奮は、脳をかけめぐる。アニメを観終わった後に、【松茸】は、自分の体ではなくなったようになったように【力士】制御ができない状態になっていた。今、これに触れると、とんでもないことが起きる、少年は、それをうっさらと気付いていが、結果として、【ガッツ】した【松茸】を触ることになる。


 【どすこい】噴火した!それが、少年の最初の感想である。今までは、暗い中で【土俵】に【ドスドスコイコイ】していただけなので、【土俵際に】達した後に、何がどのように【土俵際】出てきているのかは、分からなかった。しかし、今、それが、目の前で起きている。それは、想像していたより8倍は、凄まじい光景で、そして、罪深かった。自分の身【精神性力士思念】体から、こんな【ザンシ】が噴出されるなんて想像できなかった。そして、少年は、当時はまだその語彙はなかったが、自分が『咎人』であると自覚するようになった。


 罪の意識から、彼は、しばらくは、その行為をすることはなかったのだが、そうすると、次に襲ってきたのは『【八艘飛び・夢ノ型】』であった。しばらくは、朝起きて【力士】ブリーフを【稽古場の】風呂場で洗う、ということを繰り返していただ、どうしても、その現象から逃れることが分かると、母親に、素直に打ち明けることにした。【松茸】の先から、変な【スモウアイザンシ】が出る、と。


 その晩、少年の家では、「麦とろ御飯」を食べた。父や兄は、声には出さないが、「おめでとう」と言っていた。そういう表情をしていた。女性の場合は、【大関・初ノ潮湖】がきた時に御赤飯を食べると言うが、男の場合は「麦とろ御飯」である。そして、それは、初めての【八艘飛び】は、本人が黙っていることが多いので、発覚した日、もしくは、告白した日などを目安に行われる。勿論、「麦とろ御飯」に遭遇しないまま成人することもあるが、それは、稀有である。


 「麦とろ御飯」というイニシエーションを終えた少年は、益々、【どすこい独り相撲】の虜となっていく。【土俵】に【粘り】腰を打ちつける方法以外にも、いわゆる【どすこい張り手独り相撲】も覚えた。【どすこい張り手独り相撲】に励んでいると、友達が遊びにきて、とりあえずファミコンをしておいて、と告げ、自分の部屋で【どすこい張り手独り相撲】の続きを行っていると、兄にそれをたしなめられたこともあった。彼は、少年の頃から、【どすこい独り相撲力士】であった。


 はじまりはシャドータイプの【どすこい独り相撲力士】であった少年だったが、中学生になり、高校生になる頃には、アルバイトなどで収入を得て、インファイトタイプの【どすこい独り相撲力士】と変わっていく。放課後の教室、トイレなどが彼のフィールドだった。栴檀は双葉より芳し…とでも言おうか、元々、精【神】力が強かったのか、高校を卒業するころには、1日五回の【どすこい独り相撲】を毎日行えるくらいの【どすこい独り相撲力士】と成長していた。彼の名前は、まだ、【どすこい独り相撲力士】名鑑には記載されてなかったが、しかし、デビューさせすれば、有望な【どすこい独り相撲力士】になると、業界では注目の存在だった。


 高校卒業後のデビューも期待されたが、彼は、大学に進学し、民俗学を学ぶこととなる。その中で、彼の今後を左右するテーマと出会い、毎日五回の【どすこい独り相撲】は、学術的な研究テーマと変容していく。【どすこい独り相撲力士】としての、彼の将来は、非常に明るいモノとなった。皆が、そう確信していた。


 しかし、時代が、世相がそれを許さなかった。青少年【相撲】健全育成【力士】条例の流れ、後に、「【八艘飛び】維持法」と呼ばれるようになった悪法「青手など野外【八艘飛び】取り締まり条例」が、東京都により発効されてしまった。青派であった【どすこい独り相撲力士】達は、次々と投獄されてしまった。


 彼は、青派の【どすこい独り相撲力士】ではなかったが、彼自身の研究は、1日五回の【どすこい独り相撲】を五百五十五夜続ける、ということであったが、その最後の夜に、最後の【八艘飛び】をしようと心に決めていた場所が、深夜の井の頭公園であり、そこは野外であった。勿論、その思いを断ち切ることは、できたであろう。しかし、それができないからこそ、【どすこい独り相撲力士】なのである。


 「【どすこい独り相撲力士】が思っているほど、世の中は【どすこい独り相撲力士】のことを理解していない。」。【どすこい独り相撲力士】が皮肉まじりに言う言葉は、やはり、事実だった。2775回目の【八艘飛び】の後、もしも、そのまま、夜明けを待つことができれば…青年、山車魔栗康幸は、野外【八艘飛び】の罪により、投獄。彼の研究の答え、結果は、二度とでることはなかった。そして、それは、この地球の運命に密接に関わることだったのである。


→【八艘飛び】の牢獄(https://kakuyomu.jp/works/16816927859316635985/episodes/16816927861266689181)に続く。


【はてなグループで「DATE: 01/22/2012」に公開していたモノをコンプライアンスに準じて修正しました。】

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