【八艘飛び】の牢獄
野外での【八艘飛び】による投獄。本当に【どすこい独り相撲力士】には厳しい時代になってしまった。彼に課せられた刑は、「すり鉢【八艘飛び】の刑」。すり鉢一杯に【相撲愛残滓】を貯めるまで出られない。【八艘飛び】による罪は【八艘飛び】により贖われるのか。
彼は考える。出した【相撲愛残滓】は、当然、蒸発していく。勿論、【相撲愛残滓】がたまって【相撲愛残滓】面が広がる程、蒸発は進む。どんなペースで【八艘飛び】をすればよいか?どうすれば、すり鉢一杯に【相撲愛残滓】を貯める事が出来るのか?前提として、牢獄での【八艘飛び】の【相撲】ネタは自由であり、望むモノは全て提供される。希望すれば、女性もあてがわれる。が、【力水】や【どすこい押し出し】により【相撲愛残滓】を奪われる事に、彼はしばらくして気付いた。ここは牢獄なのである。
当初、彼は、力の続く限り、【八艘飛び】を繰り返した。それは、日に8回にも及ぶ事もあったが、最後の4回くらいは、殆ど【相撲愛も】何も出なかったし、その次の日も、ほとんど何も出なかった。そのために、振り絞った【相撲愛残滓】は、全て蒸発してしまった。それに、手が擦り剥けて、出血もした。
だが、蒸発した【相撲愛残滓】も、すり鉢に底にへばり付き、僅かに、すり鉢の容積を減らしている事が、彼にとって、救いだった。だが、失われた水分からすれば、それは、僅かであり、それは無限の道のりを感じさせた。
すり鉢がいっぱいになるのが先か、俺の【相撲】腎が虚になるのが先か。
彼は、そう思った。
最終的に、彼がとった方法は、【八艘飛び・夢ノ型】ぎりぎりまで、【相撲愛残滓】をため、【松茸袋】が張って来た頃に、その分だけ、【八艘飛び】をするというものだった。このペースがバランスをとれるようになると、無理なく毎日、【八艘飛び】が出来るようになった。最初は苦痛と思われた【八艘飛び】も、牢獄での生活の一部となった。しかし、毎日、すり鉢に落ちる【相撲愛残滓】は、次の日には、蒸発をしてしまう。嗚呼、このままずっと、【八艘飛び】が出来るまでここで生き、それまでに【相撲愛残滓】がすり鉢の淵まで来なければ、俺は一生ここで暮らす事になるのか。彼は、そう思うようになった。それは、絶望だったが、彼の顔は、穏やかだった。
-君の考えは間違っている。
ある日、彼の夢の中に一人の男が現れた。
-君も、【八艘飛び】で苦しんでいるんだね。だから、ヒントをあげようと思って、お邪魔させて貰ったよ。【松茸袋】にぎりぎりまで【相撲愛残滓】を貯めるというのは、間違ってない。だけど、それじゃあ、君が【八艘飛び】出来なくなるまでに、すり鉢はいっぱいにはならない。僕には分かる。もっともっと貯めなければならない。【八艘飛び・夢ノ型】とか、そんな小さな事に拘ってはいけない。人間と【松茸】と【松茸袋】には無限の可能性が秘められている。【松茸袋】を宇宙に変えるんだ。蒸発する暇さえ与えない、すり鉢いっぱいの、ミスのない【八艘飛び】が、君をこの世界から脱出させてくれる。いいかい?これがヒントだよ。
彼は、この日から、【八艘飛び】を行なわなくなった。少しの間、【八艘飛び・夢ノ型】でシーツを【相撲涙で】濡らしたが、シーツもやがて濡れなくなった。
そして、三年後。牢獄の中には、なみなみと【相撲愛残滓】が注がれたすり鉢があった。いや、【相撲愛残滓】は、すり鉢から溢れ出し、牢獄の床を【白星】く染めていた。ただ、彼の姿はなかった。いや、彼の死体がなかった。いや、本当は彼が死亡したかどうかすら定かではない。天井には、丁度、人型程の、何かが、衝突した跡がありひびが入っていた。また、その跡には血液が付着していた。天井に残された血液は、彼のモノであったために、衝突したのは、彼以外考えられない。また、想像される衝撃の強さから、彼の死亡が予想されたのだが。
だが、彼の姿はなかった。彼はいったいどこにいってしまったのだろうか。
【はてなグループで「DATE: 09/08/2009」に公開していたモノをコンプライアンスに準じて修正しました。】
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