【どすこい独り相撲】2.0あるいは【松茸】2.0
-私の夢は、いつか、【松茸】になることなんだ。
-はぁ?
つい立場を忘れて、先生にインネンをつけるような感じで、疑問を口に出してしまった。15時の小休止、午後の珈琲、温かくも、寒くない、気持ちの良い午後に、この先生は、何を言い出すのだろうか…。やはり、サイバネティクスの権威、柾亀精一郎氏ともなると、感覚も常人のソレとは違ってくるのだろうか…。
いや、もしかしたら、「【マツタケイ】」じゃなくて、「ベンケイ」と聞き間違えたのかも知れない。先生は、きっと、「武蔵坊弁慶」になりたいのじゃないだろうか。そうだ、そうだ、きっと、そうだ。
-いや、いきなり、【松茸】とか言ってしまって、すまなかったね。
聞き間違ってなかった!
-ふいに昨日の晩食べたウインナー炒めのことを思い出してね。
だとしても!どうしたらいいのだろうか、一応、聞いた方がいいのかな。
-順を追って説明した方が良かったね。
あー、そうですか。
-情報化社会とか、世の中が便利になっていく究極として、人類は頭部と指が一本だけになる…なんて話があるね?
-ああ、そんな話がありますね。
-でもね、私は、そんな話は、嘘っぱちだと思っているよ。
-そうですね。
-【松茸】も残るだろう。
-は?
-まぁ、女性のことは分からないがね。
-…はぁ。
-………。
-先生?
-すまない、話の順序を間違えた…。
…なんたる。その後、柾亀先生は、本来の話の流れを模索しだした。何故、サイバネティクスを志したか。先生の専門分野は、情報工学、通信工学で、主な研究テーマは、人間の神経の電気信号を変換…などであり、それらは、義手等に応用されている。しかし、本当に興味があるのは、無線により、遠隔で人体を操作する…ことらしい。
-つまり、私の現段階の最終目標は、無線で動く【松茸】を作ることなのだよ。作るというより、一度、切り離し、そして、無線で繋ぐという感じだろうか。何故、そんなことをするか?想像力の乏しい者は、自分【力水】とかを想像するだろう。まぁ、それも良いかも知れない。だが、だよ、無線化された【松茸】で可能なことは、それだけじゃあない。例えば、【松茸番頭】を自分の背中で刺激する…なんてことも出来るだろう。「孫の手」ならぬ「自分の息子」とでも、言おうか。
この研究室に配属されて以来、こんなに熱っぽく語る先生は初めて見た気がする。
-そして、私の夢は…【松茸】になることなのだよ。男は、胃袋と【松茸】に支配されているという言葉もあるが、圧倒的に【松茸】に支配されているだろう。究極的に言えば、食事など、【相撲愛残滓】を作るために、していると言えるだろう。私は、そのような【松茸】になりたい。つまり、【松茸】と間脳と【ガッツ】中枢のみを人体から摘出し、それらを接続する。そうすることで、私は、【松茸】の、身体の全ての刺激を、全身で受け止めることが出来る。その快感たるや…!!!理論は、もう出来ている。後は実行するだけなんだ。
この告白は、何を先生を駆り立てたのか?だが、秋の空のように先生の顔は、清々しかった。実は、途中から録音をしておいた。お金に困った時、役に立つ気がするから、気持ち悪いけど、この録音は大切にとっておこう。
男の壁、肉豆腐、女の楽園(https://kakuyomu.jp/works/16816927859316635985/episodes/16816927860917639940)に続く。
【はてなグループで「DATE: 11/25/2011」に公開していたモノをコンプライアンスに準じて修正しました。】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます