【八艘飛び】アルピニスト野口出寿夫インタビュー

「雲の白、雪の白、僕の【白星】が交わった時…来たな…って思うんです。」


 アルピニスト、野口出寿夫(のぐちだすお)は、遠くを見るような目でそう言った。彼は、日本【どすこい独り相撲力士】協会が認める【八艘飛び】アルピニストだ。その名の通り、高い山の頂で、【八艘飛び】をする事を生業にしている。


「山で食べるものですか?うな丼や、うなぎパイですね。【八艘飛び】は、山に登る前から、もう、始まっているんです。」


 アルピニストとして、常に超一級の【八艘飛び】を心がける彼は、準備にも余念がない。


「それで、命を落としかけた事もあります。」


 …彼が【八艘飛び】家を志したきっかけは、彼が中学生の時にさかのぼる。修学旅行の夜、クラスメイトに隠れて、トイレで【八艘飛び】した時、【八艘飛び】家としての道が開けたと言っても過言ではない。


「あの時の感動は、今でも覚えてます。緊張と弛緩…んふふ、トイレット【番付用紙】が思いの他ごわごわだったんですよ。」


 その時の【相撲の】快感が忘れられず、高校、大学と【八艘飛び】の道に進んだ。電車、肉屋、東京タワー、活動の場所は多岐に渡った。その時は、まだ、流浪の【どすこい独り相撲力士】の1人だった。


「会社に入ってからは、毎日が冒険でしたね。営業職だったので、外回りの時は勿論、内勤の時は燃えました。全てのフロアー、全ての部屋を制覇したいと思ってました。今思えば、会社も一つの山…でしたね。」


 しかし、そんな折、彼の人生は急変する。給湯室で【八艘飛び】をしようとしている所を、女子社員に目撃されてしまったのだ。


「時代の変化もあったと思います…ただ、あの時、『今しかないッ!!』と強く思ったんです。」


 彼は、脱サラして、【八艘飛び】アルピニストとなった。「人生に三度ある決断、就職、【八艘飛び】、結婚と同じくらい重要な決断であり、転機であった。」と後に付け加えてくれた。


「今の夢は…アルピニストなら誰もが夢見るエベレスト、ですね。世界一高い所で、自分をこっそりと、解き放ちたいんです。」


 彼の実力なら、エベレスト制覇もなんなくやりとげるだろう。だが、彼は知らない、ロシアの宇宙飛行士、ロシアーノ=【ドスコスモウ】スキーが、先日、国際宇宙ステーションに於いて無重力空間における【八艘飛び】に成功したことを…。


「なかなか入山許可がおりなくて、毎日、やきもきしています。こういうのも、欲求【相撲】不満と言うのでしょうか?んふふ、だけど、いつの日か…待ってろよッ!!エベレストッ!!」


 彼の眼差しは、熱く、遠くエベレストに向いているようだ。「井の中の蛙…」、私は彼に聞こえないよう、小さな声で、そう呟いた。



【はてなグループで「DATE: 01/17/2009」に公開していたモノをコンプライアンスに準じて修正しました。】

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