26. Remember High Fantasy 前編

『ホラー』とは、恐怖を語源とし、それを題材とする物語のこと。

幽霊ゆうれい』『妖怪ようかい』『ゾンビ』特殊ではあるが『ピエロ』等を登場させることで、人の心に刺激を与える。

『呪い』や『都市伝説としでんせつ』も加味かみされ、更なる恐怖をあおることもある。

 この作品はコメディだが、ホラーに耐性の無い、上記の単語だけでも恐怖を感じてしまう方は、念のため、今回のお話はパスしましょう。

 しかし......


 ◆◇◆◇◆◇



「これは私が、ある宿屋に泊まった時の話です。私は部屋にある物を、隅々すみずみまで調べるクセがあり、早速タンスを開けて中を見ました。すると『ツボを見ろ』と書かれたカードが。ツボの中には『ベッドを見ろ』と書かれたカード。ベッドのシーツをめくると『クローゼットを見ろ』と書かれたカードも見つかりました。何かがおかしいと思いつつも、クローゼットを開けてみると、そこにはやはりカードが...怖くなって部屋から出ようとした私の最後の記憶は、宿屋の主の狂気に満ちた顔でした。カードに書かれていたのは...『調べるコマンドで何もかも盗めると思うなよ!』」


「「キャーーーーーー!!」」


 トールとプラリネは、お互いにしがみついて怖がっている。

 夏の夜にりょうを求め、みんなで怖い話をしようとなったのだ。

 今のは...怖かったのだろうか。


「次は......僕の番だ......恐怖の『錆石斬魚さびいしざんぎょ』の...話をしよう...」


 錆石斬魚さびいしざんぎょ?っておい、サービス残業だとしら、別の意味で怖い話だ。

 ハーディアスが話を始めようとした瞬間、部屋の明かりが一斉に消えて真っ暗になった。


「「キャーーーー!!」」


 女性陣は大パニックだ。

 すぐに明かりは灯されたが、一つ引っ掛かる事がある。


「なぁ...さっきハーディアスの前に話してたのってさ......誰だった?」


 今日一番の悲鳴が響き渡ったのは、言うまでもない。



 "フランキーのジム"


 本日は『時忘ときわす樹海じゅかい』に迷いこんだワーカーの救助クエストをった。


「ムゥン!あの樹海に行くのか?狂暴なモンスターが生息する場所だ!気をつけるのだぞ!」


「フランキーは行ったことがあるのか?」


「ムォォ!ワタシの古い友人もな、あの樹海に入ったのを最後に、音信が途絶えたのだ。ワーカーは、常に危険と隣り合わせだからな!」


 いつもポジティブなフランキーにも、そんな辛い過去があったのか。

 ミイラ取りがミイラ、なんてことにならないよう、入念に準備しておかねば。



 "時忘れ樹海"


「なんと言うか、気持ちが暗くなりそうな場所だな」


「夏なのに、肌寒く感じるね」


 生い茂る木々のせいで、太陽が昇っているのに薄暗い。

 何でこんなとこに迷いこむかな、そのワーカー達は。


「こういう場所じゃ、何が飛び出してくるかわからない。慎重しんちょうに進むんだぞ」


「...了解した...」


「任せとけ!」


「モグモグ」


 おい、一人だけおやつタイムしとるじゃないか。


【救助クエスト開始】


 れ下がった木の枝が、まるでオバケみたいだ。

 さっきから、誰かに見られているようにも感じるし...樹海あるあるだろうか。

 強いモンスターがいるって話だし、さっさと助けて脱出しよう。


「あんまし奥のほうへ行ってなきゃいいけどな。迷子になったのは、どんな奴なんだ?」


「うーんと、ヴッチャーさんのパーティー『ハゲワシ』の人達だってさ」


 うげぇ、よりによってハゲワシの連中か。

 七夕でケンカしたっきり会ってない。

 相手が誰でも、助けないワケにはいかないけど。


「タスク......様子が変だ......どうやら囲まれている......」


 ハーディアスが異変に気付いたようだ。

 モンスターのお出まし、武器を構え迎撃体制げいげきたいせいをとる。


【ソルジャースケルトンが現れた】


 鎧を着たガイコツ達が、武器を携え、ぞろりと迫り来る。

 剣に槍に弓矢、生前は軍隊勤務ぐんたいきんむの方々ですかね。


「こんなまともなモンスターもいるのか」


「なんだかカタカタ言ってて気持ち悪いや」


 襲いかかってくるモンスター。

 振り下ろされる剣をブラフマンで受け止め、返す刀で胴に一撃を見舞う。


 ヒュン!!


「なぬ!?攻撃が通り抜けた?」


 間違いなく直撃コースだったはずなのに。


「コイツら!物理攻撃が一切通用しないぞ?」


「武器に実体はあるが...本体はまるで幽霊だ...」


 プラリネの拳も、ハーディアスのドリルでも効果が無い。

 どうしよう、パンドラの森と違ってここは木が密集してるし。

 トールの魔法を使うと火事になりかねない。


「だったら!これならどうだ!『疾筆しっぴつ』」


 トールのスクリプトに、なんとも有り難い言葉を書き込む。


「ナーンマーイダーナーンマーイダー」


 トールがお経を唱えるも虚しく、ガイコツは切りつけてくる。


「ちょっと!全然効果が無いじゃない!?死ぬかと思った」


 間一髪、すんでのところで剣を交わし、事なきを得た。

 やっぱり、宗教が違うし通用しないか。


「参ったな、今まで遭遇したモンスターと違って、真面目に攻撃してくるし」


「どうするのタスク?このままだと手も足も出ないよ!」


 そんなこと言ったって、お化け相手に通用するスキルなんてあるかよ。


「くそぅ!こうなったらもう.........変身へんしんしか無い!」


「え?変身ができるの!?」


「出来ない...言ってみただけ」


 トールが無言で蹴りを入れてくる。

 だってしょうがないじゃないか、完全にお手上げなんだから。


「カタカタカタカタ!!」


 有効な攻撃手段がない俺達に、ガイコツは一斉に攻撃を仕掛けてくる。

 防戦一方、完全な初見殺しだ。


「くそ!このままじゃ......うぐぁ!!」


「タスク!大丈夫?痛い?ヨモギ...ヨモギを...あ!」


 ガイコツの放った矢が、肩に突き刺さっている。

 すぐさまトールが寄り添い、ポーチからヨモギを出そうとするも、あせって落としてしまった。

 いよいよ進退しんたい極まったか、逃げることも出来ない。


神聖なる輝きの十字斬ホーリーシャインクロス!!」


 突然、光が目の前のガイコツを十文字に切り裂き、消し去ってしまった。

 いったい何が起きているんだ。


「我こそは『聖騎士パラディン』のトミー!」


「私は『ハイプリースト』のジーナです!」


 聖騎士パラディンにハイプリースト? 

 まともなモンスターと言い、正統派なジョブと言い、今回は違和感だらけだ。

 いや、本来はこっちが正しいんだけども。


【謎の二人組が現れた】

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