幹部自衛官のススメ

はじめに

　大学卒業後、十七年勤めた陸上自衛隊を辞めてもう五年が経つ。退職直後に

も自衛隊時代の出来事をブログなどで書いていた時もあったが、まだお世話になった

上司なども現役で遠慮がちな内容になったりもしていつのまにやらやめてしまった。

　そんな人たちも多くは定年退官で自衛隊を去り、残ってる人も元同僚、部下といっ

た人たちで、それほど影響もないなと思い立ち、あらためて自衛隊時代の出来事を

書き綴ってみようと思い立った次第。

　公僕として職務にはそれなりに忠実であったと思うが、いかんせん自衛隊という組

織に対し、忠誠心はほぼ皆無であった。だからこそ比較的冷静な目で組織を眺めて

いたと思う。そこが大して出世もしなかった原因だとは思うが。

　最終階級は三等陸佐で、正直派手で大きな仕事もしていない。ただ組織の底辺近く

を七転八倒しながら歩いてきた。

　この随筆で特に世になにか訴えたいことがあるわけではない。私自身は自衛

隊に対し、非常に大きな組織という点を除けば、他の社会の組織とそれほど変わる

ところはないと思っている。ましてや、なにか不満を抱いたから辞めたというよりは

飽きたから辞めたというのが理由に近い。

　だから世に氾濫する自衛隊本のようにおおげさに書き立てるつもりもない。強いて

言えば、社会に出たところ、もしくはこれから社会に出る若い人が社会で生きてい

く際の参考程度になれば幸いである。