第91話 美代部長の作戦
【試合開始から約1時間経過】
はぁ、はぁ、はぁぁ……
俺達のチームは逃げ回るだけで最終的にはボールを当てられてばかりだったけど、数少ない外野に行ったボールを前妻木先輩が確実に相手チームにボールを当ててくれたお陰でなんとか、ここまで対等な形で来れたけど……で、でもさぁ……
これはヤバい……さすがに俺の体力も限界が来たぞ……
「さぁ、めちゃくちゃ長い戦いになりました!! 実況している私も疲れてきたので早く家に帰りたい気分です!! しかし、私は『アーカイ部アナウンス担当』のプライドに賭けて最後までしゃべり倒しますよ~っ!!」
別に喋り倒さなくてもいいっつうの!!
疲れたのなら早く家に帰ってくれ。最初から実況なんていらねぇんだよ!!
「コートの中に残っているのはお互いに2名ずつとなりました。ネガティ部の生き残りは越智子美代部長&『普通の子』!!」
チッ、あのアナウンスの野郎、先輩じゃなかったらぶん殴っているところだぞ!!
「そしてエグゼクティ部の生き残りは花持蘭那部長&
しかし、未だにあの『恐竜みたいな人』とあのテルマ先輩並みに小柄な女子が双子の妹ってのは信じられないよな。マジで全然似てないし……っていうか、似てなさ過ぎだろ!!
「ひ、一矢君……大丈夫ですか? 息がとても上がっている様に思われるのですが……」
「だ、大丈夫です。とは言えませんが、ここまで来たら俺だって死に物狂いで頑張りますよ。それよりも美代部長は大丈夫なんですか!?」
「は、はい……私は全然平気です。やはり一矢君と1週間もの間、『特訓』をした成果がでているのだと思います。一矢君、私の『特訓』に付き合っていただき、本当にありがとうございました」
「いえいえ、そんなお礼なんて良いですよ。ただ一緒にランニングをしただけじゃないですか。まぁ、そのお陰で美代部長と俺は他のメンバーよりも少しだけ体力がついたとは思いますけどね……」
ちなみに他の部員達には2人で特訓をしたのは内緒にしているけどな。まぁ何故、内緒にしているかは説明しなくても分かるだろう?
まぁそれはさておき、俺はあの時に……今回のドッジボール対決に向けて作戦を考えていた時に思い出したんだ。美代部長と初めて出会った『あの時』の事を……
美代部長のあの尋常じゃない身のこなし方……きっと『ドッジボール対決』に役立つんじゃないかってな。
俺の言っている意味が分からない奴は『第2話』を読み返してくれよな!!
普通に考えれば俺達がボールを投げまくって相手に当てるってのは、最初から難しいとは思っていたさ。
でも、当たらない様にする事なら俺達にだって出来ると思ったんだ。そして美代部長なら、あの身のこなしの美代部長なら絶対ボールに当たらないだろうと俺は思ったんだよ。
しかし不安が無いって訳でも無かった。そう、唯一の不安材料は『最後まで逃げ切れる体力が無いかもしれない』って事だったんだ。いくらボールかを避けられても、体力は必要だし、いずれは疲れが出てきて動きが鈍くなる……
だから先に相手が疲れてもらう為にもこっちはエグゼクティ部の人達より体力が無いといけなかったんだ。でもその心配も『特訓』のお陰でなんとかなりそうだな。
まさか美代部長と一緒に特訓をした俺までこんなにも体力がついていたのは予想外だけどな。でもまぁ、体力がついただけでボールを投げるのはからっきしだけども……って、ほっといてくれ!!
「はぁ、はぁ、はぁ……う、上空さん大丈夫?」
「は、はい花持部長……私は全然大丈夫です!!」
「フフフ、さすがは『エグゼクティ部副部長』、その意気よ。絶対にこの勝負、私達が勝つんだからね!!」
「はい、絶対に勝ちましょう!!」
さぁ、どうしようか……このまま相手が疲れ果てるのを待つか? でも俺の体力も限界に近付いているし……それとも何か手を打つか?
う~ん、でも疲れすぎて何も策が浮かばないんだよなぁ……
「一矢君、ちょっと良いですか?」
「えっ、なんですか美代部長?」
「私に作戦があるのですが、聞いていただけないでしょうか?」
「え、作戦ですか?」
「はい、私みたいな人間の考えた作戦なんて一矢君からすれば『クソ』みたいなものかもしれませんが……」
「いや美代部長、そんな事は……ってかそんな美人の美代部長の口から『クソ』なんて言葉は使わないでくださいよ!!」
「えっ? わわわ私が美人!? きゅ、急にそんな事を言われると体の力が抜けてしまいそうです……」
「いや、お願いですから体の力が抜けない様に頑張ってください!! そ、それよりも美代部長が考えた作戦を教えてくれませんか?」
「は、はい……私が考えた作戦なんですが……」
(ヒソヒソ……ヒソヒソ……)
「えっ、え―――っ!? 美代部長、本当にその作戦で良いんですか――――――っ!? さすがに無茶じゃないですかーっ!?」
「い、いえ大丈夫だと思います……お願いです一矢君……私を信じて頂けないでしょうか?」
「み、美代部長……」
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