第54話 私は所長代理だ!!

「な、何でこんなところにルイルイが居るんだよ!?」


 それに今、俺の心臓が止まりそうな事をサラッと言ったよな!?


「何でだって? それは私がこの『謎めいた合宿所』の所長代理だからに決まっているじゃないか!!」


「しょ、所長代理!? も、もしかしてルイルイの本業ってのは、ここの所長代理の事なのか!?」


「バカな事を言うなヒトヤン!! 所長代理もバイトに決まっているじゃないか!!」


「これもバイト!? ルイルイの本業って一体何なんだ!?」


 ってか、ルイルイって意外と働き者なのか?


「それは秘密だ!!」


「やっぱり秘密かよ!?」


「まぁ、いずれ分かるさ。いずれにしても今回、所長が体調を崩したんで学園長から所長代理の依頼が私に来てな。まぁなんて言うか、私と学園長は深~い仲だからな。流石に断るわけにはいかんだろう?」


「ど、どんな仲なんだよ!?」


「おっ、聞きたいのか~ヒトヤン?」


「べっ、別に聞きたかぁねぇよ!!」


 しっかし、うちの学園長は一体何を考えているんだ?


 何であんな口の悪い奴を学園長は信頼しているのか意味が分からないぜ。ポジティ部部長時代に何か功績でも遺したんだろうか? う~ん、謎が深まるばかりだぞ……



「ま、舞奈……あの人は誰? 布津野君と知り合いみたいだけど……」


「えっ? ええ、あの人はうちの部の顧問で口がとても悪い人でさ……」


「ほ~っ!! あ、あの人が『ネガティ部』の顧問で『元ポジティ部部長』の『久地川瑠衣くちがわるい』なのか!? 部長時代とは少し雰囲気が違うけど大人の色気があって……やっぱり美人だな~♡」


「多田野君、あの人知ってるの?」


「まぁ、写真でしか見た事は無かったけどね。俺が入っている部は『アーカイ部』だから学園の様々な情報や記録管理をしているんだ。勿論全ての部活の記録もね。それで前に『ポジティブ部』の歴史を調べていた時に歴代の部長さんの写真があってさ、その中にあの人の写真もあって凄く可愛かったからよく覚えてるんだよ。今は可愛いというよりも凄い美人って感じだなぁ」


「そ、そうなんだ……私は『ネガティ部』とか『ポジティ部』とか噂でしか知らないから……」


「まぁ、和久塁わくるいさんもこれから嫌でも知る様になるさ」




「さぁクズども、早く各自の部屋に行って体操着に着替えてこい!! そして10分以内に合宿所の横にある集会所に集合しろ!! さぁ早く行け!! 死ぬ気で行けーっ!!」


「おい、ルイルイ!! あんた所長代理のクセに口悪過ぎるだろ!? 皆の事『クズ』呼ばわりするのは失礼っておうか、しまいに訴えられるぞ!!」


「フン、私からすれば世の中の奴等全員がクズだ。しかしヒトヤン、お前の事だけは『クズ』だとは思ってないぞ。お前は『クズ』では無くて『普通のクズ』だ。嬉しいだろヒトヤン!? ハァ〜ッハッハッハッハ!!」


「嬉しいわけねぇだろ!!」


 って、『クズ』にまで『普通』をつけるんじゃねぇよ!! 

 違いが全然分からねぇよ!!



「ひ、一矢ぁ……もうルイルイの相手はいいから早く合宿所に行きましょうよ!? 皆、一目散に各自の部屋に向かって走って行ったわよぉぉ!!」


「えーっ!?」


 誰もルイルイに逆らわないのか!?

 エライ素直な奴等だな!!


 まぁしかし、ルイルイから溢れ出ている威圧感というか、あの勢いには逆らえないのかもしれないが……


 しかし、今回の『謎めいた合宿』って一体どんな事が俺達を待ち構えているんだ?


 どう考えたってルイルイが所長代理っていうだけで嫌な予感しかしないじゃないか!!


――――――――――――――――――――――

【2年2組 3時限目・菜弥美視点】


 ブツブツブツ……


 もう一矢君達、合宿所に着いた頃かなぁ?

 舞奈ちゃんも一緒だから今日の部活は寂しくなるわねぇ……


 久しぶりに2人が入部する前の状態に戻るのかぁ……それって慣れてはるけど……いや、もう無理だわ!!


 私は今の6人での部活動に慣れてしまったし、たまに入る一矢君の突っ込みが無いと生きていけなくなっている自分がいる……このままずっと4人の状態だったら寂し過ぎて私の悩み事が永遠に増え続けていくのは間違いないもんなぁ……


 ほんと2人に感謝しか無いわね。この思いを今夜、一矢君にメールしても大丈夫かな? そう言えば合宿にスマホを持って行っても良かったんだっけ?


 トントン


「えっ!?」


「大石さん、大丈夫?」


「あっ、前妻木まえむきさん。ど、どうしたの?」


「『どうしたの?』じゃないわよ。さっきからあなたがブツブツ独り言を言っているのが気になって……」


「えっ、私口に出していたの? ゴ、ゴメンなさい」


「まぁ別に私は大丈夫なんだけど……他の人達が……」


「そ、そうだね。教えてくれてありがとう」


「しかし大石さんの口から何度も一矢君って名前が出ていたけど一矢君って1年の布津野君だよね? あの子とても面白い子だし、私もとても気になるなぁ……今度お茶でも誘ってみよっかな。ウフ」


「ま、前妻木さん!? あなた、な、何を言ってるのよ―――っ!?」


「ど、どうした大石!? っていうか、お前が大きな声を出すなんて珍しいな? だ、大丈夫なのか? 保健室に行くか?」


「い、いえ大丈夫です。すみません。お騒がせしました……」


 ああ、やってしまった……凄く恥ずかしい……悩み事が増えてしまいそう……


「フフフ……大石さん、顔真っ赤だよ」


「ま、前妻木さん……もしかしてワザと……」



「大石さんの大きな声も可愛いよな~」

「俺、いつも彼女の事しか見てないから全然、授業を聞けてないぞ」

「大石さんの照れた表情も素敵だわ。さすが2年のアイドルよね?」

「そうよねぇ。私もあんな顔に生まれてきたかったなぁ……」

「一度くらいお昼を一緒に食べたいよねぇ?」

「それじゃぁ屋上に行く?」

「でも屋上でネガティ部の人達と食べているんでしょ?」

「だね。あんな美男美女に囲まれたら食事が喉に通らないわね?」




――――――――――――――――――――――

【合宿所横集会所】


 はぁぁ……はぁぁ……はぁぁ……


「よーし、ウジ虫共!! よく10分以内に集合出来たな!? 褒めてやるぞ!!」


 チッ、バイトの所長代理のクセに何を偉そうなこと言ってやがる。


「今からお前達には班ごとで昼食のカレーライスを作るんだが、まさか『普通』に作るなんて思っていないよな!?」


 ほら、やっぱりってかなんか『普通』を強調してなかったか!?


「カレーのルーと米は集会所横の野調理場に用意している。しかし具材は何1つここには無~い!! 4人の内、1人はここに残り米を炊け!! そして他の3人は今からこの名染伊太合宿所の広大な敷地内を走り回りカレーに入れる具材を探してくるんだ!! 制限時間は30分!! 何も具材を見つけられなかった班は勿論、ご飯にルーをかけるだけの『普通以下』のカレーライスだ!! 良いな!? それでは早速始めるぞ~レディ~ゴーッ!!」


 『普通以下』って言葉になんかカチンときたぞ!!



 うわぁぁぁあああああああ!!!!(一斉に全員走り出す)



 一体何なんだこの合宿は!?

 何を目的にした合宿なんだよ――――――っ!!??

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