第53話 何であんたがここにいる!?
ヤバい、ヤバい、ヤバい、非常にヤバいぞーーーっ!!!!
バスの揺れが原因だとしても俺の唇が舞奈の唇が触れるなんて……なんと恐ろしい『事故』が起きてしまったんだ!?
しかし幸いにも舞奈は目を覚ましていないし、和久塁やモブオ、他の奴等もバスが大きく揺れたせいで俺達を見ている余裕なんて無かった感じだし、とりあえず目撃者はいないみたいたけど……
でも……
舞奈に対して凄い罪悪感が!!
俺にとっては初めてのキスだけど、もし舞奈にとっても初めてのキスだとしたら……舞奈の初キッスの相手が俺になってしまったとしたら凄く申し訳無さ過ぎる!!
好きでもない男が初めてのキスの相手だなんて……俺は何て取り返しのつかない事を……いや待て、これは本当にキスと呼べるのか?
バスが突然大きく揺れてしまったから起きた事故、そうだよ、これは事故なんだ。たまたまその時の揺れのせいで舞奈の方に体全体が近づきそして弾みでチュッと俺の唇が触れただけなんだ。
これつてキスとは言えないよな!?
よーし、これはお互いに「ノーカウントという事にしよう!!」
って、舞奈の目が開いているぞーーーっ!!??
「一矢、何がノーカウントなの?」
「ままままま、舞奈起きてたのか!? い、いつから目を覚ましていたんだよ!?」
「え? 今だけど何で?」
「い、いや……さっきから起こしていたけど全然、起きなかったからさ……」
舞奈は何も気付いていないみたいだな? はぁぁ良かったぁぁ……
「そ、そうなんだ……私、凄く素敵な夢を見ていたんだけどさぁ……次から次へと私の前に甘~いお菓子が差し出されてきて、どのお菓子もとても甘くて美味しかったの。でも突然……」
「と、突然どうした?」
「……食べていたお菓子が突然塩っ辛くなっちゃってさぁ……それで驚いた瞬間に目が覚めちゃったって感じかなぁ……なんだか勿体ない夢だったなぁ……もう少し続きが見たかったなぁ……」
「へ、へぇ……そうなんだ……別に勿体ない夢でも無いじゃんか? まぁ、早く起きてくれないといけなかったから丁度良かったよ。ハ、ハハハ……」
ヤッバ~ッ!!
俺が舞奈を起こす前に食べていたお菓子はポテチだったよな!?
も、もしかしたらキスをした瞬間に俺の唇に付いていたポテチの塩が舞奈の唇に……うわぁダメだ。これ以上考えたら俺が恥ずかしくて今日1日、舞奈の顔が見れなくなりそうだ。
「と、とりあえずもうすぐ合宿所に到着するみたいだから降りる準備をしておいた方がいいぞ」
「う、うん……分かった。ペロッ……あっ? 本当に唇が塩辛いような気がするんだけど……」
ドキッ!!
「あら舞奈、起きたみたいね? そ、それじゃぁ布津野君、舞奈も起きたみたいだし私と席を代わりましょうか?」
「えっ? ああそうだな。代わろう代わろう……」
俺の唇が触れた自分の唇をペロッてされちゃうとさぁ……さっきのキスを思い出して体中が熱くなって来たじゃないか。ヤバい……俺は舞奈の前でこの合宿の間、平常心でいられるのだろうか?
でも……
正直言えば舞奈とのキスを『ノーカウント』にするのは少しだけ寂しいし、勿体な気もしている俺がいるのも確かなんだ。
舞奈の気持ちはともかく俺の初キッスの相手が学園トツプクラスの美少女なんだからな。シチュエーションは最悪だが俺の心の中だけでも『俺の初キッスの相手は舞奈』ってことにしてもバチは当たらない様な……
イヤイヤイヤッダメだ!! やっぱりノーカンにしよう。俺だっていつかお互いに両想い同士でキスが出来るかもしれないしな。
はぁぁ……俺が子龍先輩みたいにイケメンだったらなぁ……勿論、顔の向きがまともな時の子龍先輩限定だけど、あれくらい俺がイケメンだったら自分に自信を持てるし、高校生になる前からモテまくっていただろうし、キスなんて当たり前のように経験していたんだろうなぁ……
だからもし舞奈にキスをしてしまった事がバレたとしてもイケメンの俺が「ゴメン、少し唇に触れてしまったよ。もし嫌だったらノーカンにしてくれていいから」ってサラッとさわやかな笑顔で言ったとしたら舞奈だって嫌な気はしないかもしれないよな。もしかしたらそこから恋愛に発展する可能性だって……
止めておこう……考えれば考える程、虚しくなってくるぜ……
――――――――――――――――――――――――
【二年一組 三時限目・子龍視点】
「ハッ、ハッ、ハァックションッ!!」
!?
か、風邪かな? それとも今日から合宿に行っている一矢君が僕の噂でもしていたりして……いや、もし噂をしていたとしてもそれはきっと悪口かもしれないなぁ?
最近、僕に対して凄く厳しいからなぁ……
でもこんな影が薄くて友達がいない僕が一矢君達の話題にのぼるだけでも嬉しい事だけどね。
そういえば一矢君達、そろそろ合宿所に着いた頃かな?
今年の合宿はどんな感じになるのかなぁ……?
ボソボソボソ……
あ、僕がクシャミをしたせいでクラスの人達がざわつきだしたぞ。きっと僕のクシャミが授業の妨げになってしまったんだ。皆に迷惑をかけてしまっちゃったなぁ……
申し訳無いのと恥ずかしさで皆の顔が見れないよ……
「いっ、今の子龍君のクシャミよね?」(ポッ)
「そっ、そうよね? 今のは子龍君のクシャミだわ」(ポッ)
「子龍君のクシャミなんて初めて聞いたわ。凄くレアじゃない!?」(ポッ)
「久しぶりに
「常に無表情なのに、クシャミをした瞬間、何か表情がにやけていなかったか?」
「子龍君の笑顔が見れるなんて私、死んでしまうかもしれないわ」(ポッ)
「あ~あ、子龍君と同じクラスで本当に良かったわぁ……」(ポッ)
『今日は私達、とても珍しい光景を見れて1日中、幸せな気持ちになれるわねぇ……』
――――――――――――――――――――――――
【合宿所前広場】
ハッ、ハッ、ハックションッ!!
「おっ、フツオ風邪でも引いたのか?」
「い、いや風邪じゃないと思うけど……何か一瞬寒気がしたような……まぁ大丈夫だうろ……それに俺はこの2日間、病気になっている暇なんて無いからな!!」
一瞬寒気がしたというか体に異変を感じたのはまだ心の中に舞奈とキスをしてしまった事に対しての罪悪感があるからだと思うし……とりあえず今は合宿に集中しなければ!!
ん? あの広場に設置している台の上に拡声器を口に当てて立っている人……なんか見覚えのあるフォルムというか……
「クズ共!やっと到着したか~っ!! あまりにも待ちくたびれたから家に帰ろうかと思ったぞーっ!! ハーハッハッハッハ!!」
なっ!!??
「お~っ、ヒトヤンじゃないか~!? 何をシケたツラしてるんだ―――っ!? バス酔いでもしたのかぁ〜!? それともバスの中で誰にも言えない様な甘酸っぱい経験でもしたってか~っ!?」
ドッキーーーンッ!!
なななな、何でっ!?
「何で、ルイルイがこの合宿所に居るんだよ―――――――――ッ!!??」
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