第48話 えっ、この俺が?

 中間テスト結果発表の日が遂に来た。

 やるだけの事はやったけど……


 どうしよう、不安しか無いぞ!!


 俺の家で行われた1週間の勉強会……


 結局、先輩達は全然関係の無い話や夕飯の手伝いばかりで、ろくに勉強は教えてもらえなかったからなぁ……


 ただ毎日、少しだけど『この箇所は暗記しといてね?』『この計算式だけは覚えていてくださいね?』と先輩達に各教科毎に言われた箇所は全部、出題されていたのには驚いたけども。


 さすが先輩達それぞれが得意教科って言っていただけの事はあるよなぁ。

 だから各教科毎に暗記していたところは全部合っていると思うんだが……


 ただ、それだけなんだよなぁ。


 後の問題は全然自信が無いし、暗記したところだけだけしか正解していなかったら一体、何点になるのだろうか!?


 多分、赤点では無いとは思うけど……ああ、やっぱり不安だ~っ!!


「おーい、フツオ~」


「な、何だよモブオ?」


「今から廊下の掲示板に貼り出されている中間テストの結果を見に行くんだけど、フツオも一緒に行こうぜ?」


「えっ!? 俺は嫌だよ。行きたくないよ!!」


 人がめちゃくちゃ不安がっている時に空気を読めない奴だな。


「何でよ一矢っ!? 一緒に行きましょうよ!?」


 舞奈も行くのかよ!?


「い、嫌だよ!! どうせ俺なんか下から数えた方が早い順位だろうしさ……恥ずかしいだけだよ」


「きっと一矢は大丈夫だよ。それにせっかく先輩達が一矢の為に1週間も勉強教えてくれたんだよ。自分の目でしっかりと順位を確認しないと失礼だと思うわ!!」


 オイオイ!!


 そもそも俺が勉強遅れた原因を作ったのは、その先輩達のメール攻撃のせいじゃないかっ!! 舞奈、お前もだけどな!!


 それに5人が1週間もうちで夕飯食べて帰ってるからさ……

 きっと、我が家の家計は火の車だぞ!!


 ん? でも母さんって専業主婦だよな? 親父の収入だけで生活が苦しかったら母さんだって働いているだろうし……っていうか未だに親父がどんな仕事をしているのか分かっていない俺に問題もあるよな?


 今度、親父に聞いてみないと…… 


 でもあれだな……この1週間、なんやかんやと賑やかで楽しかったのは間違いないし、母さんもめちゃくちゃ喜んでたいからなぁ……


 親父は家に居ない事が多いし妹もアメリカに留学していてほとんど家の中は俺と二人きりだもんなぁ……言わないだけで母さんも寂しかっただろうし。それだけでも先輩達や舞奈には感謝しないといけないかもしれないな。


「わ、分かったよ。一緒に見に行くよ。行けば良いんだろ!? 俺が下の方の順位でもお前等絶対笑うなよな!?」



――――――――――――――――――――――――

【1年生校舎掲示板】

 

 あ~めちゃくちゃドキドキするぞ。

 本当に俺、大丈夫なのかな?


 たしか、1年全員で500人位いたっけな?

 それの半分で250名……


 うーん、おそらく俺はもっと下だろうな。

 仮に順位が400番台だったら、先輩達や母さんに会わせる顔が無いぞ。



「おーっ!! 舞奈ちゃん凄いよ。学年総合1位じゃないか!! それもどの教科全て1位だなんて……まさにパーフェクトバディ……いや、『ミス・パーフェクト』だっ!! これは良い記事が書けるぞ~っ!」


「えっ? そ、そんな事無いよ~たまたまだし。それに私の事は絶対に記事にしないでね!? 記事になんてされたら学園中の人達から妬まれそうだし、影で悪口とか言われそうだし……」


 舞奈の奴、またマイナス思考な事を言っているっていうか、一体どういう事だよ!? 舞奈が全教科1位で総合も1位って……


「まっ、舞奈!? お、お前……全教科1位なんて、たまたまでとれる訳ないだろっ!? それに1週間遅れで学園に登校して来て、他の人より勉強が遅れていたはずなのに……舞奈、お前って実は『やればできる子』だったのか!?」


「なっ!? 何が『やればできる子』よ!? 私が日頃何もやらない子みたいじゃないの!! 私も頑張って勉強したんだからね!!」


 そうだったよな……

 お前は勉強をしっかりやった後に毎晩、俺にメールしていたもんな!?

 

 そりゃあ追いつけるわな!!

 で、でも……全教科1位ってのは凄過ぎないか?


 やはり美代部長と従姉妹同士だし、頭の良い血筋なのかもな?


「あ~っ!! 俺は200位丁度だよ~結構頑張ったつもりだったんだけどなぁ……でも、まぁいっか。全体の半分よりは上だしな。ところでフツオは何位なんだ?」


 バ、バカ野郎!!

 簡単に何位だなんて俺に聞くなよな!!


 俺はさっきから下の方の順位を必死で見ているところなんだよ!!

 幸い最下位では無かったけど、一体俺は何位なんだ!?


 もしかしてランク外とかか?

 いや、そんなのがあるわけな、な、無いよな!?

 誰か無いって言ってくれ~!!


 トントン…


「ちょっと、布津野君?」


「えっ? あっ、ああ、和久塁わくるいか。どうしたんだ? っていうか和久塁は何位だったんだ?」


「えっ? わ、私は総合2位だったよ」


「なっ、何だって~っ!? 総合2位だと~っ!? お、お前も凄いなぁ!? 見た目、負けず嫌いな感じだから勉強は出来るだろうとは思っていたけど、まさか総合2位だなんて驚いたぞ!!」


 オイオイオイ!?


 うちのクラスには総合1位と2位と居るってことかよ!?

 凄過ぎるわっ!!


「負けず嫌いっていうのは当たっているけど、そんなあっさりと私の性格をズバッと言わないでよぉ!? なんだか恥ずかしいわ……」


「えっ? あ~ゴメンゴメン……なんか、和久塁にはさぁ、思った事が言いやすいんだよなぁ。ズバッと言って悪かったな?」


「えっ、私には思った事が言いやすいですって? ま、まぁそれなら別に良いわよ。思った事をずっと隠して言われない方が私としては嫌だから……」(ポッ)


「そうなのか? 助かるわ~やっぱ和久塁は話が分かる奴だなよぁ? これからも色々話そうぜ?」


「う、うん……」(ポッ)


「っていうか大きな声では言えないけど、例の件(舞奈と友達になる)は良い方法を思い付いたから、もうしばらく待ってくれないか?」


「わ、分かった……期待して待ってるね? と、ところでさっきから布津野君を見ていて不思議に思ったんだけどね……」


「え? 何が不思議なんだよ?」


「布津野君ずっと順位表の下の方ばかり見ているけど、一体誰の順位を探しているのかなぁって思ってさ」


「えっ? そりゃぁ、俺の順位に決まってるじゃん」


「で、でしょ~? だったら上位の方から見てみてよぉ?」


「えっ? 上位の方から?」


 上位の方を見たって俺には意味が無い…………って……えっ!?


「ねっ?」


「え――――――っ!!??」


 うっ、嘘だろ?

 お、俺が……この普通ではない普通の俺が……


 そ、そ、総合10位だと―――――――――――――――っ!!??

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