第38話 一緒に食べましょう

「あぁ~食った食った~お腹一杯だぁ~っ!!」


 モブオの奴、俺達の前でめちゃくちゃ美味しそうに『A定食』を食べやがって……


 俺達は慌ててお前を追いかけて来たから、教室に弁当を置いたままなのに!!

 グルゥ~グルグル~


 ああ腹減ったな~っ!!


 それに菜弥美先輩達もきっと、俺達が屋上に来ないからめちゃくちゃ心配してるんじゃないのか!?


 テルマ先輩なんかはメッチャ気にしているのでは!?

 俺達のせいで菜弥美先輩の悩み事が増えていなければ良いいんだけどなぁ……


「ねぇ一矢っ!? もう、昼休み時間あまり無いしさ、今から教室にお弁当を取りに戻ってから屋上へ向かっても食べる時間も無いと思うし、今日は私達、教室でお弁当食べましょうよ?」


「おう、そうだな。屋上に行けないのは残念だけど仕方無いよな?」


 ん? また外野が俺達の事を何か言っているぞ。


「しかし、あの二人と一緒のテーブルにいる更に『普通』いや『モブキャラ』みたいな奴は誰なんだ!?」


「そうだよな!! よくあんな『なんか凄い普通の子』と『桃色ナイスバディ』の二人に普通に話が出来るよな!? ただのクラスメイトなのかなぁ……?」


「ほぉ~彼の事を知りたいのかい?」


「えっ、誰だよ!? って、あ、あなたは!!」


「学園一と言われる情報管理のエキスパート『アーカイ部』部長の『亀羅馬千畳かめらませんじょう』さん!!??」


「か、亀羅馬かめらま部長、あのネガティ部の二人と話をしている奴が誰なのかご存じなんですか!?」


「ああ勿論知っているさ。彼は我が『アーカイ部』のホープ、1年生の『多田野乃武男ただののぶお』君だ!! 彼は凄いぞ~情報集に関しては彼がうちの部でナンバーワンだ!!」


「えーっ!? あ、あの『只のモブオ』がアーカイ部のホープですって!?」


「ちっ、違う違う!! 『ただののぶお』だよ!! 『モブオ』じゃなくて『ノブオ』だ!! 彼の名前はしっかりと覚えておく様にな!? いずれ君達も、彼のお世話になる時が来るかもしれないんだからな……」


「えっ? いやぁ……俺達はあまりお世話にはなりたく無いですけどねぇ……」



 チツ、いつまで』本物のモブ達』は俺達の事を言っているんだよ!?


 なんか『モブ』って聞こえたような……自分達の事を言っているのかな?

 っていうか、何なんだ、あのデカい人は!?

 『世紀末覇者』か!?


 腕を組みながら満面の笑顔で俺達の事をじっと見ているし!!


 うわぁ~笑顔なのにめちゃくちゃ怖い顔だな。よ、よしっ前妻木先輩の情報も仕入れる事ができたし、そろそろ教室に戻った方が良いかもしれないな!?


――――――――――――――――――――――――

【3年1組の教室・美代視点】


 はぁぁ……何だか疲れましたねぇ……


 今日からまたテンテン君が行間休みの度に教室に来て何だかよく分からない『愛の言葉』を聞かせ続けてられて……


 唯一お昼は部室でポジティ部部員の方々と一緒にご昼を頂くそうですから、私としてはこの時間だけが唯一、心が休まる時間だというのに……


 それなのに食欲もあまり無いので食堂にも行かず教室にいますけど……


 何だかとっても寂しいです。


 菜弥美ちゃん達、2年生は毎日屋上で3人一緒にお昼ご飯を食べているんですよね?


 いいなぁ……羨ましいです……


 一矢君も同い年の舞奈ちゃんがお友達としていますし、私だけが同い年のお友達がいないのですよね……このまま同い年のお友達が出来ないまま卒業する事になるのでしょうか……


 まぁ、こうなってしまったのも私がブスで、ドジで、ノロマで、面白い事が全然言えないからなんでしょうが……(しょぼん)


 タッタッタッタッタッタッ!!


 お昼休みに廊下を走る足音……とても楽しそうですねぇ……



「あっ!? み、美代部長!? 教室に一人ポツンと、どうされたんですか!?」


「えっ? えっ!? ひ、一矢君!? そ、それに舞奈ちゃんまで!? お二人こそ何でこんな所にいらっしゃるのですか? わ、私とても驚きましました……」


「ハハハ……まぁ色々ありまして……そ、そんな事よりも美代部長はもうお昼は食べられたんですか?」


「い、いえ、今日はあまり食欲がありませので……」


「ダメですよ!! ちゃんと食事はとらないとダメです!! よし、分かりました!! 俺達、弁当を取りに教室に戻る所なので直ぐここに戻って来ますから、美代部長の教室で一緒にお昼ご飯を食べましょう!!」


「えっ!? 一矢、私も一緒に!?」


「当たり前だろ舞奈!! さぁ、急いで弁当を取りに行くぞ!?」


「ちょ、ちょっと待ってください!? 私、お弁当持って来ていませんから皆さんと一緒に食事はできな––––」


「大丈夫ですよ!! 俺達二人の弁当を三人でシェアすれば良いじゃないですか? それに、舞奈の弁当箱は俺のよりもはるかにデカいッスから全然大丈夫です!!」


「ひっ、一矢っ!? な、何て事言うのよ!? 女の子に対してそれは失礼過ぎるじゃない!!」


「ゴメンゴメン舞奈……後で舞奈の好きなダシマキ玉子をあげるからさ、許してくれよぉぉ?」


「えっ? だ、ダシマキ……ま、まぁ良いわ……今回は許してあげる。それじゃ美代お姉ちゃん、直ぐ戻るから少しだけ待っててね!?」


「で、でも待ってください!? やはりお弁当は同級生のお友達と一緒に食べた方が楽しいでしょうし、私はお二人のお友達では……」


 そう、私はお二人のお友達なんかでは……


「友達ですよーっ!!」


「え!?」


「先輩に対して1年の俺が友達って言うのも失礼かもしれませんが、俺は美代部長の事は先輩でもあり、仲間でもあり、そして大切な友達でもあると思っていますよ!! 俺が夜遅くにメールのやり取りをするのは大切な友達だけですからね。だから美代部長は何も気にせず待っていて下さい!!」


「一矢君……」



 わ、私……さっきまで何を落ち込んでいたのでしょう……


 そうでした……落ち込んで良いのは去年までじゃないですか……


 今年は……今年に入り私には一矢君という年下ですけど『普通』に優しい……いえ、『何か凄い普通』にとっても優しい後輩兼お友達ができたんじゃないですか……


 有難う、一矢君……


「私、とても幸せ者ですね…………」


――――――――――――――――――――――――


「ちょっと待ってよ~一矢ぁ~っ!? 早過ぎるわよ~っ!!」


 悪い舞奈っ、俺は待てないぜ!!

 だって美代部長が待ってくれているからな!!


「じゃぁ私も本気で走っちゃうから~!!」


「えっ!?」


 ビューーーンッ!!


 ハハハ……そうだった……美代部長の事を考えていたらすっかり忘れていたよ……


 そう、俺はめちゃくちゃ足が遅かったんだ……はぁ……


 

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