第36話 新しい友達

「お~い、どうした? 遅刻のフツオ君、今日もお疲れ気味だね~?」


「う、うるせぇ、モブオ!!」


「まぁまぁ怒るなよフツオ? 俺はお前の疲れが取れるかもしれない情報をいっぱい持ってるんだぜ~!!」


「フンッ、ホントかよ?」


「あぁ本当だとも!! お前が今、一番気になっている『ポジティ部』についての情報だぜ!!」


「ポ、ポジティ部だって!? でも俺だって菜弥美先輩達から色々と情報は聞いてるからな!! それにあのテンテ……いや、天翔高雄てんしょうたかお部長はマジでヤバイ人だぞ!!」


 出来ればもう生では会いたくないくらいだぜ!!


「あぁ、そうだな。あの天翔さんは強者つわものだよな。学園でも超有名人だし……あのテンションで話しかけられたら誰も勝てないそうだぞ」


 だろうな。俺もそう思う……ただ学園以外だったらうちの親父も負けてはないとは思うけど……そんな親父に慣れているはずの俺が天翔部長に対してタジタジになってしまうんだから、やっぱあの人は強者つわものだよ……


「まぁ唯一、天翔さんと対等に話が出来るのは生徒会長さんくらいだそうだけど、それはまぁ良いとして、俺の持っている情報は他の部員の事だぞ!!」


「他の部員!? そ、それじゃぁ副部長の前妻木まえむき先輩の情報も有るのか!?」


「ほ、ほほぉ~前妻木先輩ねぇ……やはり気になると思っていたぜ。今朝、フツオは校門の前で前妻木先輩と楽しそうに話していたもんな~?」


「!!!! お、お前……見てたのかよ!? ど、どこで見てたんだよ!? って言うか友達ならその時に『遅刻するぞ!!』ってくらい言ってくれよな!?」


「あぁ、ゴメンゴメン……ついついお前達の様子を真剣に観察していたからさぁ……な〜んか、とても楽しそうに話していたよなぁ? あんな笑顔で話をしているフツオは久しぶりに見たような気がしたよ~」


 こ、こいつ、モブオのクセにドキッとするようなことを言うよな!?


「ま、まぁな……ってか、そんな事はどうでも良いんだよ!! 早く前妻木先輩の情報を教えろよな!?」


 んっ?

 でも待てよ!?


 何で俺は遅刻でモブオは遅刻じゃ無いんだ?

 そこんところも聞いておかないと納得いかないぜ。


 すると俺達の背後から蚊の鳴く様な小さな声がした。


「ぜ、是非……私も聞きたいわ……」



 ・・・・・・!?



「!?…っワ―――っ!! ま、舞奈!? な、何でお前が此処にいるんだ!?」


「何でって私も一矢と同じクラスだからじゃないの!! あんた『普通にバカ』なの!?」


「『普通』は余計だ!! でもそうだ、舞奈とは同じクラスだった。それは間違いない。じゃあ何で俺とモブオとの会話に入って来るんだ!? お前、同級生で俺以外とは友達にならないって言ってたじゃないか? あ、もしかして……」


「そ、そうなんだけど……二人の会話がとても気になっちゃって……それに前にも言ったけど一矢の昔からの友達の多田野ただの君なら他の人達よりは話しやすいかなぁ〜って思ってさ……でも一矢がダメだって言うんなら私、今から屋上に行って先輩達とランチするけど……」


「いっ、嫌なはずないだろ!? 逆に全然良いんだよ!! 俺もせめてモブオくらいとは話が出来る様になって欲しいと言ってたじゃないか!?」


 これは間違いなく奇跡だぞ。まさかこんな早い時期に舞奈が『新しい友達』をつくる気になってくれるとは……


 んっ?


 オイオイ、モブオ……

 なに固まってるんだ!?

 お前らしくないじゃないか!!

 

 まぁ、俺もお前も今までこんな美人と友達になる事なんて無かったから驚きのあまり固まってしまう気持ちは分るけども……


「おいっ、モブオ!! 生きてるか!? もし死んでいるなら今直ぐ生き返るんだ!!」


「ハッ!! ……お、俺生きてるのかっ!? ……俺、もしかして今は夢の中なのか? ま、まさかあの寿志光すしこうさんから話しかけてくれるなんて……」


「生きてるし、現実だよ!! 舞奈がお前となら話が出来るかもって言ってるから、今から二人共友達確定なっ!? 舞奈もそれで良いんだよな!?」


「う、うん……」


「まっ、マジか―――っ!?」


「え、ええ……マジよ……た、多田野君、これからよろしく……ね?」


「あっ、ヒャイ!! こちらこそよろしくです、寿志光さん!!」


 噛むなよ、モブオ……


「た、多田野君……私の事はこれから『舞奈』って呼んでくれていいから……」


「え―――っ!? 無理無理無理~っ!! それは絶対無理だから!! フツオみたいに君を呼び捨てでは絶対呼べないよ!! せ、せめて『舞奈ちゃん』って呼ばせて貰っても良いかな!?」


「べ、別にそれでも良いけど……多田野君って思っていたよりも意外と真面目なんだね?」


「いや、真面目かどうかは分からないけどさ……やっぱ呼び捨てにできるのはフツオだけの方が良い様な気がするんだよなぁ……あっ、でもさ『舞奈ちゃん』は俺の事『モブオ』って呼んでくれて良いからさ!! 今までは俺の事を『モブオ』って呼んで良いのはフツオだけだったけどさ、今日俺と友達になったあかしに俺の事は『モブオ』って呼んでくれないかい?」


「う、うん……分かったわ。で、でも私もやはり呼び捨てでは呼びにくいから、『モブオ君』って呼ぶ事にするね? こ、これから宜しお願いします……モ、モブオ君……」



 よ~し、話はまとまったぞーっ!!

 何とか早い段階で舞奈に俺以外の同級生の友達ができて良かったなぁ……


 あとは、さっきから俺達の方を火傷しそうなくらいの熱い視線で、じ―――っと見ている和久塁わくるいと舞奈を友達にしないといけないよな。


 ただなぁ……これはモブオ以上にハードルが高い様な気がするんだよなぁ……



「そ、それじゃぁフツオ!! 俺は今、最高に良い気分だから、このまま最高の食堂に行って最高のおばちゃんが作った最高の学食を最高の気分で頂いてくるわっ!! そんじゃまた後でっ!! うひょーっ、最高だ~っ!!」


 ・・・・・!?


 最高最高ってうるさい奴だな!?

 ってか、


「ちょっ、ちょっと待てモブオ!? 話の続きをまだ聞いてないぞっ!!」


「そ、そうよ。私も二人の話が気になったから……」


 モブオ待ってくれーっ!!


 頼むから前妻木先輩の情報を教えてくれよ――――――――――――っ!!!!

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