第29話 赤髪世話好き美少女

「みっ、美代部長に付き合ってくれだって――――――っ!?」


 な、何なんだこの感情は!?

 もしかして俺、ヤキモチを妬いているのかっ!?


「そ、そうなんです……告白される度にお断りをしているのですが本当にしつこくて困っています。私は、どうも『テンテン』君のノリに付いて行けないちいますか……常に明るくて元気な『テンテン』君と一緒にいると、私はいつも疲れてしまうんです……」


 ま、まぁ……美代部長にその気が無いんだから、そんなに心配する事は無いだろうけど……断っても諦めずに何度も告白してくるってのが引っかかるが……


 ん、でも待てよ!?

 いくら断り続けていているといっても……昨日ルイルイが言ってた言葉が本当だとしたら『嫌よ嫌よも好きのうち』……


 こっ..、これはマズイぞ!!


 美代部長はどう見ても押しに弱い所がある様に見えるしなぁ……

 

 『好き』って言われて嫌な気持ちになる人なんて、この世に存在するのかっ!? 


 イヤ、俺もそうだがいないだろう。


「ちょ、ちょっと一矢~っ!? 何をそんなに怖い顔をしているの? 美代お姉ちゃんが、その『テンテン』さんと言う人に告白されて嫉妬でもしてるの〜?」


「バ、バカな事を言うなよ舞奈!! なっ、何で俺がし、しし、嫉妬しなくちゃいけないんだ!?」


「ホントに~?」


「あ、あぁ……本当だ」


「わ、私そろそろ自分の教室に戻りますね!?」


 ガラッ ガラガラ パシッ!!


 あれっ?


 何か美代部長、少し不機嫌そうな顔をして戻って行った様な気がしたんだけど?

 き、気のせいかなぁ?


「ハッハッハッハ!! ほんと、お前達は面白い奴等だ!! いや〜これからの『ネガティ部』は見ものだな!? そんじゃ、私もこれくらいにして、家に帰って夕方まで寝るとするか」


 今から寝るのかよ!? 羨ましいなぁ……


――――――――――――――――――――――――


 キーンコーンカーンコーン…


 はぁぁぁ、何か今朝の出来事で全然授業に集中できなかったぞ。

 ヤバイなぁ〜コレ……

 来月の中間テスト大丈夫だろうか…?


 う〜ん、何となく今日は静かに一人で弁当食べたい気分だから屋上にでも行ってみようかな。誰もいなければいいんだが……


「おーい、フツオ~どこ行くんだ~? 昼飯食べないのか~?」


「あ~モブオ、今日は俺、何か一人で昼飯食べたい気分だから屋上にでも行って来るわ」


「ほぉ~そっか。お前も何かと大変みたいだな? 了解だ、それじゃあ俺は食堂に行って来るわ~」


 よしっ、舞奈も食堂に行ったみたいだし、今のうちに屋上へ行くとするか。


「ちょ、ちょっと待ってくれないかな、ふ……布津野君?」


 えっ!?


 久しぶりに先生以外に苗字で呼ばれた様な気がするぞ。

 で、一体誰が俺の苗字を呼んだんだ!?


 !!!!


「わ……和久塁わくるい!?」


 な、なんでクラスの女子のリーダー『和久塁聖香わくるいせいか』が俺に声を掛けて来るんだ!?


 もしかしたら、いつも舞奈と仲良くしている俺の事も気に入らなくて何か文句でも言おうとしているのか!?


 はぁ……俺は今まで女子にそこまで嫌われた事は無いんだけどなぁ……

 まぁ好かれた事も無いけどな!! 

 って!ほっといてくれ!!


「お、俺に何か用?」


「う、うん……ちょっと寿志光さんの事で少し布津野君に聞きたい事があって……」


「えっ、舞奈の事で聞きたいこと?」


「そ、そうよ」


「別に俺に聞かなくても、本人に聞けば良いじゃんか?」


 フンッ!


 ちょっとイジワルな言い方してやったぜ。

 別に俺は和久塁に嫌われたってか、構わないんだからな!

 全然怖くないんだからな!!


 それが原因で今日からクラスの女子にハブられたって俺は全然、全然っ、全然気にし無いんだからな……


 い..、いや、めちゃくちゃ気にはなるわっ!!


「ほ、本人に聞きづらいから布津野君に聞いてるんじゃない!」


「そうなのか? わ、分かったよ。それで、聞きたい事って何?」


「じ、実は私……前から寿志光さんとお友達になりたいと思っていたんだけど……寿志光さん、登校して来た日から誰ともお話しようとしないし……でも、いつも女子の中で独りぼっちの寿志光さんを見ていたら、やっぱり可哀そうだと思うの。私から話しかけようと努力はするんだけど、どうしても彼女の周りに『近づくなオーラ』が出ている様な気がして全然近づけないんだぁ。それで唯一、寿志光さんとお話が出来る『なんか凄い普通の子』で有名な布津野君に協力してもらいたくて声を掛けたんだけど……迷惑だったかな……?」


「へっ、へ――――――――――――――――――ッ!! そうなの!? そういう事だったの!? へ――――――――――――――――――ッ!!」


「な、何!? そんなに驚く様な事なの!?」


「そりゃ~驚くさ!! 俺の変な異名は余分だけどな!! でも舞奈の事を『いじめ』の対象にしてた訳じゃ無かったという事だけでも驚きだわ!!」


「い、いじめって……私がそんな事する訳無いじゃない!! 布津野君、し、失礼よ!!」


「悪い悪い……でも、俺は和久塁が舞奈の事をいつも睨んでいる様に見えていたから、それでいじめの対象にしているんだとずっと思っていたんだ……」


「睨んでる!? はぁ、そっかぁ……そう見えてたんだぁ……わ、私って昔から目つきが悪いってよく言われるのよ。だからいつも笑顔でいる様に心掛けているんだけど、少しでも考え事をしたりすると笑顔が消えて、キツイ目に戻ってしまうの。小学校の頃はよく先生に『和久塁、お前何怒ってるんだ!?』って言われたなぁ……思い出しただけでも泣きそうになっちゃう……」


「そ、そうだったのか……悪かったな? 俺も人を見かけで判断してしまって申し訳無かったよ。それに、和久塁の言う様にいつもは良い笑顔してるもんな? 目つきはともかくとして和久塁は普通に美人だし、そりゃあクラスの女子のリーダーって呼ばれても不思議じゃ無いよなぁ。よしっ、分かったよ!! 俺も舞奈が俺以外と話をしないのはとても気になってたし、俺に出来る事なら何でもするからいつでも言ってくれ!! とりあえず俺は今、腹が減って死にそうだから、そろそろ行くよ。それじゃぁな和久塁、舞奈の事を気にかけてくれてありがとな?」


「う、うん……そ、それじゃ…………」


 “なっ、何!? ふ、布津野君ってあんなに話やすい人だったの? 「人を見かけで判断した」って彼言ってたけど、私も同じく、ずっと『ただの普通の子』としてしか見ていなかった自分が恥ずかしい……”


 “うっ、なんか胸が苦しくなってきた……顔も熱い様な……保健室に行った方がいいかな?”




 トントントンッ トントントンッ



 この学園の屋上に行くのは初めてだな。どんな感じの屋上なんだろう?

 めっちゃ楽しみだわ~!嫌な事を忘れさせてくれると良いんだけどな……


 でも和久塁のお陰で気分が少しマシにはなったんだどな。でも和久塁、別れ際の顔が髪の毛と同じ色くらいに赤くなっていたよな? 風邪でも引いてるんじゃないのか? 大丈夫かなぁ……


 んっ? なんか鼻がムズムズしてきた……ハァ、ハァ、ハ――――――クショ――――――ン!!


 俺の方が風邪気味なのか!?


 いや、もしかして……


 だ、誰だ、俺の悪口を言ってるのは――――――っ!?


 それとも、どこかの女子が俺の噂でもしているのか!?


 まぁ、それは絶対無いなって、ほっといてくれっ!!

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