第15話 桃髪ツインテ美少女

「お、おはようございます。わ、私……本日、この学園に初めて登校してきました……」


「あっ!! もしかして寿志光舞奈すしこうまいなさんじゃない!?」


「えっ? えっ? えーっ!? な、何で私の事をご存じなんでしょうか!?」


「そ、それはそのぉ……お、俺には便利な情報屋がいてさ、そいつの情報で事前に寿志光さんの事を聞いていたんだよ。それに俺の隣の席に座ったから間違いないかなぁと思ってさ」


「そ、そうなんですね……それを聞いて安心しました……」


 しっかしこの寿志光さんって……

 スタイルが凄すぎだぞ!!

 ピチピチというかムチムチというか……

 制服が張り裂けそうな感じで……もしかして制服のサイズが合ってないのか?

 いや、違うな。マジでスタイルが『ボン・キュン・ボン』過ぎるんだ!!


 こ、こないだまで中学生だったとは思えないくらいに色気もあるし顔も美代部長達に負けず劣らずの美人だし、胸なんてネガティ部女子の誰よりも大きいし……


 ははーん……さてはこの女、ビッチだな!?

 イヤ、間違いなくビッチだ!!

 俺が観ていたアニメではこういうタイプの女子はビッチだったぞ。


 このムチムチなスタイルで男達を虜にして手玉に取って行く……

 今は初めての登校だから猫をかぶっているだけど、学園に慣れてきた途端に本性が出てきて……


 ん? でもそんなビッチ女子が何でこんな早い時間に登校して来たんだろうか?

 初めての登校で時間を間違えたって訳でもないだろうし……


 ま、あぁ、とりあえず席が隣同士ってこともあるから警戒をしながら自己紹介だけはしておこうかな。


「寿志光さん、俺の名前は布津野一矢っていうんだ。これから隣同士よろしくね?」


「は、はい!! よ、よろしくお願い致します。ふ、ふつの君……」


 おっ、寿志光さんは俺の名前をいじらなかったな? まぁ、緊張しているからなのかもしれないが……


「寿志光さん。俺達は同級生なんだし敬語で話さなくても良いよ。タメグチで話してくれないか?」


 そういえば、2学年上の超美人が常に誰に対しても敬語なんだけど、まぁ今はそんな細かい事は気にし無くてもいっか。


「ゴ、ゴメンなさい!! わ、私……今日が初めての登校だからとても緊張していて……」


「そうだったね。緊張する気持ちは俺も良く分かるよ。俺の友達の『多田野』ってのがこの学園にいなかったら、俺も誰一人知り合いはいなかったし、多分、不安だったろうなぁって思うから」


「そ、そうなんだ。実は私、この学園に知り合いが誰一人いなくて……まぁ、一人は慣れているから別に大丈夫なんだけど……」


 え? 1人に慣れているだって? ビッチなのにか?


「ただ、1週間も休んでいればクラスの中では幾つかのグループが出来てしまっているだろうから、私みたいなのが急に登校してきたら、グループの人達に変な目で見られたり、場合によれば嫌がらせをされるんじゃないかと想像してしまうと不安で不安で……だから誰も登校していない時間に教室にシレっと目立たないようにしておこうかと思って……」

 

 なるほど。それでこんな時間に……でも……


「寿志光さん、それは考え過ぎじゃないかな?」


 うーん、でもあり得る事なのかなぁ?


 女子って特にそういう事があるかもしれないよなぁ?

 男子以上にグループを作りたがるところがあるような気もするし。


 グループの中で生き残る為には全然興味が無い話題が出ても『ソレな!!』って言っていたらとりあえず大丈夫だって前にモブオが言ってたな。


 本当にそんなので生き残れるのか!?


「そ、それと朝の番組の……」


 寿志光さんがまだ何か言おうとした矢先に廊下の方から数人の声がしてきた。


 ガヤガヤ ガヤガヤ……


 あっ! 

 そろそろ皆、来出したな。


 まだ俺に何か言いかけていた寿志光さんも、慌てて前を向いて座りだしたぞ。


 うわぁ~、めっちゃ緊張してるよ。俺の思い違いだったのかな?

 この子は見た目がアレなだけで、どうやらビッチではないみたいだな……


――――――――――――――――――――――――


 あれから15分くらい経ったけど、やっぱり皆、寿志光さんが気になってジロジロ遠目で見ているな。


 男子どもはニヤニヤしながら鼻の下を伸ばしてるし、どうやら彼女の第一印象は俺と一緒みたいだな!!


 でも、それにしてはなかなか寿志光さんに近付いて来ないよな?

 お互い牽制し合ってるのか?

 そんなに牽制しなくても普通に声を掛ければ良いじゃん。

 それとも菜弥美先輩達と同じで美人過ぎて近づけないとかなのか?

 

 そんな男子に比べて女子達の反応は……

 数人で寿志光さんをチラチラ見ながら、何かヒソヒソと話しているぞ。


 あの様子じゃきっと良い事は言ってないよなぁ……


 それとは別のグループも寿志光さんの方を……あっ!! この一週間でクラスの女子達のリーダーみたいになった女子が一番見ているというか……アレはどう考えても睨んでいるよなっ!?


 あぁ〜コワッ。巻き込まれないようにしたいものだ。


 でも寿志光さん、辛いだろうなぁ……やっぱ席が隣同士だし、俺だけでも話しかけようかな……いや、俺が話かけたら他の男子達も負けずに話しかけてくるのでは? と思っていたら矢先……


 ドンッ


 突然、寿志光さんが机を叩きだしたかと思えば、ムクッと立ち上がると俺の方を見てきた。


「えっ!?」


 えっ、何!? 何が起きるんだ!?


 そして寿志光さんが俺に近づき、信じられない言葉を発したのだ。


「ふ、布津野君……お、お願い、私を助けて!? お願いだから、わ……私の『モノ』になって欲しいの!!」


「 「 「えぇ――――――――――――――――――ッ!!??」 」 」


 俺も含めてクラス中がどよめいた。


 す、寿志光さん、あんたは『ビッチ』なのか『ボッチ』なのか一体どっちなんだよ――――――っ!!??

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る