第5話 学園の謎

 あーっ、なんてこったーっ!!

 とっ、とんでもない部に仮入部してしまったぞコレは!!


 すぐ落ち込んでしまうのに、動きだけはすばしっこくて超絶美人の美代部長……

 それに、常に悩み多き美少女、副部長の菜弥美先輩……


 ってか、学園もよくこんな、訳の分からない部を創ったもんだぜっ!!

 ほっんと学園長の顔が見てみたいぜっ!!


 って、そう言えば入学式で会ってるよな。

 名前は確か……なぞ……なぞめい……名染伊……そう!!

 この学園と同じ名前の『名染伊なぞめい学園長』だっ!!


 ん? 


 ちょっと待てよ。

 この学園の名前は『名染伊太学園』だよな?

 ってことは学園の名前は学園長の苗字からきているって事なのか?


 じゃぁ最後の『太』は何なんだ?

 メッチャ気になるじゃないか!!

 先輩達は『太』の意味知ってるのかな?


「あのぉ先輩達、大石先輩の悩み事を聞く前に俺からちょっと質問してもいいですか?」


「一矢君いいですよ。でも私の事はちゃんと『美代みよ』って呼んでもらわないと非常に困ります……」


 別に困らないだろ!!


「そうだぞ一矢君!! 私の事も『菜弥美なやみ』って呼んでくれないと私の悩み事が増えてしまうじゃないか!!」


 それくらいで悩み事を増やさないでくれよ!!

 しかし……まだ、ソコをこだわりますか、先輩さん方……??


「あっ、すみません。美代部長に菜弥美先輩、実はこの学園の名前なんですが、なんとなく学園長の苗字と似ているので理解はできたんですが、最後の『太』だけがよくわからなくて凄く気になって仕方がないんですが、お二人は何かご存じでしょうか?」


 ニヤニヤニヤニヤ


 しかし、この二人は下の名前で呼ぶと何とも言えないくらい素敵な笑顔で喜ぶよなぁ?


 二人ともめっちゃ美人でこの笑顔を見せられたら……

 

 マジっ惚れてまうやろ~!!

 って思ってる場合じゃないな!!


「はい、知ってますよ。一矢君がおっしゃる通り『名染伊』は学園長及び学園長のお父様で、この学園の理事長の苗字からきてます。そして一矢君が気になっている『太』ですが、お二人ともお名前が『太一郎さん』と『太郎さん』で先祖代々お名前に『太』がついているらしくて、そしてこの学園を創設された理事長のお父様『名染伊太助なぞめいたすけ』さんが『名染伊太学園』と名付けられたそうです」


「へ――――――っ!? そ、そうだったんですか~っ!?」


 まぁ、謎は解けてすっきりしたはずなんだが……

 でも何か良い気分ではないな~

 まず学園の名前に自分の名前のほとんどをつけるなんてどうかしてるぜ!!


 でもそっか!?


 どうかしてるからこんな『ネガティ部』のようなヘンテコリンな部の存続を認めるんだな!! 少し納得……


「ひっ、一矢君!!」


「えっ!? な、何ですか、菜弥美先輩??」


「い、いえ……わ、私もさ……ひ、一矢君の質問に答えたいなぁって思ってさぁ……だから私にも……な、何か質問してくれないかなぁと思ってさ……」


 何なんですか菜弥美先輩!?


 そんな大きな瞳を輝かせて俺に質問を乞う可愛らしい表情、それに俺の方にテーブル越しに顔を近づけてくる仕草!!


 その仕草はヤバイです。む、胸元がヤバイですよ、菜弥美先輩!!

 15歳の少年には目の毒ですから!!


 それにそんな表情をされたら俺の理性が崩れて抱きしめたくなるじゃないですかっ!!


 いっ、いかんいかん!!

 俺が俺じゃなくなっているぞっ!!

 お、落ち着け~落ち着くんだ俺!!

 ここは軽く深呼吸を……スーハー……


「わ、分かりました。それではもう一つ質問させてもらいますね。この『ネガティ部』なんですが、この部の名前はやっぱりカタカナで『ネガティ部』なんでしょうか?」


 ニヤ~


 オイオイオイッ、菜弥美先輩!?

 別に大した質問をしたわけじゃ無いのにそんな嬉しそうなお顔をしないでくださいよ。


 今までそんなに質問なんかされた事が無かったのかな? 

 しっ、しかし笑顔が可愛い過ぎるぜ!!

 たっ、たまらんわっ!!

 俺はおっさんか!?


「フフフ……一矢君、アナタとても良い質問をしたわねぇ? 実はね、この『ネガティ部』の正式名はカタカナじゃないのよ。実際は漢字で登録されてるのよ。漢字知りたい? 知りたいかな? 知りたいよね? ね、ね?」


 菜弥美先輩、ここで『知りたくない』って言ったらあなたは一体どうなるんですか!?


 絶対に涙目になるだろうし、間違いなく『悩み事』が増えますよね!?

 この数分で菜弥美先輩がどんな事で悩み事が増えるのか分かった気がするし、ここは『知りたい』の一択しかないでしょ!?


「えっ!? えぇ、そりゃぁ知りたいですよ。俺、一応、『仮入部』してますしね……ハハハ……」


 でも、な〜んか嫌な予感しかしないけどなぁ……


「実はねぇ、『ネガティ部』の本当の名前はねぇ、一気に言うわね。ネガティ部の『ネ』は根っこの『根』ネガティ部の『ガ』は我々の『我』そしてネガティ部の『ティ』はお茶の『茶』、それで三つ合わせて『根我茶ネガティ』部になるの!!」


「へ? い、いや、それだと普通に読めば『ネガチャ部』になるので周りから呼び間違いなどは無いんですか?」


「そこは大丈夫なんだなぁ。学園の生徒達は皆、空気を読んでくれているからさ」


「空気ですか?」


 空気を読むより漢字をちゃんと読めよ。


「ハ、ハハハ……そ、そうなんですか? それは良かったですね?」


 で、でもなぁ……


 マズい、俺の『突っ込み魂』がうずいてきたぞ。

 これは我慢出来そうにない……


「あ、あのぉ、菜弥美先輩?」


「えっ、何かな? まだ他に質問があるの??」


「い、いえ……そうじゃ無いんですが……」


「ん? それじゃあ何かなぁ?」


「は、はい……それってどう考えても……どう考えてもですよ……」


「一矢君どう考えても何?」


「『茶』を英語読みするとしたらどう考えてもこの部の呼び名は……『ネガティ部』じゃなくて……」


「うん、ネガティ部じゃなくて何??」



 俺は大きく大きく息を吸い込み、こう叫ぶ。


「ネッ、『ネガティー部』じゃねぇか――――――――――――っ!!!!」


「 「ガ――――――――――――ンッ!!!!」 」


 ガーンッは俺の方だよ!!



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