第4話 茶髪ポニテ美少女

 美代部長が部室に案内してくれたのは良いけども……


 え、えらく薄暗い部室だな?

 なんかカビ臭いし……美代部長は臭くないんだろうか?

 

 んっ!?


 ぶ、部室の奥に誰かいるぞ!! 

 女の人に見えるけど……


 すると突然、美代部長が奥に走り出したかと思えばそこにいた女子に先程までのおどおどした感じではない話し方で声をかける。


「なっ、菜弥美なやみちゃん喜んでください!! 遂にネガティ部も私の命も救われましたよ!!」


 おいおいオイオイオイッ!! 美代部長、それは大袈裟過ぎるでしょ!?

 部の存続はともかくあなたの命まで救っただなんて……

 どんだけ占いを引きずっているんだよ?


「えっ? ほんとですか美代部長!? 部長の命が救われたんですね!?」


 奥からまたどえらい美人さんが現れたぞ!

 っていうかアンタも占い信じてたのかよっ!?


 それにしてもこの人も美代部長に負けず劣らずの超美人さんだぞ!!


 目は大きくて瞳が茶色、髪の色は茶髪でポニーテールをしていてる。そして制服は少し崩し気味に着ていてスカートの丈も短くとても綺麗な足をしている……


 今どきのギャルって感じがするんだけど、こんな人が本当に『ネガティ部部員』なんだろうか!?


 陰気クサいネガティ部の部室にたむろしているギャルって感じでもなさそうだし……

 

「一矢君、紹介させて頂きますね。この方は2年生で『ネガティ部副部長』の『大石菜弥美おおいしなやみ』さんといいます」


 えっ? このギャルみたいな人が『副部長』なのかっ!?


「あっ、ど、どうもです。この度『ネガティ部』に『仮入部』しました布津野一矢といいます。』どうぞよろしくお願いします……」


「こちらこそよろしくね。『普通の』……?」


「いえ布津野です!!」


「あっ、『ふつの君』ね。ゴメンなさい。うちの部は下の名前で呼び合うルールだから布津野君のことはこれから「ひとやん君」って呼ばせてもらうわね。で、私のことは菜弥美なやみって呼んでちょうだいねぇ?」


 大石先輩!!


 あなた絶対、『普通の』って言い間違えた続きで俺の名前を「人やん」って言いたかっただけじゃないんですかっ!?


「あのぉ大石先輩……お、俺の名前は『ひとやん』じゃなくて『ひとや』ですのでどうか、そこのところはお間違えなく!!」


「えっ? そうなの? ごめんなさい。『ひとや』君ね? わかったわ。もう間違えないから大丈夫よ。それと私の事は「な や み」って呼んでねっ!?」


 はいはい、あんたも部長と同じく下の名前呼びをすぐに求めるんですね!?

 下の名前呼びに何か意味があるんだろうか?


 しかし一見、性格が明るそうな、菜弥美先輩も部長と同じでネガティブな性格なのだろうか?

 

 どう見ても俺と一緒で『普通』の……いや、ちょっと天然っぽいところはあるけどあっさりとした感じのように見えるんだが……


 それに美代部長と同じくスタイルも良くてめっちゃ美人だし、何でこんな人が『ネガティ部』の部員なんかをしているのだろうか??


「美代部長ほんと良かったですね。これで私の『悩み事』が2つも減りましたよっ!! 本当にホッとしました!!」


「そうですね。本当に良かったです。菜弥美ちゃんの『悩み事』が2つも減って私も嬉しいです。まぁ一つは今朝の占いのせいで一つ増えてしまったんですけども……」


「これで私の『悩み事』も一桁に戻すことができましたので今夜はいつもよりはよく眠れると思います!!」


「ということはあと9つは悩み事があるのですね? 分かりました。そ、それでは今からお茶でも飲みながらゆっくり残りの悩み事を聞かせてもらえますか? まあ私みたいな『ドジ』で『ノロマ』で『ブス』では何もお役には立てないかもしれませんが……」


「美代部長ありがとうございます!! 聞いてもらえるだけで十分ですよ!!」


 何、今の会話は??

 この人達の会話は一体何なの??


「あ、あのぉぉ、すみません。ところでこの部はいったい何をする部なんですかね? そろそろ教えていただきたいんですが?」


「あっ、そうでしたね。それでは一矢君もそこに座っていただいて私達と一緒にお茶を飲みながら部活動をしましょうか?」


「えっ? お茶を飲みながら部活の説明ではなく部活動をするのですか?」


 美代部長の言っている意味が分からないぞ。


「ええ、そうよ!! さぁ、一矢君も早くここに座ってちょうだい? 私の悩み事を一矢君にも聞いてもらいたいしさぁ」


「お、俺なんかが大石、いやっ、菜弥美先輩の悩み事を聞いても構わないんでしょうか!? 他人に聞かれたらまずい事とかは無いんですかっ!?」


「別にいいわよ~っ! 部活の仲間に聞かれるのは全然気にしないし、部活の仲間はもう家族みたいなものだしね。それに一矢君に私の悩みを聞いて貰えなかったら逆に部活の仲間に話を聞いてもらえないという悩み事が増えてしまうじゃない!!」


 この人は何を訳の分からない事を言っているんだ?


「そうですよね……菜弥美ちゃんの悩み事がこれ以上増えると部の存続にかかわる事に成りかねないですし。ここは一矢君に菜弥美ちゃんの悩み事をしっかり聞いて頂きましょう」


 い、いや美代部長、それも言い過ぎではないかと俺は思うんですけど。


 それに菜弥美先輩もそれくらいの事で悩み事が増えるなんて、どんだけネガティブな人なんだっ!?


 あっ、ちょっと待てよ。


 ここは『ネガティ部』の部室で美代部長は直ぐに落ち込んでしまう性格……


 副部長の菜弥美先輩は悩み事がめちゃくちゃ多い人……


 それに先輩の名前は「大石菜弥美」……「おおいしなやみ」……


 もしかして……


 な、名前をひっ繰り返すと……「なやみおおいし」……


 なっ、『悩み多いし』じゃねぇか――――――――――――っっ!!!!


 もう、嫌ッ!!




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