第2話 黒髪超絶美少女

「え?」


 俺は立ち止まり声のした方を振り向くと、そこには誰もいない。


「あれ?」


 なんか蚊の鳴く様な声が聞こえた様な気がしたんだけどなぁ……

 後ろにいないということは一体、どこから声が聞こえてきたのだろうか??


 俺はキョロキョロ辺りを見渡してみた。

 しかし誰もいない。いるの俺から離れて勧誘している先輩や勧誘されている新入生ばかりだ。


 おっかしいなぁ。どこを見ても俺を呼んでいる様な人はいないんだが……


 ってことは……

  

 うん、間違い無い、今のは空耳だ。霊的な声とかだったら逆に恐ろしいし、余計な事は考えずに気を取り直して帰るとしよう!!


 俺は再び別館で入り口の方に振り向いた。すると、


「うわぁあっ!!??」


 俺は思わず叫んでしまった。何故なら振り向いたら目の前に長い髪の女の人が立っているじゃないか!? マジで幽霊なのか!? いや、それは無いだろう。

 

 しかしこの人は今までどこにいたんだ?

 

 っていうか、めちゃくちゃビックリしたぞ。心臓が止まるかと思ったよ。

 ずこの人はずっと俺の後ろにいたのかっ!? いや、そんなはずは無いだろう……

 

 っつうか、おたくは誰なの!?


 そういった風な顔で俺が彼女を凝視していたので彼女も俺の気持ちに気付いたのだろうか、申し訳なさそうな感じで、ただ俺と目は会わせず下を向きながらボソボソと話し始めた。


「お願いです……まだ帰らないでいただけませんか……?」


「わ、分かりました。帰りませんが一体、あなたは何なんですか? ずっと俺の傍にいたんですか?」


 マジで普通の人間ですよね? まぁ、足があるから大丈夫だろうけど……


「驚かせてしまい申し訳ありません……わ、私……あまり人前に立つのが苦手なもので……相手の方が私の方を見ると、ついつい体が勝手に動いてしまい相手の背後に回ってしまうという変なクセがあるみたいなんです……」


 いやいやいや、どんなクセだよ!?

 っていうか、そのクセ、逆に凄くないですかっ!? 

 

 俺はかなり体動かしてキョロキョロしてたんだぞ!?

 そ、それなのに俺はあんたを全然見つけられずにいたんだからな。

 

 どう考えても、あんたの瞬発力というか、動くスピードとか見た目と違い過ぎるくらいに半端無くないっスか!?


 で、でもアレだなっ!!

 よ~く見るとこの人、マジでめちゃくちゃ美人じゃないかっ!!

 部活の勧誘をするって事は2年生か3年生の女子だよな?


 色白で黒髪ロングヘアーで目は大きくて、口は小さくて……

 顔だけ見れば女優にだってなれる顔だぞ。


 フフフ、年上の彼女かぁ……それも良いかもな。って俺は何を考えているんだ!?

 まだ出会って間もない人に対して……


 ただなぁ、この人、めちゃくちゃ美人なのになんか色々なところが勿体ないだよなぁ……


 髪型も長くて綺麗だけど、今風のロングでは無いから重苦しく感じるし、最近の高校生にしては化粧っ気も全然無いし、制服も優等生って感じでスカートも校則で決められた長さだし……スタイル抜群で足も長くて綺麗そうなのに勿体ないよなぁ……それに少し猫背なところも問題だ。


 せっかく美人なのにどう見ても『かなり地味』『陰キャ女子』って感じがする。

 今まで彼女が出来た事の無い俺が言うのも失礼だけど、きっとこの人も彼氏なんていないだろうな。


 って、彼女の批評はそれくらいにしておいてと……


「それで、俺に何か用ですか? もしかして部活の勧誘ですか?」


 俺が質問すると彼女は小さくうなずき、こう言った。


「じ、実はそうなんですが……ただですね……ただ……ま、誠に申し上げにくい事なのですが……」


 部活の入部の誘いを申し上げにくいっていうのか!?

 

 っていうか、こんな声が小さくて気が小さそうな人に部活の勧誘をさせるなんて、この人の部活の部長は一体何を考えているんだよっ!?


「で、何が申し上げにくいのですか?」


「じ、実は……」


「実は……?」


「あ、あ、あなたにうちの部に入部していただかないと……」


 ん? していただかないと?


「はい、入部していだだかないと何ですか?」


「あなたに入部していただかないと、わ……私……し、死んでしまうんですっ……」


 ・・・・・・


 !!??


「へっ?」


 い、いや、チョット待ってくださいよっ!?

 い、今のは俺の聞き違いなのか?

 でも昨晩、ちゃんと耳掃除もやったしなっ!!

 って事は……


 よし、ここは落ち着こう。

 冷静になる為に大きく深呼吸をしようじゃないかっ!!


 スーハースーハー


 それに俺!! 

 そろそろ得意の突っ込みの準備はできたのか!?

 

 ただ口に出して突っ込んでもいいのかどうか? 

 こんな弱々しい人には心の中で突っ込んだ方が良いような気も……

 

 さぁどうする俺っ!?


 チラッ


 だ、ダメだ。この人、今にも泣きそうな顔をしているぞっ!!

 

 地味で暗そうな人だけど、こんなメチャメチャ美人に対して俺の鋭い突っ込みを口に出して浴びせるなんて忍びない……


 心優しい俺には絶対できないことだ!!


 じ、自分で心優しいなんて言うんじゃねぇよっ!! 

 って思わず自分で自分を突っ込んでしまったぜっ!!


 いずれにしてもここは心の中で突っ込む選択をしよう。

 後々の事を考えたらその方が無難な様な気がするし、なんといっても俺がこの学園に入学して初めて出会った女子……いくら勧誘とはいえ最初に話しかけてくれた女子だからな。


 両親からもくれぐれも男は適当でいいけど、女の子には常に優しくするようにって言われているからな。ってか、どんな教育だよ!?


 それに今まで女子に優しくしてきたつもりだけど全然モテなかったじゃないか!!

 つてか、まぁ、その件は置いといて……


 それでは……そろそろ突っ込まないと俺にストレスが溜まりそうなんで……


 な、な、な……


 なっ、なんちゅう勧誘だよ!!??

 

 俺が入部しなかったら死ぬだなんて、それって脅しじゃねぇか!!


 もしかしてこれは新手の詐欺か何かなのか!!??






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