第19話 憎き元上司 その3

 脇田が首を下げて、宅配便伝票にサインを書き始めたタイミングで、敏行が準備して置いたスタ○ガンで、脇田の無防備になった首に当て込む!!


『ジジッ……』


「あっ!!」

「…………」


 このスタ○ガンは“ごにょごにょ”品なので、1発で気絶させる事が出来る。

 倒れ込んだ脇田を敏行は上手に受け止め、そのタイミングで僕は敏行の元に近づく。


「ナイス!」

「敏行!!」


 この場で本来、脇田を縛り上げたいが、近所の人間に見られると厄介なので、敏行はそのまま配達員を装い、僕は脇田を肩で抱きかかえながら歩き始める。

 設定上では酒で酔い潰れた脇田を装わせ、僕が脇田を連れて行く寸法だ。


(さて、ここからが本番だな……)


 近所の目に触れずに、脇田を確保する事に成功した。

 僕の思い通りでこの、お仕置きが成功すると良いがな……

 もし、失敗した時は、その時だ……


 ……


 僕と敏行で脇田を工場こうばに運びこび、脇田の両膝を確実に破壊する為に、脇田をコンクリートブロックに乗せて、ベルトで脇田をコンクリートブロックに固定させる。 

 想像以上にスタンガン強力だったのか、脇田は一度も目覚める事は無かった。

 それは、それで、有り難かったが。


「……じゃあ、やるか、敏行!」


「分かりました。総長!!」


 僕がそう声を掛けると、敏行は準備して置いたバケツの水を脇田にぶっ掛ける!


『バシャ!』


「…………うっ」


(若くないから、目覚めも悪いか……)


「……こっ、此処は何処だ!?」


 水を掛けられて目覚めた脇田は、自分の状況に直ぐ気付き、辺りを見回しながら声を発している。

 今回も身分が知られない様に、僕と敏行は覆面マスクを装着している。


「……目覚めたかね?」

「脇田――君」


「おっ、お前は、だっ、誰だ!?」


「……誰だって良いよ。脇田君…!」

「僕はとある人から頼まれて、君にお仕置きをしに来たのだよ…」

「それをされる、心当たりは有るだろ?」


「おっ、お仕置き!?」

「何、言ってんの!?」

「頭正気!!」


「俺は、人に恨まれる事はしていないぞ!!」

「俺は、優しい人間だからな!!」


(優しい人間が、膝を壊すまで人を追い込むか!)

(この偽善者が!)


「……正気だよ。脇田君…」

「今から……依頼通り、君の両膝を、この大ハンマーで破壊する……」

「お仕置きの開始だよ……脇田君」


 僕は側に置いて有る、大ハンマーを手に持ち上げながら、脇田に見せつける様に見せる。


「はっ…!?」

「ちょっ、馬鹿な事言うなよ!!(汗)」

「そんな事されたら、仕事が出来なくなるだろ!!」


「俺の仕事知らないの!!」

「体が資本なの!!(大汗)」


「んっ……そうなの?」

「僕は、君の仕事なんか知らないし…」

「でも、頼まれた事だからな……。人の命令は聞かないと駄目だよね!」

「班長の脇田君(笑)」


「なっ、何で、お前が俺を班長と言う事を知っているのだ!!」

「ちょっ、マジで止めてくれよ!!」

「そんな事されたら、俺の人生終わってしまうよ!!」


「そんなの知らんよ……。えい!」


『ブン!』


『バキィーー』


「うぎゃあぁぁぁーーー!!」


 僕はためらいも無く、脇田の左膝を破壊する。

 お前もそうやって、依頼者を追い込んだのだろ!

 悪い事したら、いつかは己に帰って来るのだよ。


「うぐおぉぉぉぉーーー」


 余程痛いのか、今後の事を考えてかは知らんが、喚き続ける脇田……


「さて……さっさと、もう1発行くか…」

「余り時間は掛けたくないし……」


 この仕事は僕一人出来るから、敏行は見学者だ。

 敏行は無言でこの行方を見ている。

 僕は再び大ハンマーを振り上げると……


「やめろ、やめろ!!」

「それ以上されたら、俺は今の仕事が出来なくなる!!」

「本当に、本当に、勘弁してくれ!!(泣)」


「誰に頼まれかは知らんが、本当に止めてくれ!」

「金で雇われたなら、その金の倍を支払うからさ!!」


 脇田は泣きながら言ってきた。

 人間なんて、こんなもんだ。

 どんだけ活きの良い奴でも、死や体の不自由を意識させれば、直ぐに音を上げる。


(此奴は、依頼者にした事の自覚は無いのだろうな……)

(今まで何人も、同じ事をしてきたに違いない)

(此奴にとっては運悪く、依頼者が根を持つタイプだったと言う事だ)


(さて、どうしようかな…?)

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