第3話 世間を舐めすぎた若造 その2

「残念ながら依頼者は、物的証拠を掴めてなかったんだよ。山本」


「あ~~、そう言う事ですか!」


「車に傷を付けている場面を依頼者は偶然見付けたが、其奴は逃げてその日は戻って来なかったそうだ」

「ご丁寧に犯行当時の服装では戻らず、全く別の格好で戻って来たらしい。無職の癖に賢いなw」


「防犯カメラも丁度死角に成っていて、カメラでは現場を押さえられなかった」

「男の帰宅後に依頼者は詰め寄ったそうだが『変な言いがかり付けますと、警察呼んで、弁護士にも相談しますよ』と言われて諦めたそうだ。


「ついてないですね、その依頼者。相手も現代の知恵を駆使してきたか…」

「徳丸さん。見つけた時、依頼者は男を捕まえようとはしなかったのですか?」


「捕まえようとはしたが、若いだけ有って体力では敵わなかったそうだ」


「自営業と言っていたから、それ相応の年齢なんでしょうね。徳丸さん…」


「まぁ、そういう事だ!」

「“ちんけ”な案件だが、要望で倍に吹っ掛けたし、相手の場所や行動パターンも依頼者から提供して貰ったから、今までの中で一番楽だぞ。情報屋も要らないからな!!」

「男の交友関係も狭いし、ケツうしろに面倒くさいのは居ないから、1週間も有れば終わってしまう仕事だ!」


 徳丸さんがそう言いながら、A4用紙数枚と相手の顔写真を俺に手渡してきた。


「名前は、伊藤か……。確かに世の中舐めきった顔していますね」

「世間知らずの、餓鬼ガキ顔のまんまだ…」」

「依頼者が相手の行動パターンを調べるとは、良くやりますね……」


「それだけ、愛車に傷を付けられたのが悔しかったのだろう。山本!!」

「俺だって嫌だからな!!」


「僕だって、愛車のハイ○ースに傷つける奴は潰しますよ。徳丸さん!」

「20代前半で五体不満足と成るとは、世の中を甘く見すぎていたな……伊藤君」


「余裕を持って2週間の時間を取って有るから、その間に依頼者にお仕置きを加えてやってくれ!」


「分かりました。徳丸さん…」

「期限内に、お仕置きを加えます……」


「頼んだぞ! 山本!!」


(久しぶりの獲物だ…。ゆっくりと時間を掛けて、男の関節を潰してやろう…)


 ……


 ある日の夜……


 今晩は例の男を、お仕置き(拷問)する日で有る。

 僕は男が住んでいるアパート付近で機会を窺っていた。


(○曜日、この時間帯は必ず、家を出るか……)


 僕は依頼者が調査した、相手の行動パターンを確認をしている。

 今回お仕置きをする相手は1人だし、内弁慶気質の奴なので僕1人で十分だ。

 一応、助手として敏行としゆきが居る。僕と同じ族の副総長だ。

 だが、今回は関節破壊だけのお仕置きなので、敏行は此処には居ない。


『バン!』


 大きな玄関開閉音を立てて、男が小走りにアパートの階段を降りて来た。


(間違いない…。彼奴だ……)

(深夜に入る時間帯だから、確かに少し耳障りだな…)


 僕は気付かれない様に男に近づく。

 男は周りが見えてないのか、僕の存在に全く気付いていない。


(こんな奴に翻弄されるとは、依頼者は只の馬鹿だな)

(背後から襲えば一発だろ……)


 男は近くに有る、自動販売機に向かっていた。


(ジュースを買う為に出て来たのか?)

(まぁ、良い。彼奴がジュースを買う時が機会だな…)


 僕は襲うタイミングを決めて、男に近付く。


『チャリーン、チャリーン♪』


 男は全く俺に気付かず、小銭を自動販売機に入れている。


(彼奴が缶を取り出す時が、奴の五体満足人生終了だ…)


『ピッ♪』

『ガッチャーン♪』


 自動販売機からジュースが出て来て、男が頭を下げ、ジュースを取る行為に入る。


(今だ!)


 僕は一気に男の飛び掛かり、事前準備して置いたロープで、男の首を絞める。

 そうしないと、声を出されるからな。


「うぁ!」

「……うっ…!!!」


 男に声を上げさせる暇無く、俺は男の首をロープで絞める!!

 男は当然もがき苦しみながら、ロープをほどこうとしながら僕を見る。


「だっ、誰だ……」


『ギュ~~~』


 男はかすれ声でそう言うが、僕は無言で首をロープで絞め続ける。

 そう、男が失神するまでだ……


「!」

「…………」


 男が失神したのを確認したら、首からロープを緩め、そのロープで手を縛り、速やかに車に積み込む。車は当然、ハイ○ースだ。


(第1段階は完了と……!)


 男が住んでいる地域は住宅街だが、この時間帯の人通りが少ないのは調査済みだ。

 幸い……誰1人見られる事も無かったし、男の母親が夜勤で居ないのも把握済みだ。

 僕は、これからのお仕置きを楽しみにしながら工場こうばに戻った。

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