良い荷、旅立ち

シヨゥ

第1話

 山積みの荷物にうんざりする。

「勇者殿。これ全て持っていくんですか?」

「そうだけど。多いかな?」

 人足として雇われた身として文句を言うのはどうなのかと思う。だがここは言わせてもらおう。

「多いです」

「運べないほどに?」

「運べなくはないですが、もっと減らしましょうよ」

「これでも減らした方なんだけど」

 減ってこの量とはため息が出る。

「まず剣ですが、10本も要りません。刃こぼれしたら研げばいい話ですし……予備としての1本。追加でもう1本ぐらいでことが足りるでしょう」

「そうかな?」

「次に鎧。これも10セットも要りません。修復用に1セットをばらして、あとはつなぐための紐でももっておけば十分です」

「せっかく買ったのに」

「王様からもらった資金をこんなはじまりの町で浪費してどうするんですか」

「それはそうだけどさ」

「あなたはこれから大冒険に出かけるんですよ。初めから大量に持って出かけたら、拾えるものも拾えなくなる。身動きも取れなくなって救えるものも救えなくなる。それでいいんですか?」

 その質問についには勇者殿はだんまりを決め込んだ。

「いやなんですね。それじゃあもっと物を減らして売り払いましょう。幸いこの国の通貨は全世界で使えます。このお金で救える命もあることでしょう」

 旅立つ頃には荷物は10分の1以下にまで減っていた。勇者殿は不満げではあるがここでのことが今後生きてくるだろう。そう願っている。

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良い荷、旅立ち シヨゥ @Shiyoxu

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