(二)

「昨日『いなほ銀行』に事情を聞きに行きまして。そのときに、こちらの捜査員が訪ねてきたと聞いたんですよ」

 取調室の一室で、中原忠哉と名乗る大阪府警県警本部捜査一課の刑事は、簡単な挨拶に続けて関西弁のイントネーション混じりにそう切り出した。

「大阪豊中市にある緑地公園で大手メガバンク『いなほ銀行』の社員・伊賀屋いがや真喜夫まきおが変死体となって発見された事件を担当しています。その被害者について『いなほ銀行』に事情聴取したところ、伊賀屋という男は社内で不正をしていたようです。チンピラを使って資金返済を無理矢理迫るなどしていたとか。本社がそれを把握し、露見を恐れて大阪支社に『栄転』という形で転勤させて、詳しい調査も打ち切ったということでした」


(続く)

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