第6話 おじいさん、おばあさん、実はわたし……

 おじいさんとおばあさんはヤスコを本当の子供の様に可愛がってくれました。


 森の中の小さな家ですが、3人が暮らすのには十分すぎる広さがあります。

 庭には、家庭菜園と果物の木があり、鶏とウズラとヤギと牛が放し飼いになっています。

 近くに綺麗な小川が流れていますし、井戸もあります。

 森の中の一軒家ですが不自由を感じませんし、むしろ都会に無い豊かさを味わえます。


 それにおじいさんとおばあさんは魔法とスキルを持っているらしく、

「田舎暮らしだけど何不自由無いのじゃ」と言っていました。


「おじいさん、魔物に家畜を襲われたりしないのですか?」

「家を中心に半径100メートルぐらい迄、魔物除けの結界が張ってあるから心配ないのじゃ」


「まぁ、そんな物があるんですね?」

「そうじゃ、魔物除けの術式を埋め込んだ魔石を家の礎石に据えてあるのじゃ。ワシとおばあさんで時々魔力を補填しているから、マナが空っぽに成らなければ半永久的に稼働し続けるのじゃよ」


「そうなんですかぁ。わたしも魔力があるでしょうかぁ?」

「ほうほう、鑑定クリスタルで調べてみようかのぅ?」

「はい、お願いしますぅ」


 おじいさんは葛籠つづらから大きなクリスタルを取り出しました。


「これに手をかざすのじゃ。触らずに、手の平で圧だけを送り込むイメージじゃ」

「は~い。……ンゥゥゥゥゥ……」


 ピッカアアアアアッ!


「オォッ、強い光じゃ! な、何と!? レベル49じゃと、しかもMPは8450じゃ!?」

「え、えっとぅ、それって、凄い事なんですか?」

「ふむ、一般人の平均はMP50ぐらいじゃ。ちなみにワシとおばあさんはMP300ぐらいじゃが、貴族の中でもかなり高い方じゃがのぅ」


 それは大きく成ったり小さく成ったりするスキルの為に必要なMP値だったのだが、ヤスコが知るよしも無かった。


「よいか、ヤスコよ。MPの数値は黙っていなさい。個人情報保護法じゃ」

「はい、おじいさん」




「ヤスコ、林檎を3個取ってきておくれ」

 と、おばあさんに言われたのでヤスコは外に取りにいきました。


 林檎の木は高さ5メートル程ありそうです。

 ヤスコは身長を調整しながら美味しそうな果実を選び始めました。


「ほほぅ、ヤスコは面白いスキルを持っているようじゃのぅ」

「あっ、おじいさん。黙っていてご免なさい! 怖がらせたく無かったんですぅ」


「イヤイヤ、ちっとも怖く何か無いぞ! 神様から良いギフトを貰ったのぅ。……じゃがのぅ、特別なスキルは他人から妬まれたり悪巧みに利用されたりしがちなのじゃ、そのスキルを使う時は個人情報を隠した方が良いじゃろぅ」

「はい、おじいさん」


「ほれ、これ何かどうじゃ?」

 おじいさんはそう言って、赤いアイマスクを出してくれました。眉間の辺りにエメラルドが嵌め込まれています。


「若い時のおばあさんが仮面舞踏会で使っていたものじゃ。衣装も残っているから、貰ってマジックバッグに入れて置きなさい」

「はい、おじいさん。ありがとうございます」



 ヤスコは貰ったマスクを着けて、舞踏会用のドレスも着て見ました。

「まぁ、お似合いだこと……でも森で着るにはスカートの裾が大き過ぎて邪魔になりそうね。ちょっと待っててね」


 おばあさんはシルクの白とピンクの生地を葛籠つづらから取り出すと、

「ブラウスとショートパンツとソックスを【裁断】【裁縫】!」


 シュシュシュイイイイインッ!

 キラキラキラキラ!


 フックラしたフリルが可愛いピンクと白のブラウスとパンツ。そして白のニーハイソックスが一瞬で出来上がりました。


「カッワイイイイイッ! ありがとう、おばあさん大好きぃ!」

「おほほほほ、何のこれしきの事」


「ワシは、ワシは?」

「もちろん、おじいさんも大好きですぅ!」

「ふむふむ、よかよか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る