第2話 休息日

 トルシエ国際空港があったアルデス王国から飛行機で二十時間近く掛かって、ようやくホームのアルス王国に着いた頃には、私もみんなもヘトヘトだった。

 気流が悪かったとはいえ、長距離国際路線は苦手だった。

 まあ、それはともかく、今度は国内ローカル線の飛行機で三十分の距離にある、南端の小さな空港を目指して、痛む体を無理やり小型機の機内に押し込み、私たちは再び飛行機移動を開始した。

 便利な都会を狙わずわざと田舎にしたのだが、これは私がまだ一人旅をしていた頃に、たまたま立ち寄った田舎町で広い家が格安で売られていたのをみつけ、荷物置き場にと買い取ったからだ。

 今はみんなでここを根城にして様々な場所に出かけていく基地になっていて、面倒で馬鹿にならない宿代も掛からずなかなか便利だった。

「帰ったら、そのヤカンでお茶でも飲みましょう」

 隣のビスコッティが笑った。

「そうだね。このヤカン、もっとみないと」

 私は笑った。

 私たちを乗せた小型プロペラ機は、夕闇迫る空を飛び続け、その田舎町ことアレクに向かっていった。


 飛行機がアレクの空港に着陸すると、私たちは町の海沿い目指して歩いていった。

 小さな町だが活気はあり、私たちはいつものマーケットで夕食の食材を買って、雑談を交わしながら目抜き通りを歩いていった。

 空港からはそう遠くなく、買い物含めて三十分程度でピンクに白玉模様が描かれた外壁の家の門を開け、庭を横切ってから鍵を開けて中に入った。

「ふぅ、疲れた」

 私たちはリビングの適当なソファに座り、それぞれが旅の疲れを癒やしはじめた。

「よし、私は相棒の様子を見てくる」

 アリスが笑みを浮かべて、外に出ていった。

 安かった割には庭は広く、アリスがその一角にヘリポートを作り、中古の使い込まれたボロいヘリコプターが一機置いてあった。

「相棒ね。全く、空飛ぶものなら何でも飛ばすって豪語してるからね」

 私は一人呟き、空間ポケットから祠で手に入れた純金製のヤカンを取りだし、よく確認為てみた。

 すると、温度だけではなくポッチがいくつもあり『紅茶』『緑茶』『ウーロン茶』『麦茶』『コーヒー』『ココア』『オレンジジュース』『お酒各種』……と飲み物だけでもよりどりみどりで、さらに濃さやミルクのありなしまで設定出来るようになっていた。

「多機能だね。これは」

 私が試しに好物のコーヒーを押してみると、ヤカンが神々しい光りを放ち、ゆっくりじっくりドリップする音が聞こえてきた。

「……どうなってるのかな。これ?」

 蓋を開けようとしたがロックがかかって開かないようになっていて、そのうちコーヒーの香ばしい香りが漂ってきた。

「そのポッチ押して!!」

 隣に座っていたスコーンが、『回転』と書かれたポッチを指さした。

「いいけど……」

 私はそのポッチを押してみたが、エラー音が鳴り『飲み物が入っている時は無効です』と虚空にウィンドウが開いて、古代語のメッセージが表示された。

「ダメっぽいよ」

 私は笑った。

「なんで、なんで、回転しないの。ぶっ壊れてるよ、これ!!」

 スコーンが不満そうに頬を膨らませた。

「当たり前だと思うけどな。まあ、いいじゃん」

 私は笑った。

 しばらく待つと、コーヒーのドリップ音か消え、『美味しいコーヒーが出来ました』とヤカンから音声が聞こえた。

 無論古代語だが、この程度ならヒアリングできた。

 私はダイニングからコーヒーカップを取りだし、湯気が立つコーヒーをヤカンから注ぎ、試しに飲んでみた。

「うん、苦みと酸味が上手く調和して美味しいよ。スコーンも飲む?」

 私は自分のカップをスコーンに渡した。

 スコーンはそれを一口飲むと、それを持ってビスコッティの方に向かっていった。

 こうして、結局みんなでコーヒーを楽しみ、戻ってきたアリスは空になったヤカンをみて……少し寂しそうだった。

「あの、お酒は?」

 ビスコッティが笑みを浮かべた。

「うん、ポッチあるけど各種なんだよね……」

「では、押してみましょう」

 ビスコッティが『お酒各種』のポッチを押すと、芳醇なブドウの香りが漂ってきた。

 蓋を開けてみると、中にはワインが入っていた。

「なんだ、普通だ」

 私は苦笑した。

 こうして、私たちは気付にお酒を飲みはじめた。

 ちなみに、ビスコッティは大の酒好きで、人一倍お酒を飲んでヤカンが空になると、またポッチを押した。

 すると、甘いなんともいえない香りが漂ってきて、蓋を開けると甘酒が入っていた。

「……あ、甘酒」

 ビスコッティがしょんぼりしてしまった。

「確かに各種だね。どうなってるんだか……」

 私は笑った。


 今日の夕食当番はシノとリナだった。

 なにか炒め物でもしているのか香ばしい香りが漂う中、リビングの大画面テレビではスコーンとビスコッティが格闘ゲームをやっていたが、なにか不満だったらしくしまいにはリアルに殴り合いをはじめてしまった。

 他はゲームボーイを片手にテ○リスをやったり、ドローンを飛ばして遊んでいたり……要するに暇だった。

 まあ、特に旅していなければこんな感じで、このパーティメンバーは基本的にユルユルするのが好きだった。

「おーい、黒い封筒がきたぞ」

 ポストを見にいっていたアリスが、ビスコッティにそれを渡した。

「そうですか。今度はなんでしょうね」

 ビスコッティが苦笑して、黒い封筒を受け取った。

「これが、国家指定冒険者ライセンスを持つ者の辛さだねぇ」

 アリスが笑みを浮かべた。

 国家指定冒険者ライセンスとは、国が認可した特別な冒険者なのだが、いわゆる『濡れ仕事』を半ば強制的に命じられるという、補助金や高額な報酬が出るというメリットよりデメリットの方が大きいものだった。

 私のパーティではビスコッティとアリスが持っているのだが、この収入がないと立ちいかなくという情けない一面もあった。

 私がリーダーなので、面子が立たないという理由で登録しようとしたら、ビスコッティに張り手を食らってまで止められたので、引き下がったという過去もあった。

「えっと……」

 ビスコッティとアリスが封筒を開け、中の紙を広げると小さく頷いて服のポケットにしまった。

 ビスコッティとアリスが、冒険では滅多に使わない狙撃銃を取りだし、手入れをはじめたところをみると、今回は狙撃の依頼だと分かった。

「今日はお酒が入ってしまったので、出発は明日にしましょう。それより、ご飯が楽しみです」

 ビスコッティが笑った。

「そうだな。明日でいいか」

 アリスが笑った。

「はぁ、生きて帰ってきてね」

 私は苦笑した。


 夕食が済むとまだ時間が早い事もあって、私たちはレーティングなしのポーカーをやって遊んでいた。

「……」

 私の手札はいわゆるブタ。つまり、無役だった。

 当然、カードの全交換をしたが、なんとかツーペアになっただけだった。

 ポーカーは、いかに相手を勝負から下ろすかという心理戦のゲームである。

「……」

 私は小さく笑みを浮かべ、実質的に最低の強さの役だったが、さも大技がきたような顔をして、椅子の背もたれに寄りかかった。

 みんな出そろったところで、誰も下りる気配もなく仕方なく一斉にオープンすると、ララがストレートフラッシュを決めてくれた。

「あーあ……」

 賭けたチップをごっそり持っていかれ、私は天井を仰いだ。

「パステルは特に下手なんですよ。あんなわざとらしくやられたら、嘘だってモロバレです」

 ララが笑った。

「そういわないでよ。私ってポーカーフェイス苦手なんだから」

 私は苦笑した。

 そんなこんなで時間は過ぎていき、私たちはシャワーを浴びたあとで寝室に移動した。 寝室は四部屋もあり、それぞれベッドが二脚置いてあるので人数分ちょうど。

 いつも通り私はビスコッティと同じ寝室に入り、明かりを点けた。

 元々は点り油を使って火をつけて使っていたであろうランプには、今は柔らかい光を放つ電球がセットされていて、落ち着いた雰囲気を作っていた。

 私はベッドに横になり、ビスコッティはベッドに座ってナイフを研ぎはじめた。

「……私も指定受けようかな」

 思わず呟いてしまったとき、ビスコッティがスッと音もなくベッドから立ち上がり、私の首元にナイフの切っ先をチョンと刺した。

「い、痛いよ!?」

「……こんな仕事ばかりです。やめなさい」

 ビスコッティがそっとナイフを放し、笑みを浮かべてナイフを再び研ぎ始めた。

「分かったよ。危ない事しないでよ」

 私は苦笑した。

「聞き分けない子にはお仕置きです。さて、どうしますか。これが終わったら、殺人事件ゴッコでもやりますか?」

 ビスコッティが笑った。

「またやるの。みんなにバレてるから、楽しくないよ」

 私は笑った。

 まあ、悪趣味ではあるが、大体ビスコッティが死体役でオモチャのナイフを胸に刺したようにみせかけ、私が大声で叫びながらみんなを叩き起こすという、どうしょうもない遊びだった。

 一回死体役をアリスでやったら、刺されるわけないじゃんと誰も反応しなかったのは笑ったが、今日はそんな気分ではなかった。

「……生きて帰ってきてよ」

 私は苦笑した。

「そう簡単にはやられませんよ。さて、休みましょうか」

 ビスコッティが笑みを浮かべた。


 深夜になり、恐らくはみんなが寝静まった頃、家の敷地を囲むように張ってあるアラームの警報音がなった。

 私がいつも枕元に置いてある拳銃を取る頃には、ビスコッティが素早く拳銃を片手に寝室の扉を開けて飛び出していった。

 あまり自信はないが、私もバックアップとして飛び出ると、寝室がある二階から一階に向かう階段を下りて、僅かに開いていた玄関の扉を開けて外に飛び出した。

 真っ暗でなにも見えなかったが、家の裏辺りで連続する銃声が聞こえ、小さな男の悲鳴がが聞こえた。

「あれ……」

 なにしろ、感度を最低にしても野良猫が通っただけで鳴ってしまうアラームの魔法だったので、今回も誤報だとどこかで思っていたが、どうやら何者かが侵入したようだった。 ここは迷宮ではない。

 この際主義だのなんだのいっていられないので、明かりの光球を打ち上げると、ビスコッティとアリスが笑みを浮かべてやってきた。

「こそ泥だよ。軽く足に当てたら、慌てて逃げていった」

 アリスが笑った。

「はい。あれ、師匠。枕を抱えてどこにいくんですか?」

 ビスコッティが、ピンクのシマシマ模様の寝間着を着て、寝ぼけた様子でどこかに行こうとしていた様子のスコーンをキャッチして、玄関扉の向こうに放り込んで笑った。

 ちなみに、ビスコッティにある程度の魔法を教えたのがスコーンなので、師匠と呼ぶのが常となっていた。

「この町は治安がいいんだけどね。たまにいるよね」

 私は笑みを浮かべた。


 こそ泥騒ぎも一段落し私たちは再び家に入り、さぁ寝るぞというタイミングで、今度は町の防災無線が警告音を鳴らしはじめた。

「なんだかな……」

 いち早く飛び出していったビスコッティの後を追って、私も急いで飛び出した。

 寝ぼけて階段付近でウロウロしていたスコーンを小脇に抱え、階段を一気に駆け下り、他のみんなも家から飛び出し、町の門に向かっていった。

 背は低いが町はレンガ造りの壁で囲まれていて、いつも通り対物ライフルを抱えて壁に上るシノの背中に寝ぼけたスコーンを張りつかせ、私たちは町の外に飛び出て陣形を作った。

 暗視機能がついている双眼鏡でみると、町に向かって数台の車両が近づいてきている事が分かった。

『こちら、シノ。配置についた』

 無線にシノの声が飛び込んできた。

「了解。スコーンを叩き起こして」

 私はRPG-7を構えて笑みを浮かべた。

『了解。二、三発引っぱたいたら直った』

 シノの小さな笑い声が聞こえた。

「スコーン、取りあえずぶち込んで」

『分かった。目標は確認してるよ』

 眠そうなスコーンの声が聞こえ、壁上から無数の炎の矢が飛んでいった。

 双眼鏡で確認すると、車両は縦一列にならんでいたようで、一気に展開して十台になった。

 そこにスコーンが放った炎の矢が降り注ぎ、数台の車両が爆発炎上した。

 車両の動きが止まり、数十人がアサルトライフルを乱射しながら接近してきた。

 派手な発砲音か聞こえ、シノが壁上から射撃を始めた。

 ビスコッティが防御魔法を使い、リナとララが抜剣して構え、アリスがアサルトライフルを撃って威嚇をはじめた。

「さて……」

 こんなところでマッピングしても意味がない。

 距離は八百少々。私の拳銃ではお話しにならないので、RPG-7を構えて牽制のつもりで集団のど真ん中にロケット弾をぶち込んだ。

 爆発と共に数人が倒れたようだったが、その程度ではビビらないようで、集団は徐々に接近してきた。

『敵のボスと思われる男を発見。車両で待機している。距離千二百』

 無線からシノの声が聞こえ、派手な発砲音が聞こえた。

 遠くに見えていた車両が爆発炎上し、集団の動きが止まった。

 そこにスコーンが放った火球が炸裂し、数名を残して消滅した。

「スコーン、もっとやれ!!」

『分かった!!』

 どうやら完全に目が覚めたようで、無線から元気なスコーンの声が聞こえ、無差別に攻撃魔法を放ちはじめ、車両やら人影やら全てのものが粉々に粉砕されていった。

「うん、今日もいい仕事したなぁ」

 派手な火災が起きた町の外を見つめながら、私は風に煽られた髪の毛を手櫛で直した。


 町の警備団から気持ちですと礼金を受け取り、私たちは家に戻った。

 再び寝室に入ると、早々にベッドに横になったビスコッティの目を盗んで、途中まで書いてある国家指定冒険者ライセンスの申請書を全て書いた。

「……寝てるよね」

 ビスコッティが静かに寝息を立てている事を確認し、私は申請書をそっと封筒に入れた。

 そっと部屋から出ようとすると、いきなり右腕をねじ上げられて、私はその痛みで涙がでた。

「あなたはこの程度です。お話しになりませんよ。ただ死ににいくようなものです。やめなさい」

 ビスコッティが私の手にあった封筒を手に取った。

「い、痛いよ。分かったよ!!」

「いっそ、折っちゃいましょうか。そのくらいしないと、分からないようなので」

 ビスコッティは私の右腕をさらにねじ上げた。

「わ、分かったから、もう許して」

「……次は折りますよ」

 ビスコッティの笑い声が聞こえ、やっと手を放してくれた。

「気配の消し方は分かっているようですが、まだ甘いですよ。しかも、背後から接近した私に気付かない。これ、ナイフだったら死んでますよ」

 ビスコッティが封筒をビリビリに破きながらベッドに戻った。

「イテテ……。マジで怒ると怖いのは、昔からだね」

 私は苦笑して自分のベッドに座り、持ち込んだヤカンの『ジャスミン茶』のポッチを押し、乾いた喉を潤した。

 ちなみに、故郷にいるときから、ビスコッティに勝てた試しがなかった。

「さて、今度こそ寝ましょう」

「そうだね。おやすみ!!」

 私はベッドに横になった。

 ビスコッティが小声でなにか呪文を唱える声が聞こえ、私は強烈な眠気に襲われてそのまま寝てしまった。


 翌朝、少し早く起きた私は一階に下りてリビングに下り、テレビの電源を入れて王国放送のニュース番組をみていた。

「はぁ、なんかいいニュースないかな。天気は曇りか」

 目立ったニュースといえば、スコーンが書いた論文が学会に大波紋を投げかけ、今までの魔法の常識が覆ってしまったという事くらいだった。

「何気にスコーンは研究者だからね。どこで、論文を書いているんだか……」

 私は笑みを浮かべた。

 その他は特に変わったニュースがなかったのでテレビを消し、私は玄関を開けて外に出た。

 夜間は作動しているアラームの魔法も今は切れているので、私は遠慮なく庭を横切り、門を開けて散歩をはじめた。

 目抜き通りから路地に入っていくと、早朝なのでまだ誰もいなかった。

「こういうところが、田舎町なんだよね。いいことだ」

 私は深呼吸しながら歩き、路地の交差点に差し掛かった時だった。

 いきなり発砲音か聞こえ、右足に激痛が走って、思わず悲鳴を上げて倒れてしまった。

 反射的に回復魔法を唱えようとしたところ、いきなり数名の男に取り押さえられてしまい、そのまま後ろ手に縛られてしまった。

「ちょっと……」

 思わず声を上げようとした時、口に布を突っ込まれて声が出せなくなった。

「よし、一匹捕まえた。昨日は世話になったな」

 いかにも粗野な顔をした一人が、ニヤッと笑みを浮かべて私の傷口を踏んだ。

 痛みでジタバタしていると、男が私の顔にツバを吐きかけた。

「さて……」

 男が私を担ぎ上げた時、凄まじい発砲音か聞こえ、すぐ隣の男の頭が粉々になって吹き飛んだ。

 その間髪をぬって素早く誰かが通り過ぎ、その場にいた男たちの首がすべて吹き飛んで路面に転がった。

 私を担ぎ上げた男が倒れると同時に、私は顔面から路面にダイブして、泣きそうになってしまった。

「パステル!!」

 対物ライフルを担いで近寄ってきたシノが私の縄を解き、剣を鞘に戻したララが口の布を引き抜いてくれた。

「発砲音か聞こえたから、慌ててきたんだよ。アリスもビスコッティも、仕事の準備で忙しくて手が回らなくて」

 シノがため息を吐いた。

「はぁ、ありがとう。取りあえず、これ治るかな……」

 私は呪文を唱え、右足の傷口を手で押さえた。

 痛みは少し引いたが、私の魔力ではそれほどの回復は見込めなかった。

「まあ、なんとか歩けるか……」

 私は立ち上がろうとしたが、足の痛みで無理だった。

「私が背負っていくよ。帰ったらビスコッティに治してもらおう」

 ララが私を背負い、シノが辺りを警戒しながら、私たちは家に戻った。


「あれ、いない……」

 家に帰ると庭のヘリコプターがなくなり、アリスとビスコッティの姿がなかった。

「あれ、怪我しちゃったの!?」

 玄関までスコーンが出てきて、慌てて回復魔法を使ってくれた。

「なんか汚れてるし、どこにいってたの?」

 スコーンが不思議そうに聞いてきた。

「散歩してたら昨日の盗賊だと思うけど、その生き残りに絡まれちゃって。もう大丈夫だよ」

 私はララの背中から下りて、笑みを浮かべた。

「さて、シャワーでも浴びてくるよ。ビスコッティとアリスは出発しちゃったみたいだね」

「うん、さっき出ていったよ。明日には帰るって」

 スコーンが笑みを浮かべた。

「そっか、分かった」

 私は笑みを浮かべ、シャワールームに向かっていった。

 時々トラブルはあるものの、この町は比較的治安がいい方である。

 自警団もあり町の出入りもチェックしているので、今回はイレギュラーな事。

 冒険していないときでも、なにかがあるときはある。

 そんな一日の始まりだった。

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