最終章『神と魔王と転職士』
第172話 クランの絆
「ソラ! 大丈夫か!」
隠れ家に戻るとカールが緊迫した表情でやってきた。
「俺は大丈夫だよ。それよりもフィリアが攫われた」
「なに!?」
「それよりも、今すぐサバト様のところに行く。カールはミリシャさんと一緒に戦いの準備を進めてくれ」
「くっ……相手は魔女なのか?」
「違う。魔女は味方だ。俺達の敵は――――――きっとあそこに住んでいる者達だと思う」
指差すのは、空の遥か彼方。
「分かった。編成の事は任せてくれ」
「ああ。頼んだ。親友」
「おう」
カールと拳をぶつけ合い、俺はいつもの荷馬車で空に向かって飛び上がる。
「ソラ~」
「アンナもいたのか」
「ん~」
いつの間にか黒猫になっているアンナが肩に乗ってくる。
「…………戦いになるよね?」
「そうかな~」
「相手の事は分かる?」
「分からない~サバト様はずっと
「そうか……サバト様もずっと一人で……」
相手がそういう存在かはまだ分からないけど、フィリアの身体を乗っ取ったあいつからは凄まじい力を感じずにはいられなかった。
そんな色んな疑問を抱いて、俺は魔女の森の奥にあるサバト様の城を訪れた。
「ソラか」
「お久しぶりです。サバト様」
「くっくっ。随分と焦っているのぉ?」
「……知っているでしょう? フィリアの事」
「もちろんじゃ」
「旦那として、焦らない方が不思議だと思います」
「それもそうじゃな。だが、あれはあの娘が選んだ道じゃぞ?」
「知っています。彼女からもしもの時は殺してくれと頼まれていますから」
「ふむ。それで、お前の答えは?」
「助ける以外ありえません。サバト様。全てを教えてください」
「お前に教えて何になる?」
スサノオの圧倒的な力の前に何も出来なかった。
目の前のサバト様にも相手にすらならないと思う。
けれど、セグリス町に住んでいた頃と比べたら、比べられない程に強くなっている。
だから諦めるなんて事はない。
「今は
「くっくっくっ。かーははははっ! いいだろう。お前の疑問に答えてやろう。ただし、条件がある」
「条件……ですか?」
「戦いに混じれるくらい強い力を身に着けてこい。さすれば、あれらについて話してやろう」
「時間はどれくらいですか?」
「そうだな。あの娘が内側から開けた穴のせいで、精々30日だろう」
「分かりました。必ず力を手に入れて来ます」
「楽しみにしている。魔女達も連れていくといい」
「サバト様は?」
「くっくっくっ。気にするな。空いた穴のせいでここから動けないだけだから、少しはお前に時間をやろうと思ってのう」
「ありがとうございます。サバト様の時間を決して無駄にはしません」
サバト様からの言質が取れたので、魔女の森を後にする。
魔女達は黒猫のまま俺の影に入っていく。
「みんな~お久~」
「「「「アンナ~お久~」」」」
アンナの前に7人の魔女がやってきて挨拶を交わした。
「みんなも『銀朱の蒼穹』に~?」
「女王様が~付いて行けって~」
「うふふ~女王様がソラくんを気に入ったんだね~」
「君がソラくんか~ん~弱くない?」
「今はまだ弱いよ~でもきっと強くなる~」
「そっか~アンナがそういうなら信じる~」
7人が黒猫姿になると、僕の身体に乗ってくる。器用に背中とか足とかに付着していた。
自己紹介はまだだけど、どの道みんなと自己紹介はするだろうから後にするとして、魔女の森を後にして隠れ家に向かった。
◇
「みんな。今日は集まってくれてありがとう」
『銀朱の隠れ家』にメンバー全員が集まった。
「既にみんな知っているように、空に亀裂が出来ていて、それが俺達の……サバト様の敵になるみたい。まだ正確な情報はサバト様から聞けなかったけど、サブマスターであるフィリアがスサノオという男に攫われてしまったよ。だからここにフィリアはいない…………俺のわがままかも知れないけれど、どうかみんなの力を貸して欲しい! 俺は何が何でもフィリアを取り戻したい! ううん。必ず助けに行く!」
そう話すと隣のカールが俺の肩に手を乗せる。
「おいおい、フィリアはなにもソラの奥さんなだけじゃないぞ? フィリアは俺達のサブマスターで、俺達の仲間だ。助けるのは当たり前だ」
「カール……みんな…………」
「ここにフィリアを助けたくないと思うやつがいるはずもない! 必ず助け出すぞ!」
「「「「おおおおお!」」」」
広場は大きな歓声に包まれる。
フィリア。聞こえるかな? この大きな歓声を。俺達が戻るべき居場所を。
これからみんなで力を合わせて迎えに行くから、もう少しだけ待ってて。
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