第124話 告白
朝早くに外の騒がしさに目が覚めると、隣の布団の中から俺を見つめる視線を感じる。
「フィリア!? お、おはよう」
「ふふっ、おはよう~ソラ」
カーテンが閉まっていて、暗めの部屋でもフィリアの美しい金髪と金色の瞳は光り輝いている。
「えっと、ソラ、一つ聞いていいかな?」
「いいよ?」
「えっと…………昨夜はご満足……頂けましたか?」
ふぃ、フィリアさん!? 一体何を聞いてくださるので!?
「ま、満足どころか大満足だよ! そ、それに…………」
「それに?」
「フィリアのような可愛い子がずっと俺の隣にいてくれるんだから、それだけでとても幸せだよ」
少し恥ずかしそうに「えへへ~」と笑うフィリアに、俺はもう一度恋をする。
お互いに愛を確かめ合った今だからこそ、彼女がとても愛おしい。
その時、俺は一つある事を思い付いた。
ずっと胸の奥に仕舞いこんでいたものを。
「フィリア、大事な話があるんだ」
「うん?」
「その――――――この戦いが終わったら、魔女王様に会いに行く前に―――――」
俺は緊張で高鳴る胸を必死に押し殺して続きを話した。
「俺と結婚してください」
表情が固まったフィリアは数秒全く動かない。
その刹那の時間が果てしなく長く感じる。
しかし、その返事は俺が想像していたモノとは全く違うモノだった。
何も話さず、彼女は固まった表情のままで、大きな瞳から大粒の涙を流し始めた。
「ふぃ、フィリア!?」
ただ
俺は思わず彼女を抱きしめる。
「ご、ごめん! 俺なんかが――――」
「ソラ…………」
「う、うん!」
「私なんかで……いいの?」
いつも俺の事となると、強気になる彼女なのに、こんなに力がない姿は初めてみる。
「フィリアがいい。フィリアじゃないとダメなんだ。これまでのように、これからもずっと俺と一緒にいて欲しい」
「…………うん。私……孤児だから、ソラの奥さんになれるなんて……信じられなくて……」
俺が嫌いで涙を流した訳ではない事に安堵しつつ、彼女の気持ちにもっと寄り添うべきだったと反省する。
未だ世界の孤児は地位が低い。
『銀朱の蒼穹』のメンバーの殆どが孤児でもあり、『銀朱の蒼穹』のメンバーとなっている事もあっても、孤児だと知られると今でもそのような目で見られる。
「フィリア。俺は身分とか地位とかそういうのは全く気にしないんだ。フィリアも他のメンバー達も、みんなが孤児だったとしても、僕の大切な仲間で、家族だと思ってるよ。だから、これから俺の奥さんとして、みんなと一緒に歩いて欲しい」
「……うん。ソラ。ありがとう」
「いや! むしろ受けてくれてありがとう!」
ずっと弱々しかったフィリアが、俺を強く抱きしめた。
◇
食堂に向かうと、丁度カール達も食事を取っていたので、一緒に並んで食事を取る。
これから戦いが始まるので、このような食事がいつ取れるか分からない。
「そういえば、フィリアちゃんの能力はどのくらい上がったの?」
「えっと、昨日最終段階で、アンナちゃんに教えて貰ったのは、四倍だったよ」
つまり、今までのフィリアから四倍も強くなったって事!?
お、恐ろしや…………。
これからフィリアには逆らわないようにしなければ……。
「今回の戦いで、アンナちゃんは戦力外として考えるわよ。あの力を見せる事で、人族全体を敵に回す事が懸念されるから、念のため、女王様の守りをお願いしようと思うの。そうなると『エンペラーナイト』を誰が相手するかだけど、アインハルトさんにと思ってたけど、フィリアちゃんも行けそうね!」
「うん! 任せておいて! もう
「ふふっ、何だか良い事でもあったみたいだね?」
「えへへ~」
ミリシャさんの問いにただ嬉しそうに笑うフィリア。
隣で見ていたカールが俺の肩を叩きながら、おめでとうって呟いた。
まあ……隠すつもりはないけどね。
何だかこれも親友のおかげだと思うと、自分はまだまだなんだと思い知らされる。
そんな事を思っていると、カールは「人それぞれ得意な部分がある。俺が出来ない事をソラが出来るんだから、気にしなくていいぜ」と言ってくれる。
全てお見通しという感じか……。
「ソラ様!」
食事が終わった頃、弐式のリーダー、メイリちゃんが急ぎ足で入って来た。
「相手側の出陣を確認しました」
「ありがとう。では『銀朱の蒼穹』もアクアソル王国の防衛のために出陣しよう」
「かしこまりました」
「ミリシャさん。俺達も行きましょう」
「ええ」
弐式、肆式のメンバー達は既に砦で待機してくれていて、参式は念のため王都の防衛に残って貰う。
防衛はエルロさんを主軸に、女王様は『銀朱の蒼穹』の最強でもあるアンナにお願いして、俺達は砦に急いだ。
砦に着いて、数時間。
シュランゲ道の向こうに、帝国旗が見え始め、多くの兵が現れる。
本来なら宣戦布告をするはずなのに、全くそういう素振りもなく、問答無用に進んでくるのを見ると、戦う気満々だな……。
彼らにとってアクアソル王国は弱小国だからね。
『エンペラーナイト』まで出て来た以上、負けるはずがないと思っているのかも知れないね。
帝国は降伏勧告すら告げず、アクアソル王国に剣を向けた。
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