第88話 王都活動開始

 一番急務はインペリアルナイトやエンペラーナイトと対峙出来る程の強さだ。


 ルリくん曰く、俺達全員が掛かってもエンペラーナイトに勝てたかどうかと言っていた。


 それは言いかえれば、俺達の国にいるインペリアルナイトもそうだと言える。


 特にいま危険視しなくちゃいけないのは、ハレイン様だ。


 ハレイン様は、王国と帝国の間を制圧。


 正当に掌握して、その全ての地を手に入れている。


 なので、俺達はその強さを手に入れる為に、王都にやってきた。


 それともう一つの案件もあるので、暫く王都に滞在する事となった。




 俺達は早速王都冒険者ギルドに来た。


 王都本部なだけあって、広さもレボル街支店の数倍は広いし、何より冒険者の数が多い。


 王都でこの数って事は、帝都の冒険者ギルドには一体どれだけの冒険者がいるのだろうか。


 ざっと眺めて五百人くらいの冒険者が見える。


 カウンターや張り紙も沢山あるし、休憩スペースも沢山置いてある。


 俺達はミリシャさんを先頭に、カウンターに並んでいた。


 その時。


「何だここは~ガキの遊び場じゃねぇぞ~!」


 俺達を見つめた強面のおっさんが大声を出す。


 その瞬間、フィリアが目にも止まらぬ速さで双剣を抜いて、おっさんの首にクロスさせる。


 おっさんは何が起きたかすら理解出来ないようだけど、フィリアの冷たい視線と、胸元に飾られてある『紋章』を見て顔が真っ青になる。


「ひ、ひぃい~!」


 おっさんはそのまま冒険者ギルドから走って、出て行った。


 仲間と思われる男数人も後を追いかける。


 ゆっくりと戻るフィリアに、ギルド中の視線が集まる。


 俺の肩に乗っていたラビが、フィリアの肩に乗り移ってドヤ顔をする。


 ラビってそれ好きだよな……。


「え、えっと、は、初めまして」


「初めまして、クラン『銀朱の蒼穹』と申します」


 ミリシャさんが答えると、聞き耳を立てていた多くの冒険者達から驚きの声があがる。


「ぎ、銀朱の蒼穹! あ、あの! お……お会い出来て光栄です! ミリシャ様ですよね!?」


「あら、私なんかを覚えてくれるなんて」


「ミリシャ様は冒険者ギルドの受付嬢の中では、夢のまた夢なんです! ほ、本当に光栄です!」


 目をキラキラさせている受付嬢さんに、ミリシャさんが嬉しそうに笑顔を見せる。


 握手を交わすと、相手の受付嬢が嬉しそうだ。


「これからは王都の冒険者ギルドで活動なさるのですか?」


「ええ。だから登録をしたいのでお願い出来るかしら?」


「はい! お任せください!」


 ミリシャさんと話していた時はあまり感じなかったけど、仕事の手付きは歴戦の戦士を彷彿とさせる手付きで、受付嬢さんの凄まじい手捌きが見れた。


 人って……外見だけで判断するのはやっぱり良くないな。


「はいっ。冒険者ギルドカードをお返しいたします。王都本店に登録して頂き、感謝申し上げます。これからの皆様の活躍、心から応援しています!」


「ありがとう」


 俺達も小さく会釈して、空いているスペースに座る。


 本来なら冒険者ランクというのがあり、受けられるランクが冒険者ランク以上の依頼は受けられないのだが、『クラン』ともなれば、ここに掲示されている全ての依頼を自由に受けられる。


 フィリアとカールが依頼を見回るが、俺達の本当の目的は依頼を受ける事ではない。


 冒険者ギルドから許可があれば、入れる『ダンジョン』に入る為だ。


 依頼を受けるのは、あくまでパフォーマンスでやっているに過ぎない。


 だって……うちのクランってもう稼ぐ必要が全くないからね。


「どうだった?」


「ん~素材を欲しがる依頼や護衛依頼ばかりだけど、の場所はないわね」


「そうか……ん~どうしようか」


 その時、ミリシャさんが小さく手をあげる。


「私に考えがあるから、任せて貰ってもいいかな?」


 ミリシャさんがいたずらっぽく笑顔でそう話した。




 ◇




「お疲れ様でした~」


 冒険者ギルドから何人かの女性が裏から外に出る。


 その彼女達の前を塞ぐ数人の影。


「ごめんなさいね。仕事終わったのに」


「っ!? あ、貴方様は!?」


「少しだけ時間貰ってもいいかしら?」


「勿論です!」


「ふふっ、ありがとう。確か――――セリンさんね?」


「はいっ!」


 ミリシャは冒険者ギルド受付嬢のセリンを連れて、とあるレストランに二人で入る。


「嬉しいです!」


「ふふっ、でもここに来たって事は、大体察しは付いているんでしょう?」


「勿論です」


 セリンは見た目と違って、王都冒険者ギルドの受付嬢の中では一番仕事が出来る受付嬢である。


 既にそれを見切ったミリシャだからこそ、彼女に声をかけ、彼女もそれを既に感づいていたのだ。


「王都に来たって事は、狙い目があるって事です……銀朱の蒼穹ほどのクランが来たって事は、レボルシオン領にはないモノ…………『Aランクダンジョン』が目当てなのかと」


「話が早くて助かるわ。その通りなの」


「ふふっ、良いですよ? 『Aランクダンジョン』に入れる方法」


 セリンはミリシャに秘策を授けた。


 あまりにも簡単なやり方を。

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