第40話 次に目指す場所

「あ、あの! み、ミリシャさん! 俺達のクラン『銀朱の蒼穹』に入っては貰えないでしょうか!」


 カールは冒険者ギルドの受付嬢のミリシャとレストランで食事を終えていた。


 満を持して美しい青い色に光るネックレスを前に出して、誘うカール。


 二つのネックレスがテーブルの上で光り輝く。


「カールくん…………私、カールくんよりも七つも上だよ?」


「関係ありません! 俺は…………ミリシャさんが好きなんです」


 カールの言葉に目を潤ませるミリシャ。


 可愛らしい外見に豊満なモノを持っているミリシャは、冒険者の中でも非常に人気がある受付嬢である。


 それでも、彼女を真剣に好いてくれる人は現れず、誰もが遊び半分・・・・で彼女に近づく。


 十五歳で成人を迎えるこの世界で、十八歳までに相手がいた事がないのは、珍しいパターンでもあった。


「まだ俺は成人もしていませんが、この想いは本物だと思ってます。このネックレスは俺の覚悟です」


 そのネックレスがどれほどの値打ちのものなのか、どんな意味が込められているか、ミリシャは誰よりも知っていた。


「うん……じゃあ、カールくんが成人するまでで待ってる……それでも私が良いと言うなら…………」


「っ!? では!?」


 笑顔のミリシャが答える。


「ええ、クランの件。受けるわ。これからよろしくお願いします」


 カールは声にならない声で立ち上がり、その場でガッツポーズをした。




 ◇




「ミリシャさん! いらっしゃい!」


「ソラくん――――これからよろしくお願いします。クランマネージャなら任せてください」


「はい! ミリシャさんならとても信頼できます! これからもよろしくお願いします!」


 俺はミリシャさんと握手を交わした。


 隣のカールが嬉しそうにニヤニヤしている。


 カール……顔が緩み過ぎだぞ……。




「それではこれからどうするかを考えます」


 テーブルを囲い、みんなが頷く。


「このままセグリスを拠点にするのもいいんですが、折角のクランですから、色んな場所を見て回りたいと思ってます」


「「「賛成ー!」」」


「でも俺は地理とか詳しくないので、ここは一つ、我らがマネージャ殿に意見を求めようと思います!」


「「「賛成ー!」」」


 俺達は新しく仲間になったミリシャさんに注目した。


「ごほん、新しくマネージャーになりましたミリシャです。私に戦う術はないので、知識で皆さんのサポートをさせて頂きますね。ではまず王国の事から――――――」


 ミリシャさんから俺達が住んでいる王国の説明があった。




 王国の名前は『ゼラリオン王国』。


 大陸の北側に属している王国で、西側に『ミルダン王国』がいて、仲は良好。


 ゼラリオン王国はボアを始めとする豊かな動物系統の魔物が多いので主に肉の生産で財を成している。


 ミルダン王国は森が多い為、果物や野菜が多く採れる国である。



 両国の南側には『ソグラリオン帝国』があり、大陸の中心地から栄え、大陸の半分を支配している最強国である。


 ゼラリオン王国もミルダン王国もソグラリオン帝国との仲はそれほど悪くはないが、常に好戦的な帝国にびくびくしている状況である。



 ソグラリオン帝国から東側には『魔女の森』が広がっており、王国の大きさほどの森が存在しているが、帝国すら足を踏み入れないその地は、『魔女王の国』と呼ばれている。



 帝国の南に行くと、大陸では珍しい砂漠が広がっており、太陽王と名乗る王が支配している『アポローン王国』があり、非常に交戦的な為、帝国と長年戦いを繰り広げているが、帝国は不毛の地である砂漠に未来を感じず、防戦一方である。


 しかし、アポローン王国だけが生産出来るという『太陽酒』は大陸最高の酒として有名であり、それだけでアポローン王国の財を成せるほどだ。



 帝国の西側には『エリア共和国』という国があり、五つの州によって構成されたその国はそれぞれの代表の五人によって統制される国である。


 殆どの法や決まり事は、全て代表の多数決で決められる。


 大陸の国の中で、一番貿易に力を入れている為、彼らは全ての国に太いパイプを持ち、物資だけでなく情報も集めて財を成している国である。



 最後に、帝国から最も離れた南西側に大陸で最も小さな国が一つある。


 その地は、大きな山脈に閉ざされ、唯一の道が帝国から一本だけ繋がっている国であり、その一本道でもとても遠い場所にあり、その向こうには『アクアソル王国』という国がある。


 その国の主な産業は『観光』であり、大陸随一の休暇の地として有名で、代々女王により統治されている国だが、実際は大きな街が一つあるだけの国である。




 そして、これらの国が存在しているこの大陸は『ソグラ大陸』と名付けられている。


 『ソグラ大陸』から北側、東側にそれぞれ大陸が存在するが、それはまたいずれ……。






「はい、以上が私達が住んでいる『ソグラ大陸』についてでした」


 パチパチパチパチ――


 ミリシャ先生の説明が終わり、俺達は拍手を送る。


 ミリシャさんはとても聡明で、知識豊なので、これからの俺達のクランにはかけがえのないマネージャとなるだろう。


 カールのおかげで、素晴らしい人材が入ってくれた事に感謝だ。



「色んな国を見回るのは勿論いいんだけど、最初に行くべきは、やはり私達の国『ゼラリオン王国』の首都のゼロリオン王都に行ってみるべきかしらね!」



 こうして、俺達の行く先が決まった。


 既に旅費はそれなりに用意してあるので、明日から早速馬車でゼロリオン王都を目指す事となった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る