我等、はみだしテイカーズ3!~ブーケトスの願い~
えいみー
プロローグ/前回のあらすじ
哺乳類の奇蹄目に属するその動物は、犬と並んで人類の長い歴史を支えた、よき隣人として知られている。
彼等は様々な場所で、人類と共にあった。
その強靭かつ俊敏な足は、物資の運搬に役立った。
戦争の兵器としても、騎馬兵に代表されるような活躍を果たした。
そして、今。
物資の運搬を飛行機や車や船が担い、騎馬兵が戦車や戦闘機に取って代わられた今でも、彼等は走り続けている。
そう。
瞳の先にある、ゴールだけを目指して………。
「まず飛び出したのはファイバーウイング! 続いてシックザールも好ダッシュを見せています!」
芝のターフを駆け抜ける、四脚の戦騎達。
すでに彼等が兵器の座から降りて長い年月が流れたが、その内に秘めたる闘争心は変わらない。
否、「逃走」心と言えばいいだろうか。
「先頭に立ったのはファイバーウイング! やはり逃げ、ハナを取りに行きました!」
馬群を突き放すように、一頭の白い戦騎が前をゆく。
芦毛と呼ばれる、他の毛色から色が抜けて真っ白になる毛色を持った彼は、黒から白に変色する最中で、歴代の「怪物」達を思わせる斑模様。
名を「ファイバーウイング」。
多くの馬達の中でも、「三冠」を期待されている注目の馬だ。
「しかし、後ろから猛烈な勢いで上がってくる影があるぞ? これはまさか…………?」
このまま勝てればいいのだが、現実はそうもいかない。
そもそも、これにはギャンブルの側面もあるのだ。
予定調和など、このターフには最初からない。
「シックザール!シックザールが並んできた!ファイバーウイングに迫ってゆく!!」
このレースの「穴」はファイバーウイングだけでない。
猛者はもう一頭いる。
かの三国志演技に登場する猛将の愛馬を思わせる、燃えるような真っ赤な鹿毛。
かつて一大軍団として君臨した「名家」の血を引く、紅蓮の戦騎。
名を「シックザール」。
焦熱地獄より現れた、炎の戦士だ。
来たか。
ファイバーウイングは目で言った。
来てやったぞ。
シックザールは睨み付ける事で答えた。
「最後の直線!並んだ!シックザールとファイバーウイング!互いに脚色は衰えない!!」
逃げるファイバーウイング。
食らいつくシックザール。
白と赤。
相対する二体の戦騎は、後続を大きく突き放し、一騎討ちに雪崩れ込む。
白か。
赤か。
まさに接戦。
そして。
「シックザール!!勝ったのはシックザール!!見事、二冠の栄光を手にしました!!二着はファイバーウイング!!三着に入ったのは………」
決着。
その地獄の炎は、白き翼さえも飲み込む。
真っ赤な戦騎が、新たな時代を呼ぼうとしていた。
………………
西暦1999年。
かの、ノストラダムスの予言は当たった。
突如、地球全土を覆った謎のオーロラと、磁気嵐。
それは、地球の衛星軌道上に出現した「穴」………時空の裂け目とでも言える場所から、地球に広がった「
後に「アンゴルモア・ショック」と呼ばれる大異変。
それにより、地球は変貌した。
魔力と共に地球に現れた、「モンスター」と俗称される、異世界を由来とする狂暴な不明生物達。
魔力による汚染により、異世界の環境が再現されてしまった領域「ダンジョン」。
突如現れた恐るべき「敵」により、多くの人々が犠牲になり、人類は危機に立たされた。
だが、もたらされたのは「敵」ばかりではなかった。
それから一年して、いくつかのモンスターのように、魔力を自らの力「魔法」として行使する人間が現れだしたのだ。
それはやがて人類全体に広がり、モンスターに対する対抗策として重宝された。
モンスターへの対抗策が生まれると同時に、様々な事が明らかになってきた。
それは魔力が、ダンジョン発生の媒体になる汚染物質や、魔法という超能力の元という以外に、
使い用によっては石油や原子力をも上回る、新しいエネルギー資源としての側面を持っていた事。
やがて、モンスターの討伐やダンジョンの調査。
ダンジョン内部に発生した、様々な資源の採掘を生業にする人々が現れた。
かつてのファンタジーRPGの勇者達のような活躍を見せる彼等は、いつしか「ダンジョンテイカー」………略して「テイカー」とも呼ばれるようになった。
それに続くように、テイカーの育成の為の機関や、専用の武器や防具を作る会社も生まれた。
やがて、世界の危機はイベントと仕事に変わった。
いくつかの危険度の低いダンジョンは、テイカー入門の為の訓練所や、テイカーを疑似体験する為のベンチャー施設に変わった。
恐れられていたモンスター達も何種類かは捕獲され、動物園や水族館で………厳重な注意の元ではあるが、見る事が出来る。
テイカー達も、トップクラスの者達はロックミュージシャンやトップアスリート並みの人気を博し、称賛を浴びた。
世界がモンスターに、ダンジョンに、テイカー達に熱狂していた。
………こういう物が一番好きそうな、ある国を除いて。
………………
米国のテイカーチームから追放された女、スカーレット・ヘカテリーナ。
日本の社会からのけ者の烙印を押された少年、
そんな二人のはみだし者が結成したテイカーパーティー「はみだしテイカーズ」は、二ヶ月の夏休みを利用し、各地のダンジョンを巡る旅をしていた。
そんな折、彼等が訪れたのは「あけぼの市」。
海と山に囲まれた豊かな自然。
そして町外れにある、日本では珍しいテイカー装備を修理してくれる「ゴールド重工」のある、湊町だ。
彼等があけぼの市に入った直後、彼等の前にモンスター・オークが出現。
町を守る為に応戦するはみだしテイカーズ。
しかし、スカーレットが武器・イフリートを修理に出していた事や、慣れない市街地での戦闘という事もあり、大苦戦。
しかし、そこに助っ人が現れる。
現在ゴールド重工の社長をしている
ニクスバーンの手助けもあり、はみだしテイカーズは、なんとかオークを倒す。
が、ここで問題が起きた。
オークは同族意識が強く、今回町に現れた三頭を追って、ダンジョン内に潜んでいる数十頭の群れが町に押し寄せるとの事。
そうなっては、あけぼの市はおしまいだ。
そこで立ち上がったのが、キンノスケ。
彼は猟友会や市に呼び掛け、オークから町を守る為の戦いの準備を進めた。
そして三日後。
猟師達や、イフリートの修理が終わったスカーレット。
そして、破壊された箇所を修復し、パイロットをアズマに変更したニクスバーンが、オークの群れに立ち向かう。
激戦の末、なんとかオークから町を守り抜いた。
が、喜びもつかの間。
山を突き破って、オークが地上に出てくる原因となった巨大モンスター。
ロックドラゴンこと、ロックキングが姿を現したのだ。
ロックキングはあまりに巨大で、無謀にも立ち向かったニクスバーンは、ロックキングの炎に飲まれてしまう。
絶望に暮れるスカーレット。
だが、奇跡は起きた。
ロックキングの吐き出した炎を、ニクスバーンは逆に吸収。
ロックキングと並ぶ、全高50mの巨大スーパーロボットへと変貌したのだ。
パワーアップしたニクスバーンは、ロックキングを見事撃退。
あけぼの市に平和が戻った。
そしてはみだしテイカーズも、「巨大すぎて民間企業じゃ扱い切れない」と、半ば押し付けられるかのようにニクスバーンを譲り受け、あけぼの市を後にした。
さて、次に彼等に待ち受ける冒険とは………?
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