第122話 俺、ラブコメ主人公になるんですか──!?

『第一回~、ラブコメ主人公はヒロインをみんな幸せに出来るのか選手権~』


『ちなみに企画名はさっき考えた』


「そんなフワッとした企画なんですか!?」


『だって~、思いついたのついこの前だし~。準備期間なんて全然なかったし~』


「それでも《企画屋》ですか!? 今見に来てるリスナーたちもガッカリしてますよ!?」


 ほら見ろ! 《企画屋》の企画発表配信だって言うのに、同接が7千程度だ。いつもなら最低でもこの倍ぐらいはいるじゃないか!!


「ぴょんこさんも袈裟坊主さんも、そんなんでいいんですか!?」


『いいのいいの~。なんだったら私たちが楽しみたいだけの企画だし~』


『たまにはこういう自己満足もいいな』


「それで巻き込まれるこっちの身にもなって欲しいんですが!?」


『何言ってるの~? 巻き込まれるのはラブコメ主人公の性じゃん~』


『東野。この企画はお前なしには成り立たないと言うことだ』


「それ、別に褒めてないですよね!?」


『え~、察しのいいリスナーさんは気づいてると思うけど~、この東野アズマが~、今回のラブコメ主人公です~』


「今回ってことは次回もあるんですか!?」


『お前のような逸材が見つかれば、あるいは』


「今回限りの企画にする気満々じゃないですか!」


『それは~、ラブコメ主人公は俺しかいないって宣言~? 頼もしいね~』


「違いますよ!? 誰もそんなこと言ってませんからね!?」


『じゃあ~、企画の説明に入るんだけど~』


「そんなぬるっと!?」


『もう何~? 今日のズマちゃんツッコミが激しいよ~』


「気が気じゃないですからね!!」


『今からそんなに興奮していては、ヒロインたちと絡んだら昇天してしまうぞ?』


「炎上はするかもしれませんね!? 本当に大丈夫ですか、この企画!?」


『ん~。わかんない~』


「おい──ッ!!!!」


『燃えるときは、共に逝こうぞ』


「嫌ですよ!?」


 あ~、マジで断ればよかった~。

 でもなあ、しょうがないよなぁ。

 あの2人がことのほか乗り気だったからなぁ。

 あ~、不安だ。マジで不安だ。大丈夫かこんな企画して。燃えるぞワンチャン。


『えっと~、それじゃあ企画説明に戻るけど~。ここにいるズマちゃんには~、とある女性VTuberたちと~、この企画専用の《てぇてぇチャンネル》を開設してもらいます~。そして~、そこで《てぇてぇ配信》をして~、チャンネル登録者数を伸ばして貰います~』


 はい? 《てぇてぇチャンネル》? 《てぇてぇ配信》?

 なんですかそれは……?

 俺はただ『仲のいい女性VTuberと配信をするだけ』としか聞いてないんだけど!?

 ていうか大丈夫!?

 何が燃焼材になるかわからないVTuber界隈で、こんなあからさまに男女関係をウリにした企画なんて、本当に大丈夫なんですか──ッ!?


『お~、みんな乗り気だね~』


『東野にラブコメ主人公役をやらせるというその意味を、リスナーたちもよく理解しているようだ』


 え?

 それってどういう、って──!?


『待ってましたー!!』

『つまりそれって!?』

『ありがとうございますありがとうございますありがとうございます』

『てぇてぇの波動浴び放題ってことか!?』

『相手はもちろん……、だよね?』


 あ、意外と乗り気だ。

 え、いいの!? 本当にいいの!?

 だってよく燃えてるじゃん!! 男女のてぇてぇとか色々言われてるよ!?

 エゴサするとすっごい出てくるの、俺知ってるよ!?


『では~、配信形式を発表します~』


『東野が《てぇてぇチャンネル》で《てぇてぇ配信》をするときは、俺たちのチャンネルでミラー配信をする。そして東野のラブコメ主人公ムーブに好き放題にツッコミを入れる』


「最低だ!! え、ていうか、それ初めて聞いたんですけど!?」


『言ったら断られるかな~って思ったから~、秘密にしてたの~』


「本当に最低ですね!? 楽しいですか、そんなことして!」


『きっといつもより美味しいお酒が飲めると思うんだよね~』


「人の恋路を肴にしないでくれません!?」


『さらに配信を盛り上げるための要素を用意した』


「何をさせる気ですか!?」


『心配するな。ある意味これは東野のためのシステムだ』


『そうそう~、ズマちゃんのラブコメを盛り上げるためだから~、安心してね~』


「絶対あなたたちが楽しむためのシステムですよね!?」


 100%ろくでもないものに決まってる!

 ていうか待って!

 そんなシステムがあるのも初耳なんですけど!?


『システムは全部で3つある』


「3つも!?」


『も~、企画説明中なんだから~、ズマちゃんはちょっと黙ってて~』


「俺が主役の企画なのに!? って、あ!? マジですか!?」


 ミュートにされた!? マジで!?


『3つのシステムは全てラブコメ主人公にちなんだものになっている。そうだな、イメージとしてはラブコメ主人公ならではのスキルといったところから。スキル1は《完全スルー》。スキル2は《お助け親友キャラ》。そしてスキル3は《選択肢》だ』


 なんだ? なんだって?

 なんなんだその3つのスキルは!?

 説明を! 説明を求める!!


『この企画を急に始めたのも~、このシステムを思いついちゃったからなんだよね~。長い企画屋をやってたけど~、このシステムを思いついた時ほど天才だと思ったことはないよね~』


 感想はいいから説明をはよ!!


『スキル1の《完全スルー》は、いわゆる難聴系ラブコメ主人公に由来するものだ。一回の《てぇてぇ配信》中に一度だけ『え、なんだって?』と言うことで、その時ヒロインが言ったどんな言葉もなかったことに出来るという、究極のディフェンススキルだ』


 おお?

 なんかちょっとゲームっぽくて面白い。

 って、感心してる場合じゃないよな、俺!?


『スキル2の《お助け親友キャラ》は、いわゆるラブコメによくいる親友キャラに由来するものだ。一回の《てぇてぇ配信》中に三度、俺たち《企画屋》のチャンネルでミラー配信を見ている親友役のVTuberに助言を求めることが出来る。ミラー配信をしようと決めたのも、このシステムを思いついたからだな』


 嘘だ!! ダウトだ!!

 最初は絶対に自分たちが楽しむためにミラー配信しようって決めただろ!?

 ていうか待って!? これってつまり、ミラー配信を見る人が増えるってこと!?


『そしてスキル3の《選択肢》は、いわゆるギャルゲーなどによくあるシステムに由来するものだ。《てぇてぇ配信》が終った後にリスナーにアンケートを取り、次の《てぇてぇ配信》で何をするかを決めてもらうと言うものだ』


 は!?

 ちょっと待て待て待て!!

 それはちょっと待て!!


『袈裟坊主~、ズマちゃんからチャット来てる~』


『ふむ。確かに東野の指摘はその通りだな。今、東野からはチャットで『変な選択肢を選ばれたらどうするんですか!?』と送られてきた。だが安心しろ。東野、選択肢を用意するのは、お前だ』


 は?

 え、今なんて……?


『その回の《てぇてぇ配信》を終えた後に、どうすればラブコメ主人公としてヒロインを幸せに、つまりは《てぇてぇチャンネル》の登録者数を伸ばせるかお前が考えて、お前がツイッターのアンケート機能を使ってリスナーに《選択肢》を提示するのだ。そして、その中で最も投票数が多かった《選択肢》を次の配信で行うのだ。それがスキル3《選択肢》だ』


 ふぅ、それなら安心だな。よかった。

 リスナーが用意した《選択肢》に従って配信をしたんじゃ、収拾がつかないし、過激な内容ばかりの選択肢になったらどうしようかと思った。

 つまり、俺自身が無難な《選択肢》を用意すればそれでいいってことだな。

 いやぁ、焦った焦った。よかったぁ。さすがに《企画屋》だし、そこまでバカじゃないよな。安心安心。


『みんな《選択肢》には注目してね~。ラブコメ主人公であるズマちゃんが考えたデートプランってことだからね~』


 変な意味付けをするんじゃない!!

 今の一言で全く安心できなくなったんですけど!?


『と言うことで、以上が今回の企画の概要だ。東野にはラブコメ主人公として、自らが考えた配信内容で《てぇてぇ配信》を行い、《てぇてぇチャンネル》のチャンネル登録者数を伸ばして、ヒロインを幸せにしてもらう』


「『してもらう』じゃないんですが!? 今初めて聞いた内容が目白押しなんですが!?」


『戻ってきたのか』


『めちゃくちゃチャットが送られてきてて鬱陶しかったからね~。言いたいことがあるならどうぞ~』


「こんな企画をするなんて、正気ですか!?」


『『え、なんだって?』』


「究極のディフェンススキル──ッ!? って、そんなんでスルー出来ると思ってるんですか!?」


『では最後に、今回の企画に参加してもらうヒロインたちを紹介しよう』


「スルー!? え、本当に究極のディフェンススキルじゃないですか!!」


『ズマちゃん~? あんまりうるさいと、またミュートにするよ~?』


「あ、はい。すみません」


 怖かった……。今のぴょんこさんは、いつもより圧があって怖かった……。

 って、待て!

 いつの間にか同接数が2万越えてるんだけど!?

 どっから現れた!? 噂が広まるの早すぎない!?

 そんなに注目しないでくれ!!


『今回、ヒロインは2人いる。それぞれで《てぇてぇチャンネル》を開設し、東野と一緒に《てぇてぇ配信》を行ってもらう』


『ん~、さすがにリスナーたちは~、ヒロインの予想がついてるみたいだね~。その通り~、正解だよ~。ヒロイン1人目は~、東野アズマとのてぇてぇと言えばこの人~、安芸ナキア~』


 うっわ、コメント欄の反応エグ!?

 全然目で追.えないんだけど!?

 盛り上がり過ぎでしょ!! こんなんじゃ今更やめるなんて言えないじゃん!!


『ちょっとぴょんこ。私はズマっちと一緒に配信してもらうってことしか聞いていないのだけれど?』


『? 言った通りでしょ~? ズマちゃんと一緒に配信してもらうだけだよ~』


『そうだけどそうじゃないじゃない!! 何よ《てぇてぇ配信》って!! 聞いてないわよ、そんなの!!』


『では2人目の紹介だな』


『無視してるんじゃないわよ、このクソ坊主!! 聞きなさいって!! 何よ《てぇてぇ配信》って!! 説明を求めるわ!!』


『『え、なんだって?』』


 出たよ、究極のディフェンススキル……。

 ダメだ。ぴょんこさんも袈裟坊主さんも、今日はこれで押し通す気だ。


『ヒロイン2人目は~、ズマちゃんの男を磨いて実は良妻なんじゃと噂されているこの娘~。アマリリス・カレンちゃん~』


『……』


『あれ~? カレンちゃんどうしたの~? お~い』


 ……カレンちゃん?


『ど』


『ど~?』


『どうしたもこうしたもないですよ!! こんな企画なんて聞いてないですよ!? アズマさんと、て、《てぇてぇ配信》ってなんですか!? せ、説明してください!!』


 あ、カレンちゃんその流れは……。


『『え、なんだって?』』


 ああ、うん。ですよね。


『役者が揃ったな』


『配信が楽しみだね~』


「いや、その前に説明をしてください!!」


『そうよ。説明を求めるわ!!』


『そうですそうです。わたしたちに説明をください!!』


『『え、なんだって?』』


「もういいですってそれは──ッ!!」


『では、今日の配信はここまでということで』


『終わろうとしてんじゃないわよ!!』


『ちなみに~、それぞれの《てぇてぇ配信》1回目は~、《てぇてぇチャンネル》の名前を決めてもらうよ~。その回だけは私たちのチャンネルで配信するからよろしく~』


『配信内容も決まってる!? もう止まる気はないんでしょうか!?』


『《企画屋》に後退の二文字はない』


『前進あるのみ~。ゴ~ゴ~』


 この配信を見ていたからだろうか。エイガと英さんから『またお前だけ』とチャットが来ていた……。

 俺もこんな企画だって知らなかったんだよ!! 信じてくれって!!


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読者の皆様へ


藤宮です。いつもお読みいただきありがとうございます。

作中の雰囲気を少しでも楽しんでいただければと思い、

今回登場した『配信後の《選択肢》』を実際に行ってみます。

下記、藤宮のツイッターアカウントにアンケートを設置しますので、

よろしければご参加いただき、作品をより楽しんでいただければと思います。

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◎藤宮カズキ ツイッターアカウント

https://twitter.com/fujima0102

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※お試しに、この話数を投稿した後に実際にアンケートを設置します。

 なんかあったらやめる可能性もあるので、その辺りはご承知おきください。

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◎アンケートURL

https://twitter.com/fujima0102/status/1589101070772756482

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まだまだ拙いところも多くありますが、

引き続きお楽しみいただけると幸いです。


藤宮カズキ

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