決断と回想

「で、だ。二人のどちらかに泥を払って欲しいんだ。」

僕は二人にどちらが泥を振り払うかを尋ねた。

「自分が飲み込まれる……リスクもあるんだよね?自分が飲み込まれるかもっていう……。」

「そうだな……。」

「なら、私がいく。」

「いいのか?ラーイーダ。」

「まだマイは若いから。私なら何かあっても大丈夫。」

そう言うラーイーダの目は決断の意がはっきりと見えた。

しかし、マイはまだ納得がいっていないようだった。

「でも……、でも……!ラーイーダさんはいいんですか!?人生を投げ出してまで……!二人で行った方がお互いを守れるかもですし私も……!」

「いや、いいよ。だって、それで命を落としたら惜しいじゃん。それに……。」

その後でラーイーダが何やらマイに耳打ちをした後で少しマイの顔が赤くなったように見えたがその後でマイはゆっくりと頷き、了承していた。

「じゃあ、行ってくるよ。できる限り生きて帰ってこれるように尽くすよ。」

そう言ってラーイーダは泥に向けて駆け出す。

途中にいるスケルトン兵士を跳ね除け、泥に向けて走っていく。

ただひたすら一直線に盾を構えて走っていく。

目標も、願いも、この先の自分の未来も、全てを投げ出してでも止めてやる。

彼女は走り出す前にそう言っていた。

「そっか……。全てを、捨ててでも……か。それは僕にはない考えだったなぁ……。」

僕は今までどうにかしてでも生き残ろうとしていた自分を思い返していた。

何かと危険を避けよう。何とか生きて帰ろう。そういう考えばっかを僕は今まで戦いの中で少しでも思っていた。

でも、もう違う。

今はそれどころではない。自分を犠牲にしてでも、自分がいなくなっても。それで未来が変わるなら一歩を踏み出せる。

そんな気がした。

深く息を吸って、吐く。

ラーイーダが今、盾で泥を跳ね飛ばした。

その払い除けられた泥の間にできた僅かな隙間に僕は駆け込む。

そして、

後ろからまた泥が元に戻り覆い被さっていく。

でも、僕には追いつかない。

アウグイドに一直線に向かう。

「なっ!?いつの間に……!」

僕はアウグイドが弱点を魔法に反転させる前に叩き落とそうとそのまま剣を投げつける。

すぐに場所を移動させ、後ろからも剣を突き刺す。

「今だ!ダイスケさん!弾丸をこっちに!」

アウグイドが剣を引き抜き、再生をしている。

その隙に魔族用弾丸を打ち込むことでその機能ごと停止させて一気に畳みかける作戦だ。

「よし……!効いてるぞ!そのまま弾丸を撃ち込み続けてくれ!」

そのまま僕は身動きの取れなくなっているアウグイドの心臓目がけて剣を差し込む。

「はぁ……。これで……よし……。」

アウグイドが倒れ、魔石と能力、それから二人が解放されて出てきたのを確認したところで僕は急に足から力が抜けてその場に倒れ込んだ。

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