緊急レイド

「マイおはよう。」

「あっ、おはようございます!」

朝から元気だなぁ……こいつ。 

そんなことを思いながら僕たちは宿の食堂へ向かう。

食事をしてる途中でマイがこんなことを言い出した。

「そういえば私、ギルドのクエストとかやったことないんですよね……!特にレイド系とかは未経験なんですよ……」

「レイドは僕もやったことはないなぁ……」

「えっ!?」っとマイが少し大きな声を出す。

「えっ、じゃあ……キンググリーンスライムをハルくんまさか一人で……!?」

「うん。そうだけど……」

「えぇぇぇぇ!?す、すごくない!?それ!あのキンググリーンスライム放っておいたらグリーンスライムを大量に体内に溜め込んで行って街に放出するの。」

あいつそんな恐ろしいやつだったんか……

「普通だったら討伐隊が作られて行くくらいだからね?そりゃあギルドの人にも驚かれるわけか!」

いや、あのー……一人で納得されても……

そんなことを考えていても当の本人は「あっこのサラダおいしい!」などと普通にしている。

「じゃあ試しにギルドでクエスト受けてみるか?」と聞いてみる。

「もちろん!」と笑顔で返される。

「なんだよこいつ……結構かわいいところあるな……」と小声で呟く。

「なんか言った?」

「いいや。何も。」

そう言って誤魔化せてるかはわからない。

マイはただ普通にこっちを見ている。

「食事も終わったしギルド行ってみませんか?」

その言葉でハッと考えることを中断させ、ギルドへ向かう。

そして、ギルドに着いた時に少しいつもと違う気がした。

「ん?なんかいつもと違う気がしないか……?」

「確かに人が多い気がしますね……」

なんとか人混みを押し退けてギルドの中へ入る。

すると受付の人が「ハルさん!いいところに来てくれました!こちらへ!!あっ、付き添いの方もどうぞ!」

僕たちはそんな訳で今、ギルドの商談室にいる。

商談室のドアが開き、ガルディーヌギルド長がやってきた。

「久しぶりだねハルくん。それから、初めまして。盾使いさん。名前だけ聞いてもいいかな?」

「マイです。」

「マイか。よし、覚えたぞ。二人に私からお願いがある。」

「なんですか?」

「実は……ここから少し離れた街でドラゴンの大群が現れたらしいんだ。幸い住民は地下の避難所に避難したから死人はいないのだが……」

「なるほど。討伐に行ってほしいということですね!」マイはなぜかとてもノリノリだ。

「そうだ。物分かりが早くて助かる。しかし、二人だけでは危険だろう?他の実績のある冒険者も何人か呼ぶことにしている。」

「なるほど……」

「それで、引き受けてくれるかね?」

「もちろんです。」

「やります!」

「おぉ、それはありがたい。武器と素材も必要だろう?この資金を使ってくれ。」

「い、いいんですか!?」

「あぁ、いいとも。」

「私の盾修理したかったし丁度いいや!」

「有効に活用してくれるならどのように使ってくれてもいいぞ。」

「「ありがとうございます!」」

と、言うわけで僕たちはライマルクさんの店へ向かっている。

マイの盾を新調するついでにこの決闘の時に使ったレシーバーがどこの範囲まで使えるのか聞きたいのだ。

「おっ!ハルくんじゃないか!今日はなんの用だい?」

「こいつの盾を直してほしいってのとあと質問が一つある。」

「あぁ!わかった!要望も聞きたいから中に来てくれ。」

ライマルクさんは僕たちを中へと呼ぶとマイの盾の要望を聞き始めた。

「どんな風に修理してほしいんだ?」

「なるべく軽めで防御力が高いのがいいです。」

「わかった。スキルと連動して動くのは必要か?」

「お願いします!」

「どんなスキルだい?」

「えっと……自分の今日できる範囲までの攻撃なら跳ね返せる反射っていうスキルです!」

「これまた面白いスキルだなぁ!よし分かった!じゃあここをこうしようか……」

そんなことを言いながらライマルクさんは作業を始めた。

「んで、あとハル君の質問に答えないとだね。質問ってなんだい?」

「実は……」と言って遠征の話をする。

「あー……なるほどなぁ……それはきついかもしれないなぁ」

「やっぱりか……」僕は頭を抱えてしまった。だってこのレシーバーがないと満足に武器も作れないんだもの。

「でも、あんまり使いたくないが、1つだけ手立てはあるぞ。」

「何ですか……?」

「私のスキルで輸送用の使い魔を出すことだ。」

「それに何の問題があるんですか……?」

「他の人からは敵としか見られないような鳥とかそこらへんがよく召喚すると出てくるんだよ……」

「僕が何とか言いくるめるから頼む……」

「分かった……そこまで言うなら……これの修理が終わったら案内するよ。」

ひとまずこの盾ができないことには何も始まらない。

「ほら、これでどうだ?」

「見た目変わらないけど何か変わったのか?」

「こっちでためそう。試しにスキル使ってみてくれ。マイちゃん。」

外の少し広い訓練場のようなところで僕とマイは盾がどのように変わったか確認しようとしている。

「あっ、はい!『反射』!」

すると、盾の前に薄い壁のようなものが貼られた。

「なにこれ!?」マイが驚いた顔をしながら言う。

「これは負荷軽減シールドだ。」

「負荷軽減……つまり、反射できる量が少し増えたって訳か?」

「そう言うことだ。そんでしかもこのシールドは自動で耐久値が回復するようになっている。」

「おぉ!すげぇ!これなら大丈夫だな!」

「頑張ってな!応援してるぞ!そんでまた、勝ったらこっちに来て自慢してくれよ!」

「わかった。」

「じゃあ後は運搬用の使い魔を召喚するだけだな。どんなのが出ても知らないぞ?」

「覚悟はできてるよ。」

僕とマイはライマルクさんが地面に魔法陣を書くのをじっと見ていた。





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