期待外れのスキル
馬車は草原を物凄いスピードで走る。
その馬車の中で一日ぶりに食事にありついた僕は至福の時間を過ごしていた。
「その感じだと、しばらく食事にありつけていなかったようだな。大変だったな。」
ウェイアンさんはそう言ってパンを僕にくれた。
「ウェイアン!そろそろまた山賊モンスターエリアに入るぞ!」
「おっとそうだった。スキルオープン。キューブよ我々を隠してくれ。」
そうウェイアンさんが言うとキューブが眩しい光を放った。
「これは、成功してるんですか?何も変わってないように見えますけど……」
本当に隠せているのだろうか?馬車も自分からは見えている。
「あぁ。これかい?これはレベル5以下の全ての生物がこの馬車を見えないようにするスキルだ。君もだからこの馬車にぶつかったのさ。」
なるほど。と答えようとしたとき、上の布に何かが乗っかる音がした。
「今日もかよ!ウェイアン!そこの坊やを守っておいて!スキルオープン。ブレイクビーム!」
そう言ってジュデボラは屋根の上に上がっていった。
「もしかしてあれってレベル5以上のモンスターですか?」
「あぁ。上にいるのはバーンモンキーって奴だ。ここの草原だと一番強いLv10だ。魔術師特攻型じゃないといいんだけどな……」
「ということは物理特攻型も?」
「もちろんいるさ。」
「ウェイアン!今回ばかりは運が悪すぎる!魔術師特攻型だ!」
「今日はついてないな……ここで死ぬしかないのか?せっかくレアアイテムもゲットしたのによ……」
「時間、稼げますか?」僕はそうつぶやいた。
「は?」二人は揃って声を出す。そりゃそうだ。急にこんなこと言ったらそうなるよな……
「時間さえ稼いでくれれば、スキルで武器を作ります。」
「わかった。俺が引き受けよう。どのくらい稼げばいい?」
「30秒でいいです!ジュデボラさんは剣の素材になりそうなものを下さい!」
「分かった!」二人はそれぞれ動き始めた。
ウェイアンさんは上でひたすらに攻撃を避けてくれている。
ジュデボラさんが持ってきてくれた素材は十分すぎるものだった。
「これならいけます!スキルオープン!マルタの剣を精製!」
――――――――――――――――――――――――
マルタの剣 レア度 ★★★★
昔、とある村で大蛇が出たときに退治に使った剣。
切れ味はトップクラス。
――――――――――――――――――――――――
昔読んだライトノベルで出てきた剣を作る。
これなら硬い敵でもある程度は切れるはずだ。
「そろそろ避けるのも体力の限界だ!武器はできたか!?」
「今できました!受け取ってください!」
そう言って僕は屋根の上に向かって剣を投げた。
「おいおい……負担増やすなよ……まぁ、いいけどな!おらぁ!」
その僅か数秒後に屋根に赤い染色がされた。
「おいおい!すげぇなこの剣!切れ味がめちゃくちゃよかったぜ!ほら、これ、お前に返すぜ。」
「いいんですか?ありがとうございます!」
「そういえばさ、名前聞いてなかったね。名前はなんていうんだい?」
名前……そういえば考えていなかった。もうこの際、それっぽいのでいっか。
「ハルって言います。精製っていうスキル持ちです。」
「ハルね。おっけー覚えた。一応分かてるとは思うけど私はジュデボラ。魔術師やってんだ。」
「んじゃ、俺も一応。ウェイアンだ。
「二人ともよろしくお願いします!」
「うん、よろしく。そろそろ街につくだろうし荷物を整理しようか。」
「そうだな。まぁ、ハルから貰ったアイテムボックスに入れるだけだけどな!」
「因みに、さっき言ってたリーダーってどんな人なんですか……?」
「うーん……一言で言うなら君と同じスキル……いや、似たスキルと言ったほうがいいね。」
「と、言うと……?」
「うちらのリーダーは『
「そうなんですね!でもそれなら僕はいらないのでは……?」
「いや、アイテムさえあれば作れる君のほうが強いからね……上位役職ってやつかもしれないね。私達はドロップアイテムを集める時間が必要だったからね。」
「だから俺らはお前をボスのもとに連れていきたいんだ。二人のスキルを合わせたら最強だからな。」
「なるほど……」
文字違いの生成。そのスキルが後で争いのもとになったと考えるとしっかり説明しておけば良かったと今更ながら後悔している……
その後、街に入ると僕はギルドに連れてこさせられた。
そこのギルドは宿舎一体型で、連れてこさせられたのは角部屋。相当大きな力を持つパーティーのようだ。
「リーダー。ただ今戻りました。」
「おぉ、よく戻った!それで……そこの男の子はどうしたんだ……?」
「あ、そうそう!この子はねハルって子。ガスパオロ……君のスキルと合わせれば相当強いよ。」
「なるほど……私はガスパオロ。このクラン『
「ハルです。よろしくお願いします。」
「よろしく。それで、ジュデボラ。なんで強いと確信が持てる?」
「リーダーの言っていたアイテムから生成する方の生成を見つけました。」
「なんと……!?一番のお宝をゲットしてきたな!お前ら!」そう言ってガスパオロはこちらに歩いてきた。そして、「武器とかならほぼ何でも作れるのか……?」と聞かれた。
「まぁ……一応……」
「よし!採用!お前はこのクランに入るにふさわしい人材とする!」
「良かったじゃないか。ハル。私達はパーティーランキング1位だからね。そんなところのリーダーに認められるんだ。すごいことだよ。」
「ありがとうございます……!」
「早速ですまないが明日からダンジョンに行くことになっててな。そこで新人試験も兼ねよう。多分そこで今日はいないシールダーのラーイーダにも会えるはずだ。今日はとりあえずここの空き部屋を使ってくれ。寝具と棚もあるから好きに使ってくれ。」
その日は日中だというのに疲れが溜まっているのかそのままベッドで寝てしまい、次の日を迎えた……。
そして次の日、僕達はとある洞窟の前にいた。
「とりあえずお前には今朝経験値獲得アップボトルを使ったから、すぐに俺たちのレベルに追いつくはずだ。素材を見つけたらお前に渡すから、それで武器を作って欲しい。」
「分かりました。」
「あと、倒したモンスターのドロップアイテムも見せてくれ。切りさばき方も大事な判断点の一つだからな。」
その後、僕は一人でガスパオロさんから借りたツルハシなどで鉱石のかけらを大量に集めていた。
「この種類の鉱石を大量に集めれば確か真の勇者シリーズの武器・防具一式が作れたはずだ……」
そして、指定の時間まで素材を集め、戻ると大量の鉱石や、素材が渡された。
「これがノーマルアイテムか……」
初めて見るノーマルアイテムに自分は一人でびっくりしていた。
「このくらいあればいいのが作れるか?」
「はい!一番合う武器をそれぞれに作りますね!」
「あ、そうだそうだ。ドロップアイテムを見せてくれ。」
「これです……」渡したのはスライムの粘液。
ゴミ中のゴミドロップだ。鉱石エリアにはスライムしかいなかったのでこれしか渡せなかった。
ガスパオロさんの顔が曇る。
「分かった。とりあえず武器を作れ。」
そして、武器を作ったあとからがもっと地獄だった。
スキルに従うままに『個人カスタマイズモード』を使ったのが間違いだったかもしれない。
できたのは星4・5の武器ばっかりで、レア武器なんか一つもなかった。
そしてそれを受け取ったリーダーが怒り散らして今日に至るというわけだ。
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