第170話 ダルタスに届いた招待状

 結婚式も終え、その後の事件も落ち着き、ようやく普通の?生活にも慣れてきたころである。

 一通の招待状がダルタス宛に届いた。


「同窓会の招待状?」ルミアーナがダルタスに尋ねる。


「ああ、騎士学科時代のな…」


「ひょっとして…あのクンテ・ダートも…?」


「あいつは、これないさ。さすがに国外追放の身の上じゃあな…。まぁ一緒にいたツェンは来るだろうが」


「へぇ?で、ダルタス様、行くのですか?」


「そうだな…。やっと最近、溜まっていた仕事も一段落して休みも取れるようになってきたし。ルミアーナは、どうする?」


「え?ついてっても良いのですか?」


「そうだな、結婚していない者はともかく結婚している者はほとんどがパートナー連れでの出席だな」


「へぇ?変わってる」


「そうか?普通だぞ?」


 そうか、この国ではそれが普通なんだ?とルミアーナは思った。


「皆、ご自慢のパートナーを自慢したいんだろう」


「ダルタス様のお邪魔にならないのなら勿論一緒にいきたいわ 」


「じゃあ、決まりだ!日程は今週末、場所は郊外にある学園の近くだ」


「まぁ、じゃあネルデア様のお屋敷の近くね?せっかくだしネルデア様のところへ泊りで行くのはどうかしら?久しぶりにネルデア様にお会いしたいし!」


「あ、ああ、ルミアーナがいいなら訪ねてみるか?」


 少しひるんだ様子のダルタスを不思議に思ってルミアーナが訪ねる。


「あら、ダルタス様はご自分のお母様に会いたくないの?」


「いや、会いたくないとかそう言う事ではないが…ずっと離れて暮らしていたし、どう接していいかわからないというか…」


 そう、ダルタスは母が自分の為に出て行った事までは知らないし、自分が行くことで母が喜ぶとは思っていないのだ。

 そして大人になった自分も母が恋しいというほどの気持ちは正直なかったので戸惑っていた。

 今さらどう向き合えばよいのか…。


「ふぅん?普通に母上って呼んで普通に泊めてって言えばいいんじゃない?騎士見習いにも訓練場を開放して、行きずりの騎士を泊めてくださる位だから私達が急に行っても、きっと歓迎して下さるわ」


 あっけらかんと言うルミアーナにダルタスは、拍子抜けした。

 そして、じつに明快で簡単なことのように言うルミアーナを頼もしく思った。


「う~ん、そうだな。お前がそう言うのなら…」


「うふふ…楽しみね!色々と…」


 ルミアーナと話していると物事が実に簡単で単純明快に思えてくる。

 悩んでいるのも馬鹿らしい。

 そう思うと確かになんだか、楽しみに思えて来る。


 同窓会も母との再会も…、

「ああ、そうだな」とダルタスは笑顔で答えた。

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