第127話 その夜、閉ざされた記憶が開かれて-02

 仁は帰ってからもずっと今日の昼間の大悟の告白の事を考えていた。

 従姉の亮子が言うには完璧な片思いだし美羽が大悟に懸想する心配はだろうから、告白だけさせてやってほしいと言われた。

 仁は「冗談じゃない!」とすぐさま美羽を車に連れ戻そうとしたが亮子にとにかく五分だけ待ってやってほしいと言われた。


「あいつは根はいい奴だから、ちゃんと告白してちゃんと振られさせてあげてほしい」というのだ。


 そんな亮子の何故か真剣な頼みに仁は逆らえなかった。

 ここのところ美羽のことで世話になりっぱなしだった事もあったからだ。

 こめかみに青筋をたてながらも何とか五分きっかりは待った。


 だが、そのたった五分ですら仁には耐え難い時間だった!


「何かあったら、どうする!」そんな心配と焼け焦げるような胸の痛みに苛まれた。


 そして、直ぐ様車から出て美羽に危険がないよう耳をすませながら待つこと五分、いや、四分五十五秒で、歩き出して五分きっかりに側に行き声をかけたのだった。


 仁は思った。


 あの時、美羽ははっきりとあいつの告白を断っていた。

 それは、良かったが、これからもあんな輩は増えるだろうと心配で堪らない。


 あの後、何となく気まずい雰囲気で美羽とあまり話せなかった。

 心なしか美羽も元気がなくて声をかけづらかったのだ。


 やはり、帰るのをせかしたりしなければ良かったのだろうかとも思うが、あんな頼りなさそうな奴に大事な美羽を任せられるか!と頭を振った。


 そして、『美羽を幸せにするのは自分だ!』という思いをより強くしたのだった。


 ***


 そしてその頃、美羽もあれこれと考えを巡らせていた。


 すべてとは言わないが美羽の物ごころついたであろう頃からの記憶が戻った美羽は、その事を仁や家族にどう伝えようかと悩んでいた。


 記憶もそうだが、仁や家族たちのあれこれをルミアーナが見せてくれたことで自分が仁と両想いであろう事も分かっている。


 今日、仁が不機嫌だったのも純粋に自分を案じてくれたのもあるが、どうやら嫉妬もしてくれていたようだ。


 そう考えると今度は何やら、嬉しくも恥ずかしくなってどうしようと悶々と悩んでいる。

(でも、まぁ今までの悩みと比べれば随分と幸せな悩みなのだが)


 そして、美羽は思った。


 とりあえず、泣き疲れたし今日はもう寝よう。


 そして明日に備えるのだ。

 問題を先送りするのはこちらの美羽の悪い癖かもしれないが元々のこちらでの美羽の記憶も受け入れた美羽は随分と強気になって来ていた。


 恥ずかしいが明日は…明日こそは自分から仁に告白しようと思っている。


 何て言おう…。

 そんな事を考えながら眠りについたのだった。

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