第30話 両親の心配

「それで、結局、私達の娘はどうしたいというのだ!」とアークフィル公爵は頭をかかえ呻いていた。


「そうですわね、でもあの結婚の申込みはダルタス様も良くなかったですわよ。庇うわけではありませんが、恋する乙女はちょっとした言葉尻にも不安を感じてしまうものですわ。なのにだなんて言い方をされては…」と、母のルミネが、残念そうに答える。


「言い方など!ダルタス将軍が、ルミアーナの事を大事に思っているのは明らかじゃないか!それにダルタス将軍が、責任だけじゃないと言いかけたのを婚約破棄だ!」


「あれは…意図的でしたわよね!」


「おまえも、そう思うか?」


「ええ、絶対ですわ!王太子様のせいで受けた傷もすっかり癒えたというのに、未だにルミアーナを帰して下さらないのが良い証拠ですわ!」


「それどころか、ルミアーナが強くなりたいからといって騎士団に入ることをお許しにになったかと思えば、それにルーク王子様を一緒にさせるなんて、どう考えてもルーク王子とくっつけようとしているとしか思えませんしねぇ」とため息をつく。


「ううう、まあ、ルミアーナがルーク王子を好きになるならそれも仕方がないが、結婚は拒んだもののどう考えてもルミアーナが慕っているのはダルタス将軍だと思うのだがどうなのだ?」


「ええ!貴方、それは間違いないと思いますわ!ルミアーナは、ダルタス様が自分を好きではないと誤解してしまったから…好きだからこそ、それが悲しくて結婚を拒んだのですわ!」


「わからん、好きなら結婚を承諾すれば良かっただけだろう?」


「まあ、それは、…殿方には、わかりづらいものかもしれませんが、せつない乙女心というものですわ。今ごろルミアーナ自身も後悔しているのかも…ああ、不憫ですわ」


「むぅぅ…しかし、ルミアーナめ騎士団になんぞ入ってしまって…しかも男として…まあ、なまじ女とわかっているよりは安全かとは思うが…」


「すっかり陛下らにしてやられましたわね…」と、深い深いため息をつく父母であった。


 自分達の娘を嫁にやった訳でもないのに横取りされてしまったようなやりきれない気持ちである。


 でも、とりあえず国王陛下夫妻もルミアーナが可愛くて仕方がないようで、無理強いをして嫌われるような事はしたくないとみえる。


 騎士団に入ることになったのも本人たっての希望のようだし、ルーク王子も穏やかな人柄でルミアーナの意思を無視して無体を働くような人物ではないようなので、ひとまず様子をみるしかないとアークフィル公爵夫妻は肩を落とすのだった。

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