第121話

 ローオス帝国内戦。第二皇子と第七皇子、この二人の戦い。

 最初は入念な準備をこなしてから戦いに挑み、不意打ちをしかけた第二王子が優勢だったが、流石は武勇に秀でる第七皇子とでも言おうか。途中から盛り返し、今では形勢が逆転していた。

 つい先程起きた第二皇子と第七皇子の直接対決でも第七皇子の勝利として幕が下ろされた。

 

 僕は、イグニス公爵家当主ガイアとして、勝利した第七皇子の陣地へと向かっていた。


 パチパチパチパチ

 

 僕は惜しみない拍手を送りながらゆっくりと陣地の方へと近づいていく。


「やぁ。諸君。さっきは素晴らしい戦いだったよ」

 

 いきなり近づいてくる僕に周りの兵士たちは槍の穂を向けようとする。

 

「け、敬礼!」


 だが、それよりも前に指揮官と思われる男が声を張り上げ、命令を下す。


「ガイア公爵……!?な、何故」

 

 指揮官と思われる男は慌てて、兵士たちに敬礼を命じた後にすぐに何処かへと向かってしまう。


「ふむ」

 

 実に統制のとれた軍だ。

 兵士たちは皆何が何だがわからないだろうけど、大人しく命令を聞いて敬礼している。

 僕はこの場に氷で玉座を作り、座っている。

 しばらく待っていると豪華な鎧をつけた大男が近づいてくる。

 兜を被っていないおかげで顔がしっかりと見える近づいてきている男は第七皇子だろう。

 

「何用だ?」

 

 第七皇子は僕の前へと立ち、僕を見下ろす。


「あぁ、用だな」

 

 僕は足を組み換え、笑顔を浮かべる。


「君達の軍を壊滅させようと思ってね」








 凍りつく、全てが。







 第七皇子の後ろ、第七皇子の軍勢が全て氷の結晶となる。

 そして、

 

 パシャン

 

 それら氷は砕け、粒となって地面を濡らす。


「なっ!?」

 

 第七皇子はいきなりのことに驚愕する。


「貴様ッ!!!!!」

 

 だが、そこは流石と言うべきか。すぐさま攻撃を開始し、僕に自身の得物である大剣を振り下ろす。大剣が僕の肩へとめり込み、その衝撃で大地が大きく縦に裂ける。

 その穴の底を見通す事はできない。


「なっ!?」

 

 しかし、それでも僕を傷つけることはできない。


「ついでに君も身柄も頂くことにするよ」

 

 僕は手刀で第七皇子の身を守る鎧を突き破り、そのまま腹を突き破る。


「ぐふっ」

 

「眠って」

 

 腹を貫かれた第七皇子は体を倒し、まぶたをゆっくりと閉じる。

 死ぬ直前に時を凍らせて保存しておく。


「他愛もない」

 

 僕は第七皇子の体を掴み、合流地点へと向かった。

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